データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大平総理大臣のニュージーランド訪問に際しての日本とニュー・ジーランドの共同新聞発表

[場所] オークランド
[年月日] 1980年1月18日
[出典] 外交青書24号,429−430頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.大平正芳日本国総理大臣は,1月17日から19日までの間オークランドを訪問した。大平総理大臣には大来佐武郎外務大臣が同行した。

 訪問期間中大平総理大臣は,R・D・マルドゥーン・ニュー・ジーランド首相と2回会談を行い,大来外務大臣も両会談に同席した。また,ニュー・ジーランド側よりは,B・E・トールボイズ副首相,D・マッキンタイア農・漁業大臣及びL・R・アダムズ・シュナイダー通商産業大臣が同席した。

 大平総理大臣は,オークランドにおいてW・E・ローリング・ニュー・ジーランド野党党首と会談を行うとともに,オークランド戦争記念碑において献花を行つた。

2.両国首相の会談は,広範かつ貴重なものであつた。第1回会談において,両者は,中国及びASEAN諸国との関係,難民問題を含むインドシナ情勢,朝鮮半島情勢及び中東情勢,なかんずくイラン及びアフガニスタン情勢等両国が関心を有する国際諸問題に関する意見交換を行つた。

3.両国首相は,アジア・太平洋地域における平和と安定が世界全体の平和と安定に不可欠であるとの共通の認識を確認するとともに,この目的のために緊密に協力していくことに合意した。

4.両国首相は,石油価格の上昇,その先進諸国,開発途上国双方の経済に及ぼす影響及び開放貿易制度の一層の強化の必要性を含む国際経済の諸問題についても広範囲な意見の一致をみた。両者は,国際経済の安定的拡大のためには緊密かつ包括的な国際協力が必要であることを認識した。

5.両国首相は,太平洋地域諸国間の協力には更に進展の余地があることを認識した。両者は,日本及びニュー・ジーランドがこの分野において緊密に共同して作業を継続することが重要である点につき意見の一致をみた。

6.第2回会談において,両国首相は,日本とニュー・ジーランドとの関係を中心に意見交換を行つた。両者は,両国間の経済のみならず政治及び文化の各分野における協力の一層の発展が双方の利益に資することにつき意見の一致をみるとともに,この目標に向けて努力して行くことを誓約した。

7.両国首相は,両国が関心を有する経済の諸問題につき継続的な検討を行う必要性があるとの認識に立ち,両国政府の高級事務レベルにおいてかかる諸問題につき協議を行うため年1回会合を行うことに合意した。

8.マルドゥーン首相は,日本とニュー・ジーランドとの間に理解を促進し,かつ一方の国民が他方の国民に対する興味及び関心につき一層の認識を高めることを目的として,ニュー・ジーランド政府が日本・ニュー・ジーランド基金を設立し,初年度4万ドルの拠出を行うことを決定した旨発表した。

 大平総理大臣は,右発表を歓迎するとともに,日本政府がニュー・ジーランドとの文化交流を拡充する意向である旨述べた。大平総理大臣は,かかる計画の一環として,ウエリントンのヴィクトリア大学に対し研究資料(図書)を寄贈する旨発表した。

9.両国首相会談の終了に際し,大来外務大臣及びトールボイズ外務大臣は,日本国とニュー・ジーランドとの間の航空協定に署名した。両国首相は,同協定が両国間の人的交流の発展及び相互理解の促進に資するものであることにつき意見の一致をみた。

10.大平総理大臣は,マルドゥーン首相に対し,近い将来訪日するようにとの日本国政府の招待を行つた。マルドゥーン首相は,この招待を喜んで受諾した。

11.大平総理大臣は,ニュー・ジーランド滞在中に同総理大臣及びその一行に寄せられた暖かい歓迎ともてなしに対し,衷心より感謝の意を表明した。