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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] モンゴルの輸出と産業多角化を促進するためのエルチ・イニシアティブ・プラス

[場所] 東京
[年月日] 2014年7月22日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 日本政府は,モンゴルの活力ある経済発展のためには,貿易・投資環境を整備するとともに,モンゴルの輸出を促進し,産業の多角化を実現することが不可欠であると認識。この認識の下,日本政府は,モンゴルの戦略的パートナーとして,2013年3月に安倍総理がモンゴル訪問時に打ち出した「エルチ・イニシアティブ」を補完するものとして,以下の支援を実施することを表明する。

1.貿易・投資環境の整備

 モンゴルの輸出と産業多角化を促進するためには,モンゴルの貿易・投資環境の透明性・安定性・予見可能性を中長期的に高める措置を講じることが重要。この観点から,日本政府は,

(1)経済アドバイザーの派遣を含む支援を通じ,モンゴルの中長期的な経済政策の策定を後押しする。

(2)日モンゴルの貿易・投資環境の整備に資する経済連携協定(EPA)が発効した暁に,同協定がモンゴルにおいて有効に活用されるよう,人材育成を含めた必要な支援を実施する。

2.主力産業の付加価値向上

 農牧業と鉱業は,モンゴル経済を支える主力産業。モンゴルの輸出を促進するためには,両産業が生み出す産品の付加価値を高めることが重要。この観点から,日本政府は,

(農牧業)

(1)モンゴルの食料・農業セクターの発展のため,フード・バリューチェーンの考えの下,食品の生産・加工段階における感染症対策や検査体制等の強化,流通・マーケティング段階におけるモンゴル製品の輸出拡大支援など,各段階での付加価値向上の取組を官民連携で支援する。

(2)上記支援の一部として,畜産技術者の能力強化など農牧業の生産性及び効率性の向上を通じ,農牧業従事者の所得向上を支援する。

(3)再生可能エネルギー(地中熱)を利用した施設園芸技術の導

入といった北海道の寒冷地技術や知見等を活かした協力を通じ,

輸入依存度の高い野菜の生産拡大を支援する。

(鉱業)

(1)モンゴルの鉱物資源の輸出促進を含む開発計画の策定,関連法制度の整備や人材育成を支援する。

(2)水資源の乏しいモンゴルへの日本の乾式選炭技術の導入に向けた調査を通じ,モンゴルで生産される石炭の品質・価値の向上を支援する。

(3)国際協力銀行(JBIC)による輸出クレジットラインを活用し,モンゴル企業による鉱物資源開発用の建機の購入等を支援する。

3.新たな産業創出のための取組

 モンゴル経済の持続可能な発展のためには,モンゴルの潜在能力を引き出すことによって,産業を多角化し,鉱物資源依存からの脱却を実現することが不可欠。この観点から,日本政府は,農牧業や鉱業を土台とする新たな産業分野,また,観光,金融,エネルギー及びIT産業という分野に焦点を当てつつ,

(1)2014年7月22日に東京においてモンゴル政府がそれぞれ日本経済団体連合会及び日本貿易振興機構(JETRO)と共催で開催した「モンゴル・ビジネス・フォーラム」及び「日本-モンゴルビジネス交流会」が成功裏に終了したことを受け,必要なフォローアップを行うことにより,両国の民間企業間のビジネスを促進する。

(2)モンゴル日本人材開発センターを活用し,モンゴル企業家に日本的経営手法等を共有するとともに,日本への留学・研修受入れ等を通じて観光,金融及びエネルギー分野を中心に,モンゴルの新しい産業の育成や既存産業の高度化に対応できる人材の育成を支援する。

(3)国際機関等と連携し,モンゴルのIT産業をはじめとする産業振興,鉱物部門以外の生産性の向上や専門人材の育成を支援する。

4.二国間/地域の協力枠組みの活用

 日モンゴル間の経済面における協力を強化するためには,二国間に加え,地域の協力枠組みを最大限に活用することが重要。この観点から,日本政府は,

(1)「日・モンゴル貿易投資・鉱物資源官民合同協議会」(第7回会合の開催を調整中)の枠組みを活用し,両国間の貿易・投資,資源開発等の促進に関する官民協力を推進する。

(2)モンゴル研究機関と東アジア・ASEAN経済研究センター(ERIA)との共同ワークショップ/シンポジウムの開催やモンゴル研究者のERIAへの受入れを通じ,モンゴルの輸出と産業多角化の促進を含むモンゴル政府とERIAの連携強化を後押しする。