[文書名] 戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画(2017-2021年)
I 政治・安全保障分野の協力関係:両国関係の今後の一層の深化と地域の安定・繁栄のためのパートナーシップの強化
1 政治関係
これまでの成果
近年,日本国とモンゴル国(以下「両国」という。)との間のハイレベルの相互往来は,安倍晋三日本国内閣総理大臣の3度にわたるモンゴル訪問及びツァヒャー・エルベグドルジ・モンゴル国大統領の5度にわたる訪日を始め,活発化した。とりわけ,安倍総理とエルベグドルジ大統領の会談は9回に上り,地域のかけがえのないパートナーである両国の関係の進展を促し,相互信頼を強化した。
2013年,2014年及び2016年に両国間の外相会談を実施した。また,2014年から両国外務省間戦略対話を次官級で開始したことは,非常に意義のあるものとなった。
様々な分野の両国関係省庁間における関係も,閣僚級の交流や協力覚書の作成,定期協議の開催等により活発化し,両国関係は拡大・発展している。
今後の行動
(1)日本国政府及びモンゴル国政府(以下「両政府」という。)は,両国の政治的な相互信頼を一層強化し,首脳レベルの相互往来及びハイレベルの対話の頻度を維持する。また,首脳レベルで築いた固い相互信頼と友好関係を今後も深化させる。
(2)両政府は,両国間の外相会談を両国いずれか又は国際連合総会(以下「国連総会」という。)若しくはその他の国際会議の機会に,少なくとも1年に1回以上実施するとのこれまでの前例を維持する。
(3)両政府は,多層的な対話を実施し,協力を発展させるため,両国議会及び議員連盟間の交流・協力を支援する。
(4)両政府は,外務省間戦略対話を定期的に実施し,二国間関係,地域の安全保障情勢等広範かつ戦略的な内容を有する諸問題につき意見交換を実施する。また,モンゴル国政府による日本国中堅外交官の招へいの定期化等を通じて,両国外務省間の関係・協力を強化させる。
(5)両政府は,両国関係省庁間の多層的な各種戦略対話,政策対話その他の形態の協力を引き続き拡大する。
(6)モンゴル国政府は,日本の積極的平和主義を支持する。
2 安全保障・防衛分野における関係・協力
これまでの成果
両政府は,以下のとおり,安全保障・防衛分野における広範な協力を発展させることにより同分野における両国の政策についての相互理解を深めたほか国際連合平和維持活動(以下「国連PKO」という。)における両国間の協力を強化した。
2013年1月以降,日・モンゴル外交・防衛・安全保障当局間協議(以下「PM協議」という。)を3回実施し,地域・国際情勢等についての実りある意見交換を行ってきた。
また,2012年に署名された「日本国防衛省とモンゴル国国防省との間の防衛協力・交流に関する覚書」に基づき,幅広い協力を発展させてきた。
両政府は,2014年及び2015年に防衛当局間閣僚級会談を開催したほか,2013年以降,防衛次官級での会談も実施した。また,防衛当局間の事務レベルの協議も定期的に実施してきた。2012年に開始されたモンゴル国軍に対する能力強化に向けた協力の一環として,衛生分野及び施設分野において「能力構築支援事業」を成功裏に行っている。2015年には,「人道的援助及び災害救助並びに国際連合平和維持活動の分野における教育及び訓練のための協力に関する日本国政府とモンゴル国政府との間の協定」を締結した。同協定に基づき,日本国政府は,モンゴル国軍の施設分野における能力構築支援を3か年にわたり行ってきた。
日本国陸上自衛隊は,モンゴル国のイニシアティブにより実施されている多国間共同訓練「カーン・クエスト」に2009年から教官要員を参加させ,2015年からは訓練部隊を参加させている。
また,日本国防衛大学校のモンゴル人留学生の定期的な受入れが継続している。
今後の行動
(1)両政府は,PM協議を,引き続き定期的に行うこととする。
