[文書名] 第2回日豪閣僚委員会共同コミュニケ
1 第2回日豪閣僚委員会は,1973年10月29日および30日の両日,東京において行なわれた。
2 オーストラリア側代表団は,E・G・ウィットラム首相兼外務大臣を団長とし,J・F・ケアンズ外国貿易大臣,F・クリーン大蔵大臣,K・S・リート第1次産業大臣及びR・F・X・コナー鉱物・エネルギー大臣が参加した。
3 日本側代表団は,大平外務大臣を団長とし,愛知大蔵大臣,桜内農林大臣,中曽根通商産業大臣及び小坂経済企画庁長官が参加した。
4 田中角栄日本国内閣総理大臣は,この会議に対しての歓迎のメッセージを送つた。
5 両国外務大臣は,それぞれの基調演説において,あらゆる分野における日本国とオーストラリアとの間の関係の好ましい発展および両国間に存在する相互協力の確固とした基盤に留意した。両大臣は,両国経済の間に高度の相互依存関係が発展して来たことを確認した。
両大臣は,友好及び協力の精神が経済および関連分野における両国関係をひきつづき律することが重要であることを認め,両政府が,これらの分野における包括的な2国間条約に関する討議を開始することに合意した。
6 委員会は,相互に関心のある経済および金融問題について広範囲にわたる討議を行なつた。委員会は,両国の経済情勢を検討した。委員会は,両国における長期的な成長の見通し,およびその成長が,両国間の経済分野における相互協力を増進する機会をもたらしていることを,満足の意をもつて留意した。現在,国際経済に明らかにみられるインフレ傾向の問題につき関心が表明され,また,両国の閣僚は,それぞれの政府が世界経済において諸国間の相互依存性が増大しつつあることを念頭におきつつ,これらの問題に対処するためにとつている諸施策につき報告した。
7 両国の閣僚は,国際経済関係の安定した長期的発展の基礎となるべき国際通貨制度の改革に関する進捗状況について,意見を交換した。
8 委員会は,東京で開催された先般のガット閣僚会議の成果を歓迎し,かつ,多角的貿易交渉が,工業製品および農産品の国際貿易の拡大と一層の自由化とをもたらすべきことを再確認した。両国の閣僚は,建設的な結果が確保されるよう,世界の他の諸国と協調して,共同の努力を行なうことを約した。
9 両国の閣僚は,日本国およびオーストラリアにとつて極めて重要な両国間貿易における緊密な相互依存性および補完性を認識し,かつ,その貿易の一層の拡大の兆しを歓迎した。両国の閣僚は,通商協定が1963年に改正されて以来10年間における両国の間の貿易の重要な発展にかんがみ,第5項にいう討議を考慮しつつ同協定を再検討することが適当であることを認めた。
10 オーストラリア側閣僚は,外資に関する同国政府の基本的政策を説明し,また,外資が同国の経済発展にとつて引続き重要な役割を果たすことに留意した。オーストラリア側閣僚は,さらに,今後は,同国における外資によるすべての投資計画については,そのような投資が同国に如何なる利益をもたらすかを査定するため,より厳密に審査されることとなる旨言及した。
日本側閣僚は,国際資本投資のより自由な移動が,自由かつ開放的な国際経済の健全な発展にとつて不可欠である旨を述べた。日本側閣僚は,さらに,日本からオーストラリアへの投資がオーストラリアの資源を所有し又は支配する性格のものではなく,むしろ,主としてオーストラリアの主導するプロジェクトへの参加を通じて,同国における資源および第2次産業の開発に貢献するものであつたことを説明し,オーストラリア側閣僚は,これに留意した。
委員会は,資本投資が,両国経済の発展に果たして来た貢献を認めた。
11 オーストラリア側閣僚は,新政府が着手したより自由な輸入政策,なかんずく,25%の関税一括引下げを含む関税政策について説明した。日本側閣僚は,日本の20%の関税一括引下げについて説明した。委員会は,双方のこの措置が,国際貿易の自由化に重要な貢献をなすものであることを認めた。
12 日本側閣僚は,オーストラリア政府が,前回の閣僚委員会ののちに日本国政府より提起したオーストラリアの関税政策についての問題点に対して,積極的に応えたことを多としてこれに留意した。すでにとられた各種の施策は関心事のいくつかに応えるものであつたが,委員会は,これらの問題について,事務レベルでさらに討議を行うことが必要であることを認めた。
