データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 対モンゴル国 国別開発協力方針

[場所] 東京
[年月日] 2017年12月
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

1.当該国・地域への開発協力のねらい

 中国とロシアに挟まれた民主主義国家であり、極めて親日的な国であるモンゴルが、安定的に成長・発展していくことは、地域の安定と繁栄に資するのみならず、我が国との関係発展にとっても重要な意味をもつ。このような認識の下、我が国はモンゴルを一貫して支援してきており、モンゴルの民主化以降の最大の援助供与国である。また、モンゴルは国際社会において重要な各種課題に係る我が国の立場を一貫して支持する友好国であり、我が国が地域・国際場裡における協力を促進していく上で、重要なパートナーである。

 そうした背景の下、2010 年、日モンゴル両国は「戦略的パートナーシップ」の構築を目指し、二国間関係を発展させることで一致した。2016 年 6 月、モンゴルにとって初めてとなる経済連携協定(EPA)が日本との間で発効したことは、両国のパートナーシップを強化する上で特筆すべきことであると言える。また、日・モンゴル両国外交関係樹立45 周年に当たる 2017 年、政治・安全保障、経済、文化・人的交流といった幅広い分野において、2021 年末までの間に両国が取り組む協力を具体的に明記した「戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画」に署名し、国際場裡での協力を始め、両国が主体的に相互協力を積み重ねていくことで、真に互恵的な「戦略的パートナーシップ」を構築することを目標とすることを確認した。

 モンゴルは、豊富な鉱物資源埋蔵量が秘める潜在的経済成長能力を背景として、2008年に世界経済を襲ったリーマン・ショックの影響からいち早く立ち直り、2011 年から 2013年にかけて 10%を超える高い経済成長率を記録した。しかしながら、その後、資源ナショナリズムを背景とする制限的な対モンゴル投資施策や法律を制定した影響で対モンゴル外国直接投資(FDI)が激減したほか、中国の景気減速や世界的な資源安の影響により主要産業の鉱業が不振となった。2015 年の経済成長率は 2.3%、2016 年には 1%まで落ち込み、政府の財政赤字と対外債務が大きく拡大した。このため、モンゴル政府は 2017 年 2月に IMF との間で EFF(拡大信用供与措置)プログラムの受入れに合意した。IMF と日本をはじめとするドナーからの支援のもと、確実な財政再建と健全なマクロ経済の運営、及び拡大した貧富の格差の是正、基礎的社会サービスの改善が求められている。モンゴル政府が IMF 合意を着実に実施し、財政規律を保ちつつ、経済再建を確実なものとし、長期的に安定した経済・財政運営が望まれる。

 同国は石炭、銅、ウラン、レアメタル・レアアース等の豊富な地下資源に恵まれ、経済発展のポテンシャルは高い。それ故に、同国が順調に鉱業部門の開発を進めるとともに、それによって得られる収益を全体的な国家開発と繋げていくことが、今後の大きな成長・発展の鍵となる。

2.我が国の ODA の基本方針(大目標):持続可能な経済成長の実現と社会の安定的発展モンゴルでは、鉱物資源の開発の本格化を背景に中長期的に高成長が見込まれるが、同国の経済は鉱物資源の輸出に大きく依存しており、経済の多角化が課題となっている。また、堅実な財政再建を行い、今後、持続可能な経済成長を達成するためには、安定したマクロ経済運営の実現とともに、経済成長の恩恵を全国民が等しく享受するような政策運営が必要である。さらに、ウランバートル市への人口の一極集中による都市問題や地域格差が深刻化している。よって、モンゴル政府が経済発展を確実なものとするとともに、その恩恵を貧困層まで十分に波及させ、持続可能で均衡のとれた成長に向けたモンゴル政府の取組を我が国として支援する。

3.重点分野(中目標)

(1)健全なマクロ経済の実現に向けたガバナンス強化

 モンゴル政府が経済・財政上の困難を克服し、経済の中長期的な成長・安定化を図るために、政府の財政規律(歳入・歳出管理等)の強化を狙いとした公共財政管理能力の向上、法・司法制度整備、金融市場の機能強化や投資・ビジネス環境の整備による FDI の促進による活力ある市場経済の推進を通じたガバナンス強化による健全なマクロ経済の実現を支援する。

(2)環境と調和した均衡ある経済成長の実現

 産業の多角化が停滞する一方、所得レベルや地域による格差が顕在化していることから、モンゴル側の自主的なイニシアティブを前提としつつ、持続可能な鉱物資源開発の実現に向けた人材育成、農牧業分野等における産業多角化の推進及び産業発展を担う人材の育成、地域開発戦略の強化、環境に優しく、かつ防災面に配慮した安全な都市の開発、成長を支える質の高いインフラの整備を通じた連結性の強化等を支援する。

(3)包摂的な社会の実現

 全ての国民が経済開発の恩恵を受けることができるよう、社会の状況に適合する保健医療水準の達成、基礎的社会サービスの質向上、障害者の社会参加・社会包摂の推進を支援する。

4.留意事項*1*

 2017年3月に両国外相間で署名した「戦略的パートナーシップのための日本・モンゴル中期行動計画」(2017~2021年)の趣旨を踏まえ、互恵的かつ相互補完的な関係の強化に資する協力を展開する。

(了)

別紙:事業展開計画

{*1* モンゴルを対象として実施された過去の ODA 国別評価は次のとおり。

 モンゴル国 国別評価(2007)報告書掲載先:

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/hyouka/report/mong3.html}