(2)両政府は,「日本国防衛省とモンゴル国国防省との間の防衛協力・交流に関する覚書」に基づき,ハイレベル及び実務レベルの相互訪問を実施し,交流を拡大させるとともに,防衛当局間の協議を引き続き定期的に実施する。また,両政府は,地域及び国際の安全保障情勢,テロ,人道支援,国連PKO等の分野における共通の関心事項について引き続き意見交換を行う。さらに,両政府は,部隊間交流,防衛分野における教育・研究機関の協力を強化するとともに,多国間会議・演習への積極的な参加等の多国間協力を更に活発化させる。
(3)日本国政府は,「人道的援助及び災害救助並びに国際連合平和維持活動の分野における教育及び訓練のための協力に関する日本国政府とモンゴル国政府との間の協定」に基づき,今後もモンゴル国軍への能力構築支援に関する協力を強化する。
3 地域・国際場裡における協力
これまでの成果
両国は,自由,民主主義及び法の支配を重んじる地域のパートナー国として,地域・国際場裡においても協力を深化させてきた。
両政府は,地域・国際場裡における互いの外交方針・取組を尊重・支持してきた。例えば,モンゴル国政府は,日本国が国際連合安全保障理事会(以下「国連安保理」という。)の常任理事国となることを一貫して支持してきた。また,日本国政府は,モンゴル国の非核国の地位の国際場裡における承認を一貫して支持してきた。
両国は,朝鮮半島の非核化を実現し,北東アジアの平和と安定を確保するための協力においては,「北東アジア安全保障に関するウランバートル対話」イニシアティブを含む様々なレベルでの会談・協議を通じて意見・情報交換を重ねることにより,緊密な連携・協力が行われてきた。また,モンゴル国は,日本人拉致問題を始めとする未解決の諸懸案を包括的に解決するべきという日本国の立場を継続的に支持してきた。
さらに,2015年9月,日本国・モンゴル国・米国による3か国協議を開催し,北東アジア地域の安定に向けた相互の信頼・協力関係を強化するべく協議し,日本国及び米国がモンゴル国の経済改革を今後とも一貫して支持する旨確認した。
防災分野及び鯨類の持続可能な利用の分野において,両国は国際場裡においても連携・協力してきた。
今後の行動
(1)両政府は,国際平和及び安全保障のために協力を強化するとともに,国連安保理の改革問題に関する政府間の対話を活発化し,同改革の早期実現に向けて協力する。モンゴル国政府は,日本国の国連安保理常任理事国入りを今後とも一貫して支持する。
(2)両政府は,地域・国際社会の平和と安定のために協力することを確認し,日本国政府は,アジア・太平洋地域,とりわけ,東アジアの多国間協力メカニズムへの加盟に係るモンゴル国の希望を引き続き支持する。
(3)日本国政府は,モンゴル国の非核国の地位の国際場裡における承認に向け,引き続き協力する。日本国政府は,モンゴル国政府がこの非核国の地位によって,安全保障を政治的・外交的に強化する方針に基づき国際場裡で行っている努力を評価し,モンゴル国政府の今後の取組を引き続き支持する。また,両政府は,国際場裡における核軍縮・不拡散の取組,特に2020年の核兵器の不拡散に関する条約(NPT)運用検討会議の成功に向け,協力する。また,両政府は,国連総会第一委員会において緊密な協力を行う。
(4)両政府は,人権理事会理事国として,人権保護・促進に向けて相互に協力する。
(5)両政府は,国際法の原則に完全に従って,平和,安定及び繁栄を確保すること,海洋の安全保障,安全及び協力,航行と上空飛行の自由並びに阻害されない通商を促進することにコミットすることを改めて表明し,かかる分野における協力を支持する。