13 オーストラリア側閣僚は,1次産品とくに食糧,および工業原材料の安定した,かつ,適切な供給を確保することについての日本の関心を認めた。オーストラリア側閣僚は,同国が,両国に利益をもたらすような方法でこれらの産品の貿易が一層伸長することを期待する旨を述べた。
14 委員会は,オーストラリアの1次産品の日本市場への販路が一層拡大され,かつ,より予測可能なものとなることについて先般オーストラリア側閣僚が表明した要望に応えて,日本国政府がとつた措置を検討し,また,農産品の需給状況および販路に関する問題について討議した。
これらの問題について,事務レベル間の討議が初められることが望ましいことが,同意された。委員会は,そのような討議が,両国間の協力関係を一層発展させる上に重要な一つの局面を意味することに留意した。両国にとつて,これらの産品の安定し,かつ,継続的な貿易の成長は,極めて重要であり,また,両国の閣僚は,適切かつ可能な場合には,国際商品協定,及び両国の国際的義務に合致し相互に利益をもたらす長期供給取極が,この目的を達成する上に貢献するものであることを認識した。
15 オーストラリア側閣僚は,同国が,同国国民に雇用を提供し,かつ,その福祉に貢献するような強固かつ健全な第2次産業を発展させるべきであるとの見解を表明した。オーストラリア側閣僚は,この機会に,日本側閣僚に対して,オーストラリアにおけるより効率的な第2次産業の発展を促進するために,関税上とられている助成措置を含め現在とられつつある新しい措置および政策について,その概略を説明した。
16 両国の閣僚は,エネルギーおよび天然資源における日本国とオーストラリアとの相互依存性および相互補完性を認識した。
委員会は,一方においてオーストラリアの天然資源に対する日本の市場と,他方においてこれらの資源の供給源としてオーストラリアとが,相互に信頼性があるものであることの重要性を強調した。
17 両国の閣僚は,両国政府の事務当局者が,オーストラリアにおけるウランを含む鉱物およびエネルギー資源の開発,加工および貿易に関する相互に関心のある諸問題について,引続き討議と情報交換を行なうことが望ましいことを再確認した。
18 両国の閣僚は,エネルギー供給に関する世界情勢について討議を行ない,また,石油供給に対する継続したアクセスがあることが,両国にとつて重要であることに留意した。両国の閣僚は,また,代替エネルギー源について,およびエネルギー生産のための核燃料の利用促進について,討議を行なつた。両国の閣僚は,オーストラリアが核燃料の重要な供給国となる可能性を有していることに留意した。
19 委員会は,両国が,商用目的の入国および滞在を円滑化するためにとつた最近の措置を歓迎し,また,両国政府が,今後とも,相互利益のために,この問題に充分な考慮を払うべきことに合意した。
20 オーストラリアの首相は,パプア・ニューギニア政庁のマオリ・キキ防衛・対外関係大臣を紹介し,同大臣は,パプア・ニューギニアにおける最近の進展について説明した。同大臣は,独立への進捗の現況を解説し,また,パプア・ニューギニアの現行開発政策および海外からの開発援助受入れに寄せる関心について説明した。日本側閣僚は,パプア・ニューギニアにおける進展に留意し,パプア・ニューギニアが早期に独立を達成することを希望する旨表明するとともに,日本国が,全ての分野において,パプア・ニューギニアと全面的な協力関係を漸進的に樹立することを期待している旨述べた。
21 オーストラリア側閣僚は,今回の閣僚委員会における日本国政府の厚いもてなしと配慮に対して,感謝の意を表明した。
22 会議の終りに当り,日本側およびオーストラリア側の閣僚は,討議が,広範囲にわたり,かつ,友好裡に行われたことに満足の意を表明した。
今回の会議の成果にかんがみ,日本側及びオーストラリア側の閣僚は,1974年にキャンベラで開催されることが暫定的に予定されている次回閣僚委員会に対する期待を表明した。