データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とオーストラリアとの間の友好協力基本条約

[場所] 東京
[年月日] 1976年6月16日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),855−858頁.主要条約集・昭和52年版, 93−108頁.
[備考] 
[全文]

 日本国及びオーストラリアは、

 両国間の関係の基礎である友好及び協力の精神を確認するとともに、この関係を一層緊密かつ具体的な基礎の上に置くことを希望し、

 両国間の広範にわたる関係がそれぞれの国にとつて重要であること及び両国の国民の福祉の間に緊密かつ永続的な関連があることを認め、

 種々の分野における両国間の現行の諸協定が両国間の関係に対して果たしている有益な貢献を増進することを希望し、

 両国の政府及び国民が、政治、経済、貿易、通商、社会、文化その他の分野における相互に関心のある事項について、相互理解の精神に基づいて協力するための一層広範な機会を提供することを決意し、

 両国間の関係を、長期的な展望に立つて衡平なかつ相互に有利な基礎の上に強化し及び多様化することが重要であることを確信し、

 両国間の協力は、両国の相互の利益のみならず、両国が一部を構成しているアジア・太平洋地域の諸国を含む他の国々の繁栄及び福祉に対する両国の共通の関心をも念頭に置いたものでなければならないことを認識し、

 両国政府間及び両国の国民の間の友好及び協力を公式に具現しかつ一層促進する条約の締結が、両国間の関係の一層の発展を容易にすることを確信し、

 友好協力基本条約を締結することに決定し、このため、次のとおりそれぞれの全権委員を任命した。

 日本国

   内閣総理大臣 三木武夫

 オーストラリア

   内閣総理大臣 ジョン・マルコム・フレーザー

 これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次のとおり協定した。

    第一条

1 日本国とオーストラリアとの間の関係の基礎は、両国間及びその国民の間の永続的な平和及び友好とする。

2 この条約は、特に両国間及びその国民の間の理解を促進し及び相互に関心のある事項についての協力を発展させることにより、両締約国間の関係を拡大し及び強化することを目的とする。

3 両締約国は、両締約国間に存在する諸協定が2にいう目的に合致するものであることに留意しつつ、この条約で取り扱われている事項又はその他の事項(現行の諸協定の対象となつていない事項を含む。)について、必要なときはいつでも両締約国間で更に協定を締結することができる。

    第二条

 両締約国は、国際社会における諸国間の平和的かつ友好的な関係の重要性を認識するとともに、この関係を維持しかつ強化することにつき、国際連合憲章の原則に従つて、相互に協力する。

    第三条

1 両締約国は、政治、経済、労働関係、人権、法律、科学、技術、社会、文化、職業、スポーツ、環境等の相互に関心のある分野において、相互の理解及び協力を容易にし、強化し及び多様化するように努める。このため、両締約国は、これらの分野において、適当な研究及び調査、情報、知識及び人物の交流その他の適当な活動を実行可能な限り奨励し、及び促進する。

2 両締約国は、また、1にいう分野のいずれかに関する国際機関であつて両締約国が共に加盟国であるものにおいて、相互の理解及び協力を発展させる。

3 両締約国は、1及び2にいう相互の理解及び協力を発展させるに当たつて、相互に緊密に協調する。このため、両締約国は、1及び2にいう分野の事項に関して、必要なときはいつでも協議する。その際、適当な場合には、現行の諸協定又は諸取極に規定されている方法を利用する。

    第四条

 両締約国は、国際貿易が開放的、多角的かつ無差別の基礎の上に継続的に拡大することが、世界経済の健全な発展のために基本的に重要であることを認識する。両締約国は、このため、関税及び貿易に関する一般協定、国際通貨基金協定、経済協力開発機構条約及び両締約国が共に当事国であるその他の関連のある多数国間協定の目的及び原則に従つて、相互に協力する。

    第五条

1 両締約国は、経済、貿易及び通商の分野における両締約国間の関係の重要性を認識し、この関係を相互の利益及び信頼の基礎の上に強化し及び発展させることにつき協力する。

2 各締約国は、両国間の貿易に関し、それぞれの国が他方の国にとつて安定的なかつ信頼し得る供給者及び市場であることが相互の利益であることを認識し、公正かつ安定的な基礎の上に両国間の貿易の一層の拡充及び発展を促進する。

