データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 通商に関する日本国とオーストラリア連邦との間の協定

[場所] 
[年月日] 1957年7月6日
[出典] 外交青書1号,201−203頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びオーストラリア連邦政府は、

 両国間の通商関係を改善し、及び発展させることを希望して、次のとおり協定した。

  第一条

1 すべての種類の関税及び課徴金で、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるものに関し、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関し、輸入及び輸出に関連するすべての規則及び手続に関し、輸出貨物に対する内国税の適用に関し、輸入貨物について又はこれに関連して課されるすべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関し、並びに輸入貨物の国内における販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関し、いずれか一方の国の政府がいずれかの第3国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか、又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の国を原産地とする同様の産品又は他方の国に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件に与えられるものとする。

2 前項の規定は、日本国政府に対し、オーストラリア連邦政府が英連邦のいずれかの構成国(その属領を含む。)又はアイルランド共和国にいずれかの時に与えるいかなる特恵又は利益の享受をも要求する権利を与えるものではない。

  第二条

1 いずれの一方の国の政府も、他方の国のすべての産品の輸入に対し、又は他方の国に仕向けられるすべての産品の輸出若しくは輸出のための販売に対し、割当によると、輸入又は輸出の許可によると、その他の措置によるとを問わず、いかなる禁止又は制限をも新設し、又は維持してはならない。ただし、その禁止又は制限がすべての第三国に適用されている場合は、この限りでない。

2 各国の政府は、他方の国に対し、貨物の輸入及び輸出を伴う取引に影響を及ぼす外国為替の割当に関するすべての事項について、いずれかの第三国に与える待遇より不利でない待遇を与えなければならない。

3 前二項の規定にかかわらず、いずれの一方の政府も、その対外財政状態及び国際収支を擁護するため必要な措置を執ることができる。

  第三条

1 日本国とオーストラリアとの間の貿易に関し、

 (a) 各政府は、所在地のいかんを問わず国家貿易企業を設立し、若しくは維持し、又はいずれかの貿易企業に対して排他的の若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは、その貿易企業を、輸入又は輸出を伴う購入又は販売に際し、民間貿易業者が行う輸入又は輸出に影響を及ぼす政府の措置に関してこの協定に定める非差別的待遇の一般原則に合致する方法で行動させることを約束する。

 (b) (a)の規定は、前記の貿易企業が、この協定の他の規定に妥当な考慮を払つた上で、前記の購入又は販売を商業上考慮される事項(価格、品質、入手可能性、市場性、輸送その他購入又は販売の条件をいう。)に従つてのみ行い、また、他方の国の貿易企業に対し、通常の商慣行に従つて前記の購入又は販売に参加するために競争する適当な機会を与えることを要求するものと了解される。

 (c) いずれの一方の政府も、その管轄の下にある企業((a)に定める企業であるかどうかを問わない。)が(a)及び(b)の原則に従つて行動することを妨げてはならない。

2 前項の規定は、再販売するため又は販売のための貨物の生産に使用するためではなく、直接に又は最終的に政府用として消費する産品の輸入には、適用しない。各国の政府は、そのような輸入に関しては、他方の国の貿易に対して公正かつ衡平な待遇を与えなければならない。

  第四条

1 この協定の規定は、いずれの一方の国の貿易に対しても、他方の国の政府が関税及び貿易に関する一般協定を適用する国に対し同政府が与える権利のある待遇又は与える義務のある待遇より有利な待遇を与えるものと解してはならない。両政府は、できる限り、かつ、両政府間で随時合意されるところに従い、この協定に規定されていない事項に関し、両国間の通商関係を関税及び貿易に関する一般協定の規定に基かせるようにしなければならない。

2 この協定の規定又はこの協定に基いて執られる措置は、関税及び貿易に関する一般協定第三十五条の規定に基くいずれの一方の政府の権利にも影響を及ぼすものでなく、また、関税及び貿易に関する一般協定の適用に関する両国間の交渉におけるいずれの一方の政府の自由をも損ずるものではない。

  第五条

1 この協定の結果相互の貿易が増大することは、両政府の期待するところである。さらに、この貿易の拡大は、日本国又はオーストラリアの国内生産者に対し重大な損害を与えることなく又は与えるおそれなく、達成されることが期待される。もつとも、予見されなかつた事態の発展の結果、いずれか一方の国の政府が、いずれかの産品がその国の同様の産品又は直接的競争産品の生産者に増大な損害を与え、又は与えるおそれがある条件で他方の国から輸入されていると認めるときは、その政府は、その産品については、その損害を防止し、又は救済するため必要な限度で及び必要な期間、この協定に基く義務を停止することができる。

2 いずれの一方の政府も、前項の規定に従つて措置を執るに先だち、できる限りすみやかに書面により他方の政府に通告しなければならず、また、その執ろうとする措置について事情の許す限り十分に自己と協議する機会を他方の政府に与えなければならない。

3 いずれか一方の政府が、この協定の目的の達成が著しく阻害されると他方の政府が認めるほど多くの産品の数又は貿易の量に影響を及ぼす措置をこの条の規定に基いて執る必要があると認める場合には、その利益に悪影響を受けると考える政府は、それまでに発展した事態(執られる措置を含む。)について他方の政府に対し協議を行うことを要請することができ、また、相互に満足すべき解決に到達しなかつたときは、措置が執られた時から二箇月後に、なんらの解決もできる見込がないことが合意されたときは、それより早い日に、この協定の条項についての再交渉を求めることができる。その再交渉は、書面による要請が行われた後できる限りすみやかに開始しなければならない。再交渉の要請が行われた後二箇月以内に満足すべき解決に到達しなかつた場合には、再交渉を求めた政府は、第七条2の規定にかかわらず、二箇月の予告をもつてこの協定を終了させることができる。

  第六条

1 各政府は、他方の政府がこの協定の運用から生ずる問題に関して行う申入れに対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の政府に与えなければならない。

2 この協定の運用に関する協議は、いかなる場合にも、毎年行わなければならない。

  第七条

1 この協定は、各政府により批准されなければならず、批准書の交換の日に効力を生ずる。

2 この協定は、千九百六十年七月五日まで効力を有し、その後も効力を存続する。ただし、この協定は、いずれか一方の政府が他方の政府に対しこの協定を終了させる意思を少くとも三箇月の予告をもつて書面により通告した場合には、前記の日に又はその後に終了する。

 以上の証拠として、このために正当に委任された両政府の代表者は、この協定に署名した。

 千九百五十七年七月六日に箱根で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書を作成した。

 日本国政府のために                岸信介

 オーストラリア連邦政府のために

                   ジェー・マッキュアン

                     エ・エス・ワット