(6)両政府は,朝鮮半島の非核化を実現し,今後北東アジアの平和と安定を確保していく上で,北朝鮮が核及び弾道ミサイル計画を完全に放棄し,関連の国連安保理決議や六者会合共同声明を遵守するよう求めていく。モンゴル国は,日本人拉致問題を始めとする未解決の諸懸案を包括的に解決するべきという日本国の立場を支持している旨確認する。日本国政府は,モンゴル国が提案した「北東アジア安全保障に関するウランバートル対話」の開催を含む北朝鮮をめぐる諸懸案の解決及び北東アジアの平和と安定に向けたモンゴル国政府の立場を今後とも支持する。
(7)両政府は,日本・モンゴル・米国による3か国協議のモンゴル国のイニシアティブによる定期的開催に向けて引き続き協力する。
(8)両政府は,多数国間の枠組みにおけるテロ・暴力的過激主義対策についての協議,事業実施の際に協力すること等を通じ,国際テロ問題に関する協力を継続する。
(9)両政府は,防災分野につき,地域及び国際場裡において引き続き連携する。
(10)両政府は,鯨類を始めとする水産資源の持続可能な利用につき,国際場裡において引き続き連携・協力する。
II 経済関係:モンゴル経済を再び発展させ,より活力ある両国貿易・経済関係へ
1 モンゴル国のマクロ経済の安定化を目指した経済上の連携に関する日本国とモンゴル国との間の協定(以下「日・モンゴルEPA」という。)の着実な運用等によるモンゴル国の投資・ビジネス環境の整備
これまでの成果
2016年6月に,両国の「戦略的パートナーシップ」の強化に大きく寄与することが期待される日・モンゴルEPAが発効に至った。また,両国間の経済関係につき幅広く議論する場である日本・モンゴル官民合同協議会は,これまでに合計7回実施された。
日本国政府が2014年7月以降実施している「資本市場規制・監督能力向上プロジェクト」を始めとする技術協力により,モンゴル国の証券市場の法制度を改善すべく支援を実施し,研修・セミナーを開催し,投資・ビジネス環境の整備及び能力強化に寄与した。また,国際協力機構(以下「JICA」という。)による投資・ビジネス環境改善に関する調査では,日本企業向けにもモンゴル投資ガイドの発行が行われた。
2013年12月,株式会社国際協力銀行(以下「JBIC」という。)は,モンゴル開発銀行が日本の証券市場において発行する総額300億円の円建て外債(以下「サムライ債」という。)を保証した。これにより,モンゴル国政府及びモンゴル開発銀行の資金調達の拡大が図られるとともに,日本国の民間部門に対して新たな投資機会を提供する契機となった。
今後の行動
(1)モンゴル国政府は,「経済安定化計画」(Economic Stabilization Program)を着実に実施する。日本国政府は,国際通貨基金(IMF)の下で策定された国際的な支援パッケージを評価し,その一環として,モンゴル国政府が経済・財政上の困難を克服し,経済の中長期的な成長・安定化を図るため協力する。
(2)両政府は,日・モンゴルEPAを含む両国間で締結した国際約束の着実な実施に向けて緊密に連携・協力する。モンゴル国政府は,引き続き,日・モンゴルEPAの着実な実施を確保するために必要な法的環境整備を実施する。
(3)両政府は,租税条約について事務レベルでの実務的な協議を精力的に進め,二国間の健全な投資・経済交流の促進にふさわしい内容での合意を目指す。
(4)両政府は,貿易・投資のための官民合同協議会を引き続き開催し,その成果を拡大するよう協力する。モンゴル国政府は,これまでの貿易・投資のための官民合同協議会の結果を踏まえ,モンゴル国の国家建設事業に対する両国民間セクターの参画及び民間経済交流を促進するための安定した投資環境を整備する。
(5)モンゴル国政府は,両国による貿易活動における障壁軽減のため,両隣国との円滑な通過輸送のための環境を整備する。
(6)日本国政府は,モンゴル国の証券市場の法制度強化,投資家育成等につき協力する。
(7)日本国政府は,モンゴル国における人口開発及び社会保険実施能力の強化のため,社会保障の分野において引き続き支援し,協力する。
