データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ソマレ・パプアニューギニア首相来日に際しての共同声明

[場所] 
[年月日] 1977年12月8日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),960−962頁.外務省公表集・昭和52年, 549─52頁
[備考] 
[全文]

一、マイケル・トーマス・ソマレ・パプア・ニューギニア首相閣下及び同首相夫人は、日本国政府の招待により、政府高官を帯同して、一九七七年十二月六日より十日まで日本国を公式訪問した。

 ソマレ首相夫妻は、鹿児島に一泊したのち、東京に赴き皇居において天皇及び皇后両陛下より御引見を賜り、引き続き宮中午餐に出席した。ソマレ首相は、福田赳夫日本国総理大臣と会談した。更に、ソマレ首相とその一行は、京都を訪問した。

二、福田総理大臣及びソマレ首相は、共通の関心を有する二国間の、地域的な、また、国際的な広範囲の諸問題について討議した。この討議は、日本国とパプア・ニューギニアとの間の緊密かつ友好的な関係を反映して、温かく、かつ親密な雰囲気のもとで行われた。両首相は、この会談の結果、日本国及びパプア・ニューギニアは今後とも引続き緊密かつ建設的に協力するとの確信を表明した。

三、国際経済情勢に関する意見交換において、両首相は、先進国と開発途上国との間の格差が拡大していることを憂慮の念をもって留意した。両首相は、開発途上国の真の開発及び世界経済の健全かつ着実な成長に貢献する新たな国際経済秩序に対する支持を表明した。

 二国間の経済問題について両首相は、過去十年間両国間の貿易が著しく進展し、また、日本の対パプア・ニューギニア民間投資が大きく増大したことに留意した。

 ソマレ首相は、福田総理大臣に対し、パプア・ニューギニアは日本国の対開発途上国一般特恵関税制度が、国際貿易の分野において、先進国と開発途上国との間の協力拡大をはかるため実際的な措置をとりたいとの日本国の願望を明確に示したものであると考える旨を伝えた。

 ソマレ首相は、パプア・ニューギニアは、日本国の特恵関税制度の受益国として、日本国政府が同制度に対してこれまでに行った改善措置を歓迎する旨述べた。ソマレ首相は、パプア・ニューギニアの産業開発の進展に伴い、同国が日本国の特恵関税制度より一層の利益を得ることを希望した。

四、両首相は、開発協力について広範囲にわたる討議を行い、かかる協力が二国間関係の極めて重要な一面であることに同意した。

 両首相は、日本国とパプア・ニューギニアとの間の将来の開発援助協力の遂行について、一九七七年に両国政府関係者間で行われた協議の結果到達した基本的了解に満足の意をもって留意した。この点に関し、ソマレ首相は、この了解は、パプア・ニューギニアの開発援助受入政策の基本的目的、特に、プロジェクトの国家としての優先度の設定及び管理並びに競争入札手続きに合致するものである旨述べた。福田総理大臣は、この了解は国際的な資金及び技術協力における日本国政府の広汎な経験に基づいたものである旨述べた。

 ソマレ首相は、相互に受け入れ可能な開発協力の枠組に基づき、日本国政府が、パプア・ニューギニアの第一次国家公共支出計画の中から抽出され、相互に合意され、リストに掲上されたプロジェクトに対し資金協力を行うため、円借款及び技術協力の形でパプア・ニューギニアに対し開発援助を行うよう要請した。

 福田総理大臣は、ソマレ首相に対し、日本国政府はパプア・ニューギニアに対し開発援助を行う用意がある旨通報した。この点に関し、福田総理大臣は、日本としては、当該プロジェクトの実行可能性(フィージビリティ)の確認を条件として相互に合意され、リストに掲上されたプロジェクトに対し資金協力を行う用意がある旨述べた。更に、福田総理大臣は、円借款の形による千三百万から千五百万米ドルに相当する金額の資金協力を求めたパプア・ニューギニア政府の要請を日本国政府が好意的に考慮する旨述べた。

 ソマレ首相は、福田総理大臣のこの発言に対し、深甚な謝意を表明した。更に、両首相は、ごく近い将来開発協力の分野において具体的進展がみられるようにとの共通の願望を示した。

五、両首相は、両国にとって相互に関心のある漁業問題について討議した。

 ソマレ首相は、福田総理大臣に対し、パプア・ニューギニアは同国の二〇〇海里漁業水域を近い将来に設定する意向である旨を伝えた。

 福田総理大臣は、日本漁船がパプア・ニューギニアの地先沖合で伝統的に操業しているとの見解、及びパプア・ニューギニアの二〇〇海里漁業水域におけるこれら漁船の操業継続に対して好意的な配慮を得たいとの願望を表明した。

 ソマレ首相は、福田総理大臣により表明された見解と願望に留意した。同首相は、パプア・ニューギニア政府は、同国の二〇〇海里漁業水域における外国漁船に対して適用される入域(アクセス)の要件及び条件を近く発表する旨説明した。

 両首相は、パプア・ニューギニアの二〇〇海里漁業水域への日本漁船の入域(アクセス)の問題について、その後両国政府間で早期に討議を始めることが適当であることに合意した。

六、両首相は、国際問題、特に東南アジア及び南太平洋における情勢について討議し、両国と東南アジア諸国との間の友好関係が地域の安定と発展に重要な貢献を行うであろうことを強調した。

 福田総理大臣は、一九七七年八月のクアラ・ルンプールにおけるASEAN首脳との会談の結果に満足の意を表明し、更にASEAN諸国がその連帯と強じん性を強化するために行っている努力を歓迎した。福田総理大臣は、また、日本国は、ASEAN諸国の自主的努力に対し積極的に協力すると共にインドシナ諸国との間に相互理解に基づく関係の醸成をはかり、もってアジア・太平洋地域を通ずる平和と繁栄の建設に寄与するとの日本国政府の立場を説明した。

 ソマレ首相は、日本国が東南アジア地域諸国との親密な関係の維持を重要視していることを歓迎した。

七、ソマレ首相は、南太平洋フォーラム及び南太平洋委員会のような機構を通じ地域協力強化の努力を継続するとのパプア・ニューギニアの南太平洋地域に対する決意を強調した。

 同首相は、これらの機構が同地域の発展に枢要な役割を果している旨述べた。

 福田総理大臣は、南太平洋の開発に関するソマレ首相の発言に興味をもって留意するとともに、日本国政府が南太平洋諸国とのより緊密な関係を増進させることを期待している旨指摘した。

 同首相は、南太平洋フォーラムがASEANと同フォーラムとの間の対話を確立するためにとった措置に留意した。

八、ソマレ首相は、一行の滞在中、同首相、同首相夫人及び随員に対してよせられた友好的な歓迎及び温かいもてなしについて日本国政府及び国民に対し心からの謝意を表明した。