    第六条

 両締約国は、両締約国にとつてエネルギー資源を含む鉱物資源が重要であることを認識し、前条の規定に従つて、これらの資源の貿易及び開発について協力する。

    第七条

 両締約国は、両締約国が共に当事国である国際協定の目的及び原則に従い、かつ、第五条の規定に従つて、相互に受け入れることができ、かつ、相互に利益となる態様で、資本及び技術の交流について協力する。

    第八条

1 各締約国は、他方の締約国の国民に対し、自国の領域への入国、当該領域内における滞在又は居住、当該領域内における旅行及び当該領域からの出国に関し、公正かつ衡平な待遇を与えるものとし、この待遇は、いかなる場合においても、他方の締約国の国民と第三国の国民との間で差別的なものであつてはならない。

2 各締約国は、次に掲げる事項に関する手続を簡素化するように努める。

(a)他方の締約国の国民の自国の領域への入国

(b)他方の締約国の国民の自国の領域からの出国

(c)他方の締約国の国民の外国人登録

    第九条

1 一方の締約国の国民は、他方の締約国の領域内において、その身体及び財産に対する不断のかつ完全な保護及び保障を享有する。

2 一方の締約国の国民は、他方の契約国の領域内において、法に従つて裁判所において裁判を受け及び審判機関に申立てを行う権利を享有する。

3 各締約国は、自国の領域内において、他方の締約国の国民に対し、事業活動及び職業活動に関連する事項について、公正かつ衡平な待遇を与えるものとし、この待遇は、いかなる場合においても、他方の締約国の国民と第三国の国民との間で差別的なものであつてはならない。

4 一方の締約国の国民の財産で他方の締約国の領域内にあるものは、公共のためにする場合でない限り、また、迅速、適当かつ効果的な補償が支払われない限り、強制的に収用し又は使用してはならない。第一文の規定を害することなく、一方の締約国の国民は、この4で取り扱われているすべての事項に関し、他方の締約国の領域内において、いかなる場合においてもこれらの国民と第三国の国民との間で差別的でない待遇を与えられる。

5 1から4までにおいて、「国民」には、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、会社を含む。

6 一方の締約国の会社であつて、他方の締約国の国民又は会社により、直接に若しくは間接に支配され又はそれに関する利益の過半が直接に若しくは間接に所有されているものは、1から4までにおいて取り扱われている事項に関し、当該一方の締約国の領域内において、それぞれ1から4までに規定されている待遇を与えられる。ただし、3及び4に規定されている要件は、これらの会社と当該一方の締約国の会社であつて第三国の国民又は会社により、直接に若しくは間接に支配され又はそれに関する利益の過半が直接に若しくは間接に所有されているものとの間の関係について適用されるものとする。

    第十条

 両締約国は、両国間の国際海運活動が両締約国間の経済、貿易及び通商関係の発展に重要な役割を果たすことを認識し、また、両締約国が共に当事国である国際協定の目的及び原則に留意し、公正なかつ相互に有利な基礎の上に両国間の海運を発展させるため、相互の協力を促進する。

    第十一条

 両締約国は、この条約の目的が十分に達成されることを確保するため、この条約の一般的な運用状況を定期的に大臣間で検討する。

    第十二条

 各締約国は、この条約の実施から又はこれに関連して生ずる問題に関し、他方の締約国に対し申入れを行うことができる。このような申入れに対しては、好意的な考慮が払われるものとする。両締約国は、適当な場合には、当該問題に関し協議する。

    第十三条

 この条約のいかなる規定も、この条約の署名の日に両締約国間において有効な諸協定の効力に影響を及ぼすものではない。

    第十四条

1 この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限り速やかにキャンベラで交換するものとする。

2 この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。この条約は、いずれか一方の締約国が他方の締約国に対しこの条約を終了させる意思を文書により通告する日から十二箇月を経過するまで効力を有するものとする。

 以上の証拠として、前記の全権委員は、この条約に署名調印した。

 千九百七十六年六月十六日に東京で、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

  日本国のために

    三木武夫

  オーストラリアのために

    マルコム・フレーザー