(8)日本国政府は,2013年にモンゴル開発銀行が起債したサムライ債に対し,JBICが付した保証が2023年まで継続することに留意する。
2 モンゴル国の経済の多角化に対する協力
これまでの成果
両国は,モンゴル国の経済の多角化を図るため,これまで様々な協力を発展させてきた。
2015年6月,両国間の互恵的な経済関係を構築することを目的とした「産業及び貿易投資促進のための協力覚書」が日本国経済産業省とモンゴル国産業省との間で作成された。
日本国政府が過去2度にわたり実施した円借款案件「中小企業育成・環境保全ツーステップ・ローン事業計画」によって,モンゴル国の農牧林業,製造業及びサービス業等の計600社以上に貸付けが行われた。当該円借款案件は,モンゴル国において約1万人の新規雇用を創出した。また,このような中小企業金融制度を補完するものとして,信用保証基金の人材育成に際して支援が実施された。
さらに,2014年3月に書簡の交換が行われた円借款案件「工学系高等教育支援事業」などを通じた日本国の高等専門学校型教育に係る協力が開始されたほか,「モンゴル・日本人材開発センター」におけるビジネス人材育成も実施する等,モンゴル国の産業分野における人材育成が包括的に行われた。
これに加えて,モンゴル国の農牧業分野に対しては,畜産品を始めとする食品の安全性確保のための様々な協力が行われてきたほか,鉱業分野の人材育成における協力も推進され,モンゴル国の経済の多角化の基礎固めが図られた。
今後の行動
(1)日本国政府は,モンゴル国の工学系高等教育機関の機能強化,日本国への留学及び「モンゴル・日本人材開発センター」を通じた産業人材の育成において支援し,協力する。また,専門の諸分野の人材育成のために専門教育・研修機関における学習者の専門的な技能向上のための事業をモンゴル国の高等専門学校教育システムに関連付けて実施する可能性を検討し,支援する。
(2)両政府は,日本国で新たに「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」が成立したことを踏まえ,技能実習制度がモンゴルの経済発展を担う人づくりに寄与するものとなるよう,可能な限り早期に取決めを作成する。
(3)日本国政府は,モンゴル国の建設現場での災害を防止するための労働安全分野における協力を推進する。
(4)日本国政府は,モンゴル国の鉱業分野の人材育成において引き続き支援する。
(5)両政府は,モンゴル国の持続可能な農牧業の発展に向け,民間の活動に対する支援を実施する。日本国政府は,国際機関に設置する日本信託基金を通じた対モンゴル国支援活動等も含め,協力する。
(6)日本国政府は,モンゴル国政府との間で,モンゴル国の食品の安全及び獣医・畜産分野の人材育成において引き続き協力し,口蹄疫への対策等の越境性動物感染症対策,衛生植物検疫措置に関する分野における協力を推進し,さらに農牧業分野の最終製品の日本市場への輸出について意見・情報交換を行う。
(7)両政府は,円借款ツーステップ・ローン事業のリボルビング・ファンドを原資とした中小企業金融制度について連携し,協力する。
(8)モンゴル国の「新鉄道」事業により建設されるタバン・トルゴイ~サインシャンド,サインシャンド~フート~チョイバルサン方面の鉄道の基盤を建設する諸事業については,モンゴル国政府が策定した「経済安定化計画」(Economic Stabilization Program)が定める財政枠組みの下で検討する。両政府は,本件につき,引き続き意見・情報交換を行う。
3 より活力ある両国経済関係構築に向けた協力
これまでの成果
近年,両国間では「戦略的パートナーシップ」の下,経済分野の広範な協力を行ってきた。
インフラ整備分野においては,日本国政府の円借款案件である「新ウランバートル国際空港建設計画」の当初契約分工事が完了した。
