データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府とモンゴル国政府との共同新聞発表

[場所] 
[年月日] 2009年7月16日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 サンジャー・バヤル・モンゴル国首相は、日本国政府の招待により、2009年7月15日から20日の日程で日本国を訪問し、16日に麻生太郎日本国総理大臣と会談した。また、河野衆議院議長及び江田参議院議長と会見したほか、20日に帰国するまでに皇太子殿下への御接見、日本政府の経済協力関係機関及び経済界の要人と会見することとなっている。また、北海道を訪問し、農牧業の視察を行う。双方はこれまで日本国とモンゴル国との間で作成された諸文書並びに両国が築き上げてきた信頼関係及び友好関係を想起し、今般のバヤル首相の日本国訪問に際し、日本国政府とモンゴル国政府は以下のとおり発表する。

 双方は、日本国及びモンゴル国の共通の外交目標である「総合的パートナーシップ」の構築が、時代の要請に適ったものであることを改めて確認し、2007年に策定された「今後10年間の日本・モンゴル基本行動計画」が着実に実施されていることを歓迎した。また、双方は、互いにかけがえのないアジアの隣国として、両国関係を新たな段階へと発展させるため、引き続き、不断の努力を行っていくことで一致した。

 双方は、両国間の各分野での対話が高いレベルで行われ、相互理解及び相互信頼が強化されていることに満足の意を表明するとともに、今後も対話を拡大していくことの必要性を改めて確認した。麻生総理は、エルベグドルジ・モンゴル国大統領が、双方の都合の良い時期に日本国を訪問するよう招請した。バヤル首相はエルベグドルジ大統領に伝達すると述べるとともに、麻生総理がモンゴル国を訪問するよう招請した。

 モンゴル側は、3月14日、世界的な金融・経済危機に直面するモンゴル国が財政的困難を克服することを支援するため、ウランバートルで開催されたモンゴル支援国会合において、日本国政府が率先してトップドナーとして積極的な支援を発表したことに感謝の意を表明した。日本側は、6月30日に「社会セクター支援プログラム」(円借款)の実施に係る交換公文に署名が行われたことに言及し、モンゴル国に対する財政支援が効果的に活用され、一刻も早く経済危機を克服することを期待すると述べた。

 モンゴル側は、日本国政府の経済協力がモンゴル国の持続的な経済発展及び政策実施のために重要な役割を果たしていることを高く評価し、感謝の意を表明した。日本側は、今後もモンゴル国のニーズを踏まえて、引き続き積極的な支援を行う意向を表明した。これに関連し、日本側は、モンゴル国政府から支援の要請があった「ダルハン市給水施設改善計画」(無償資金協力)の実施に係る交換公文の署名式が執り行われたことを歓迎するとともに、「第四次初等教育施設整備計画」(無償資金協力)の実施に向けた手続きを進めていきたいと述べた。また、双方は、「中小企業育成・環境保全ツーステップローン事業計画(第1フェーズ)」(円借款)の実施が、モンゴルにおける中小企業の発展及び新規雇用創出の観点から既に一定の効果が見られることを歓迎した。日本側は、モンゴル国政府から支援を要請されている「中小企業育成・環境保全ツーステップローン事業計画(第2フェーズ)」(円借款)の実施については、フェーズ1の成果や課題を検証した上で、モンゴルにとって最適の協力は何かという観点から前向きに検討していきたいと述べた。

 双方は、両政府の関係当局間で、ウラン資源開発、投資環境の整備及び人材育成などを含む「原子力エネルギー及びウラン資源に関する協力覚書」の署名を行うに至ったことを歓迎し、今後、同分野での協力が効果的に進むことが有益であることを強調した。これに関し、モンゴル側は、モンゴル国のウラン資源開発について、日本側の協力及び日本国の企業の積極的な参加を希望している旨述べた。

 双方は、投資及び貿易を含む、両国の企業間の経済活動の交流の拡大に向け、官民合同協議会等の機会を積極的に活用しつつ、必要な環境の整備に努めることが重要であるとの認識で一致した。

 モンゴル側は、日本との間で経済連携協定(EPA)の締結を目指す自国の立場を表明した。また、モンゴル側は、モンゴルが主催したEPAに関するセミナーに日本側から専門家の派遣があったことに感謝の意を表明し、日本側は引き続き要請があればEPAの専門家を派遣するなど、可能な範囲で支援する用意があると述べた。

 双方は、日本国とモンゴル国との間での政治、経済及び文化を含む幅広い分野における人材の交流をより戦略的かつ効率的に実施するため、積極的に努力することで一致し、特に日本側は、今後3年間で1000人規模の青年等による日本国への訪問を受け入れることを提案し、モンゴル側はこれを歓迎した。双方は、両国民の相互訪問が今後活発になることを希望する旨を表明し、これに関し、モンゴル側は、近い将来、日本国国民に対する査証の免除措置をとることについての検討を加速することを表明した。日本側はこれを歓迎するとともに査証関連の措置を適切な形で実施していく意図を表明した。

 双方は、21世紀における挑戦、人間の安全保障に対する脅威にかかわる困難な課題及び国連システムの実効性・効率性強化に取り組むために、国連の刷新及び改革が必要であることを再確認した。日本側は、2008年の国連安全保障理事会非常任理事国選挙におけるモンゴル国の「友好と善意の特別な証」により、日本国の国連安全保障理事会非常任理事国としての活動が可能となったとして感謝の意を表明するとともに、モンゴル側の厚意にこたえるためにも、引き続き国連安全保障理事会理事国として責任を果たしていくと述べた。また、日本側は国連安全保障理事会改革について、政府間交渉が進展しており、常任・非常任双方の理事国拡大の実現に向け、モンゴル国と引き続き協力していきたいと述べた。モンゴル側は、日本の安保理改革へのこれまでの貢献及び国際社会において果たしてきている役割を高く評価するとともに、日本国が行っている国連安全保障理事会の常任理事国になるための努力を支持してきたこと、また今後も支持することを表明した。

 双方は、関連の国連安全保障理事会決議に違反して行われた北朝鮮による核実験を非難した安保理決議第1874号の採択を支持し、北朝鮮の核保有や弾道ミサイル開発は絶対に認められないことを確認した。また、双方は、北朝鮮が、国連安全保障理事会決議第1874号及び関連の安保理決議を遵守し、六者会合に早期に復帰することの重要性を強調した。

 日本側は、拉致問題を含む北朝鮮と日本国の間の諸懸案を包括的に解決することが必要であるとの日本国の立場を説明し、モンゴル側はこれに対する支持と協力の意を表明した。

(了)