[文書名] オーストラリア首相の訪日に際しての日豪共同コミュニケ
1 E・G・ウィットラム・オーストラリア首相兼外相は,日本国政府の招待により,夫人を同伴し,1973年10月26日から31日まで日本国を公式に訪問した。
2 ウィットラム首相夫妻は,日本滞在中,皇居において,天皇,皇后両陛下に謁見し,両陛下から午餐を賜わつた。
田中角栄日本国総理大臣夫妻は,ウィットラム首相夫妻のため,総理大臣官邸において晩餐会を催した。
ウィットラム首相は,日本滞在中,日本の各界代表と懇談した。同首相夫妻は,また,奈良を訪れ,日本の伝統的文化に親しく接する機会を得た。
3 ウィットラム首相は,10月29日および30日の両日,東京において開催された第2回日豪閣僚委員会に,豪側首席代表として出席した。
4 ウィットラム首相は,田中総理大臣および大平正芳外務大臣と,現在の国際情勢の下における主要な,かつ,双方が関心を有する広汎な問題について,有益な意見の交換を行つた。これらの会談は,両国間の密接な友好関係を反映して,温かく,かつ,率直な雰囲気の下に行われた。
5 双方は,中東における即時かつ完全な停戦を目的として採択された1973年10月の国連安全保障理事会決議338,339および340を歓迎した。双方は,さらに,1967年の安全保障理事会決議242が,引続き中東における公正かつ恒久的な解決の最善の基礎となるものと認め,同決議を全面的に実施すべく,すみやかに措置を執る必要を強調した。
6 双方は,両国が存在するアジア・太平洋地域の新しい情勢に留意し,また,アジア・太平洋地域の緊張緩和の兆候に留意し,両国政府が,世界平和に重要な関係を有する同地域の平和および安定の維持のため,相互に協力すべきことに合意した。
7 双方は,また,アジア・太平洋地域における新たな,かつ,変動しつつある情勢の下において,地域的協力が,同地域の進歩と発展にとつて益々重要な役割を果すことに留意した。双方は,両国政府が,地域協力の促進および連帯の精神の増大に貢献し,もつて,同地域内諸国の必要と利益とに即応するよう努めるべきことに合意した。この観点から,双方は,東京で先般開催された東南アジア開発閣僚会議へのオーストラリアの参加を満足の意をもつて留意した。
8 双方は,1973年1月27日にパリで署名されたヴィエトナムにおける戦争の終結および平和の回復に関する協定並びに1973年2月21日のラオスにおける平和の回復および民族和解の達成に関する協定および1973年9月14日に署名された同協定付属議定書に,満足の意を表明した。双方は,インドシナのすべての国に永続的平和の道が開かれるように,また,これら諸国の国民が自らの問題を外部からの介入を受けることなく平和裡に自ら解決することができるように,これらの諸協定のすべての規定が忠実に遵守され,かつ,実施されるべきであることを再確認した。双方は,インドシナにおける平和と安定の確保のために,すべての国が,人道的および経済的援助をこの地域に供与する緊急かつ強い必要性があることに,意見の一致を見た。
双方は,朝鮮半島における平和の維持を重視していることを確認した。双方は,朝鮮半島における新たな進展を歓迎し,両国政府がこの地域における平和と安定の促進のために貢献する用意があることを表明した。
双方は,有効な国際管理の下における軍縮の促進,特に核兵器競争の早期中止および核軍縮に関する一層有効な措置の促進の重要性を認識し,恒久的世界平和のために努力する決意を表明した。これに関連し,双方は,いかなる国のいかなる核実験特に大気圏内の実験に対する強い反対を再確認した。
9 双方は,日豪両国間の関係を検討し,政治,経済,社会および文化の諸分野における親密かつ友好的な関係が引続き発展していることに満足の意を表明した。双方は,両国間の協力と相互理解を一層促進するため,相互に関心がある諸問題について協議すべきことを合意した。両国政府は,経済および関連分野における日豪関係を,秩序あり,安定した,かつ,幅の広いものとするための包括的な2国間条約に関する討議を開始することを合意した。
10 双方は,鉱物・エネルギー資源,食糧および農産品の貿易並びに事業活動および投資の条件を含む相互に関心のある広範な経済問題について,意見を交換した。双方は,両国の繁栄のためには,相互利益の基礎の上に,可能な限り広範な分野で両国間の協力関係を一層促進することが不可欠であることに合意した。
11 双方は,日豪両国間に,政治および経済面のみならず,文化,学術の分野における幅広い交流が発展してきたこと,およびこれらの分野における相互の関心がとみに増大してきたことに留意し,両国間の友好関係をさらに強化するため,これらの文化交流を一層促進すべきことに意見の一致を見た。このため,双方は,両国間に文化協定を締結する必要性を認め,締結のための交渉を,双方にとつて都合の良い時期に開始することに合意した。
12 双方は,自然の保護および人間環境の保全の分野における両国間の接触を増大させることが必要であることを認め,このための協力の第一歩として,渡り鳥その他の鳥類の保護に関する条約の締結のための交渉を開始することに合意した。
13 ウィットラム首相は,同首相夫妻およびその一行が日本滞在中に受けたあたたかい歓迎に対し,日本国政府および日本国民に深い感謝の意を表明した。
14 ウィットラム首相は,オーストラリア政府の名において,田中総理大臣がオーストラリアを訪問するよう招待した。この招待は,謝意をもつて受諾された。訪問の時期は,別途,通常の外交経路を通じて決定される。