2013年に書簡の交換が行われた円借款案件「ウランバートル第4火力発電所発電効率化計画」では,日本国の技術をモンゴル国のエネルギーの効率化に向けて導入している。また,セミコークス・ブリケットの製造を含むクリーン・コール技術の分野においては,日本国が人材育成を行い,2016年6月に「日本国経済産業省とモンゴル国鉱業省の間のクリーン・コール技術に関する協力覚書」が作成された。
10回にわたり両国の環境当局間政策対話を開催した。
両政府は,2013年に低炭素発展パートナーシップ構築に係る二国間文書に署名し,モンゴル国は同パートナーシップを日本国と構築した初めての国となったほか,これによって二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)の実施が可能となった。本メカニズムにより現在,省エネ,再生可能エネルギー,熱供給ボイラーに係る事業が成功裏に実施されている。
日本国政府は,国際機関の関連基金を通じて,モンゴル国の持続可能な森林保全に対する支援プロジェクトを実施した。さらに,日本国政府は,ウランバートル市における植林技術支援事業を実施し,日本国の民間団体の活動を支援する等,モンゴル国の砂漠化対策の取組を支援してきた。
再生可能エネルギー分野においては,2014年から2015年にかけて,モンゴル国の同分野における官民合弁事業の実施可能性に関する調査を実施した。また,日本国政府は,モンゴル国における再生可能エネルギーの利用拡大の促進を目的とし,2016年9月,両国企業による合弁事業に対し,欧州復興開発銀行(EBRD)と協調融資を行った。
気候変動への適応においては,気候変動が及ぼす影響について家畜への冷害(ゾド)の影響予測システムや首都圏流域での水文予測精度の向上支援を実施しているほか,気候変動行動計画(NAPCC)の第2フェーズの実施計画改定に向けて検討会を設置して知見を共有するための協力を実施した。
防災分野では,モンゴル国の災害対策当局の対応能力の向上のため,日本国政府は,技術協力を実施した。
水問題における協力については,2014年4月,ウランバートル市の下水道施設の改修等に係る「日本国国土交通省とモンゴル国建設・都市計画省との間のインフラ分野に関する協力覚書」を作成した。また,ウランバートル市の水供給,ドルノゴビ県の下水道運営能力の向上を図ることを目的とした日本国の一部地方自治体のイニシアティブ,活動を日本国政府が支援した。
JBICは,日本国からの輸出促進による日本の産業の国際競争力の維持・向上及びモンゴル国の経済発展を図ることを目的として,2013年に締結した輸出クレジットラインに係る一般協定に基づき,2015年6月及び2016年10月にモンゴル国政府と個別貸付契約を締結し,バイヤーズ・クレジット(輸出金融)の供与を通じてモンゴル企業による日本国からの機器等の購入を支援した。
モンゴル国と気候が比較的類似した日本国の北海道とモンゴル国との間では,官民によるセミナーの開催を始めとした様々な協力が行われ,北海道の知見が共有され,北海道の民間企業による技術協力が進められた。こうした協力は,モンゴル国の発展のみならず,両国の地方自治体・民間団体間の交流の強化及び北海道の民間企業のモンゴル国での経済活動への足掛かりの構築に寄与した。
今後の行動
(1)両政府は,2016年6月に発効した日・モンゴルEPA第15章に基づき,以下の分野における協力を効率的かつ効果的に実施する。
ア 農業,林業及び漁業
イ 製造業
ウ 中小企業
エ 貿易及び投資
オ 公共基盤,建設及び都市開発
カ 科学技術及び知的財産
キ 金融サービス
ク 教育及び人材養成
ケ 観光
コ 環境
サ 鉱業及びエネルギー
シ 保健
ス 競争
セ 情報通信技術
ソ 両政府が相互に合意するその他の分野
