データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ミクロネシア協定署名について記事資料

[場所] 
[年月日] 1969年4月18日
[出典] 外交青書14号,411−412頁.
[備考] 
[全文]

 愛知外務大臣とオズボーン駐日臨時代理大使は,本日東京において「太平洋諸島信託統治地域に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定」に署名した。

 太平洋諸島信託統治地域は,わが国が第2次世界大戦まで国際連盟規約および委任統治条項により統治を行なつてきた旧南洋群島地域であるが,戦後は国際連合憲章および信託統治協定により米国の施政下におかれている。この地域の住民は,かねてから,第2次世界大戦中にこうむつた損害に対する補償を強く要望し,国際連合信託統治理事会もまた日米両国はこの問題を早急に解決すべきであるとの要請を行なつてきた。この地域が不幸にして第2次世界大戦中日米間の激戦の地となり,多くの現地住民が死傷し,あるいは物質的損害や精神的苦痛をこうむつたこともまた事実であり,この問題の実際的解決をはかることが望ましいと認められた。よつて両政府間で話し合いの結果,右のような現地住民の苦痛に対し日米両国が同情の念を表明しつつ,住民全体の福祉向上に寄与するとの見地に立つて,両国がそれぞれ18億円相当額の自発的拠出を行ない,さらにこの際平和条約第4条(a)により,両国間の特別取決めの主題とされ,かねてより両国間で交渉が行なわれてきたわが国と信託統治地域との間の財産・請求権の処理の問題についても,その最終的解決を確認することにつき合意に達したのである。

 なお,政府としては,この協定の締結に際し,この地域とわが国との間の関係を調整し,将来に向かつて発展させることが双方にとり利益であるとの立場から,この地域で操業するわが国の漁船が,トラックおよびパラオの港に寄港することを認められるよう米側と折衝してきたが,この点についても最終的合意が成立するに至り,またこの地域の領水内にある沈船で,沈没時に日本国籍を有していたものの日本側による引揚げも認められることとなつたので,これらについても交換公文の署名があわせて行なわれた。