データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] R・D・マルドゥーン・ニュージーランド首相夫妻訪日に際しての日本とニュージーランド共同新聞発表

[場所] 東京
[年月日] 1976年4月28日
[出典] 外交青書21号,58−59頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.R・D・マルドゥーン・ニュー・ジーランド首相夫妻は,日本国政府の招待により,1976年4月22日から28日までの日程で日本国を公式訪問中である。同夫妻には,D・マッキンタイア農漁業大臣夫妻及び数名のニュー・ジーランド政府関係者が随員として同行している。マルドゥーン首相夫妻は,東京滞在中,天皇・皇后両陛下に謁見を賜わつた。マルドゥーン首相は,三木武夫日本国総理大臣及びその他の閣僚と会談を行つた。また,マルドゥーン首相夫妻は,日光及び北海道を訪問した。

2.両国首相は,近年緊密で双方に有益な関係が日本国とニュー・ジーランドとの間に発展してきたことに満足の意を表明した。両者は,日本国とニュー・ジーランドが,あらゆるレベルでの対話を通じ両国の協力関係を深めかつ多様化するための努力を一層強化すべきであることに合意した。

3.両国首相は,相互に関心のある広範囲な問題について討議した。両者は,アジア・太平洋地域における発展について検討した。両国首相は,東南アジア諸国連合が初の政府首脳会議を開催し,地域的連帯及び協力を強化する意図を再確認したことを歓迎し,両国が同連合のイニシャテイブに応えて同連合との一層の協力を発展させる方策を積極的に探求することに合意した。両者は,また,インドシナ諸国との平和的協力を築くことに対するASEAN諸国の前向きの態度を歓迎した。インドシナにおける情勢に関し,両者は,武力紛争後の復興のために同地域諸国が払つている努力を評価した。両者は,東南アジアのすべての国の積極的な努力に基づいて,これらの国の間に平和的かつ建設的な関係が確立されるよう希望を表明した。この点に関連し,両者は,メコン委員会,アジア開発銀行,コロンボ計画,東南アジア経済開発閣僚会議等の既存地域機構の意義を再確認した。

4.両国首相は,すべての核実験に対する反対を再確認し,核兵器保有国にならないとの両国政府の決意を確認した。両者は,包括的な核実験禁止をもたらすために協力することに合意し,また,すべての国が効果的な国際管理の下における軍縮,とくに核軍縮を促進し,かつ,核拡散を防止する努力を強化すべきであるとの信念を再確認した。

5.両国首相は,現下の世界経済情勢を検討し,その改善のためにはすべての国の間の緊密な協力が必要であることを再確認した。両者は,また,日本国及びニュー・ジーランドが,世界貿易の拡大と一層の自由化を達成するため,多角的貿易交渉において,引き続き積極的役割を果すことを確認した。

6.2国間経済問題に関し,両国首相は,近年両国間の貿易が倍増し,また,それに応じて両国間の金融その他の経済関係が発展してきたことに満足の意をもつて留意した。両者は,両国経済の補完的かつ相互依存的な性格に留意しつつ,両国間の貿易を一層促進する方策を検討し,また,そのために一層緊密に協議すべきことに合意した。両者は,短期的問題を克服し,その経済関係を確たる長期的基礎に置くため相互に努力する必要性を認識した。

7.両国首相は,現在提案されている日本国とニュー・ジーランドとの間の直通の航空業務関係について討議した。両者は,この関係が両国にとつて有益なものになるであろうことに合意し,かつ,両国の航空企業間で既に意見交換が行われていることに留意した。両者は,航空協定のための政府間交渉が早期に開始されるよう希望を表明した。

8.両国首相は,対話および接触を一層拡大することが,両国間の相互理解の増進および協力関係の基礎の強化に寄与するであろうとの信念を再確認した。これとの関連において,両者は,1974年10月に両国間で合意された交流計画が順調に開始されたことを満足の意をもつて留意し,両国政府が,同計画の下で文化および教育の面での交流を促進する努力を継続すべきことに合意した。

9.ニュー・ジーランド首相は,日本国総理大臣に対し,近い将来ニュー・ジーランドを訪問するようにとのニュー・ジーランド政府の招待を行つた。三木総理大臣は,右招待を喜んで受諾した。

10.ニュー・ジーランド首相は,日本滞在中に同首相およびその一行に寄せられた暖かい歓迎ともてなしに対し,衷心より感謝の意を表明した。