(2)両政府は,日本国政府の円借款により建設された新ウランバートル国際空港の運営事業権契約について,モンゴル国政府と日本国の企業連合との交渉が早期に妥結するよう支援する。また,モンゴル側は,新空港の供用開始に向け,合意文書に則って貨物ビル,メンテナンスビル及び管理棟を完工する作業を活発化させ,航空機格納庫(ハンガー),ケータリング施設及び高速アクセス道路を建設し使用開始させ,空港給油に係る運営主体及び使用燃料の調査を早期に完了する。さらに,両国間の航空関係の枠組みの拡大・発展に取り組む。
(3)両政府は,2013年に締結されたJBICによる輸出クレジットラインに係る一般協定の下,引き続き,個別貸付契約を締結し,同一般協定を適切に活用するよう協力する。
(4)両政府は,環境当局間政策対話が定期的に10回にわたり成功裏に実施されたことを歓迎し,対話及び協力を強化する。
(5)両政府は,モンゴル国の低炭素発展の実現に資するJCMに関し,これまでに4回合同委員会を開催し,JCMプロジェクトが実施され,2016年10月にはJCMクレジットが発行されるなどの成果が上がっていることを歓迎し,引き続き,官民が緊密に連携してJCMプロジェクトを実施する。
(6)両政府は,2015年に作成された「日本国環境省とモンゴル国自然環境グリーン開発観光省間の環境協力に関する協力覚書」の下,モンゴル国の気候変動への適応計画の策定及び気候変動の影響評価に関する協力を継続し,気候リスク情報を発展させることによって,アジア太平洋適応情報プラットフォーム構築に貢献する。
(7)両政府は,JCMで開始された省エネ送電線に係る実証事業の着実な進展に向けて取り組む。また,両政府は,JCMで実施されている太陽光発電事業を始めとする,再生可能エネルギー分野における協力の活性化に向け,両国関係当局間において情報交換する。
(8)両政府は,2016年に署名された「日本国経済産業省とモンゴル国鉱業省との間のクリーン・コール技術に関する協力覚書」に基づき,クリーン・コール技術分野における交流を深める。
(9)両政府は,モンゴル国の石炭や銅を始めとする鉱物資源を長期的かつ安定的に日本国に供給することを実現するために協力する。
(10)日本国政府は,モンゴル国における非常事態庁の省庁間連携・調整機能等の強化,耐震建築及び防災教育等を担当する機関の能力向上のために引き続き協力する。
(11)両政府は,地域的特性・強みを活かした両国の民間企業間のビジネス活動や技術協力を支援する。
(12)日本国政府は,モンゴル国の開発政策・インフラ投資計画策定の体制強化とともに,ウランバートル市において環境に優しい安全な都市の開発に協力する。
(13)日本国政府は,ウランバートル市への経済活動や人口の一極集中を緩和しつつ,地方資源の動員・活用により,地域・都市間の均衡ある開発を促進するため,モンゴル国の地域開発政策・戦略の強化において協力する。
(14)モンゴル国政府は,ウランバートル市第5火力発電所建設に参画する希望を表明した日本国の民間企業を含む国際企業連合のこれまでの取組に留意し,各当事者の合意に基づき関連する決定を行う。
(15)モンゴル国の運輸・ロジスティクスについて意見・情報交換を行う。
III 文化・人的交流及び人材育成:相互理解と友好の深化・発展のための多層的協力の拡大
これまでの成果
日本国政府が推進する人的交流事業である21世紀東アジア青少年大交流計画(JENESYSプログラム)の下,最近3年間に約500名のモンゴル国の青少年が日本国に招待され,将来の両国関係を担う青少年の間の友好関係,相互理解を促進した。
また,日本・アジア青少年サイエンス交流事業(さくらサイエンスプラン)により,最近3年間に約350名のモンゴル国の青少年が来日し,科学技術分野での交流,日本国の最先端の科学技術への理解を促進した。
さらに,ジャーナリズムや学術分野における協力が積極的に行われたことにより,両国の相互理解が一層深化した。
日本国政府による,モンゴル国の日本語教師及び学習者に対する支援や国費外国人留学生制度におけるモンゴル人学生の日本国受入れも,こうした相互理解を深化させた。
2015年5月から,日本国政府による政府開発援助(ODA)無償資金協力案件として開始されたモンゴル国における「日本モンゴル教育病院建設計画」を始め,モンゴル国の医療サービス,医療水準の向上に貢献するべく,モンゴル国の医療施設の人材の育成に対して包括的な協力を開始した。
また,日本国政府は,モンゴル国の民主化以降,同国の初等中等教育の環境改善や教育の質の改善に対する協力等,同国の人材育成に大きな貢献を果たしてきた。
JICAは,モンゴル国国家開発庁と協力して「モンゴルPPP能力強化プロジェクト」事業を実施し,官民連携事業の評価・実施に関するガイドブックを取りまとめ,同ガイドブックに則って当該事業の一環で保健省等職員の能力強化セミナーを開催した。
さらに,日本国政府は,2015年からモンゴル国の障害児教育の分野に対する支援やウランバートル市の障害者の社会参加促進に対する協力を実施してきた。モンゴル国のパラリンピックのチームの事前合宿を日本国の地方自治体が受け入れる等,両国の障害者間の交流は多層的に進みつつある。
両国の複数の地方自治体間で,相互訪問,友好的な交流・協力のための覚書の作成が実現する等,地方自治体間の交流も拡大が見られた。
今後の行動
(1)両政府は,将来の両国関係を担う青少年等の相互理解を深めることの重要性を認識し,青少年等の人的交流事業を促進するための方策を継続する。
(2)両政府は,両国の歴史,文化及び文化遺産並びに政治,経済及び社会の状況を両国の国民に広報するための協力を相互に支援する。この枠内で,研究者及びジャーナリストの相互交流並びに出版物及び映像資料の交換等で協力する。
(3)2017年2月14日に署名された教育・文化・スポーツ・科学技術分野における当局間の協力覚書に基づき,同分野の人的交流の促進等,協力関係の強化に取り組む。
(4)両政府は,日本国におけるモンゴル研究及びモンゴル国における日本研究を発展させるために協力し,両国の学術分野における学識経験者及び研究者間の協力を支援する。
(5)日本国政府は,モンゴル国における日本語教育を発展させるため,モンゴル国の日本語教師及び学習者を引き続き支援する。モンゴル国政府は,モンゴル国の日本語教育に係る日本国の地方自治体,教育機関,友好団体による取組を側面支援する。
(6)両政府は,文化,科学技術及び芸術における協力を促進し,関係省庁・関係機関間の交流を促進するために協力する。
(7)両政府は,地方自治体,民間団体及び民間人の発案した交流におけるあらゆるイニシアティブを側面支援する。
(8)両政府は,両国間において双方向の観光交流を支援し,観光情報の共有や観光PRの推進に向けて協力する。
(9)日本国政府は,モンゴル国の初等中等教育における学習環境及び教育の質の改善において引き続き協力する。
(10)日本国政府は,「人材育成奨学計画(JDS)」を通じてモンゴル国の開発課題の解決に寄与する優秀な人材の育成を支援することにより,両国の人的ネットワークの構築を推進する。
(11)日本国政府は,建設中の「日本モンゴル教育病院」や医療施設従事者の卒後研修の制度改革等を通じ,モンゴル国の医療人材の育成において協力する。
(12)両政府は,障害児のための教育改善及び障害者の社会参加促進において同分野における草の根の活動に対して支援する。また,両政府は,2020年の東京パラリンピックの開催も念頭に,両国の障害者支援分野の交流・協力を一層促進する。
(13)両政府は,2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴い,日本国政府の提唱した「スポーツ・フォー・トゥモロー」プログラムやホストタウン推進等を踏まえ,スポーツ交流を活発化させる。
日本国政府のために
日本国外務大臣
岸田文雄
モンゴル国政府のために
モンゴル国外務大臣
ツェンド・ムンフオルギル