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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] カミセセ・マラ=フィジー首相夫妻の訪日に際しての共同新聞発表

[場所] 東京
[年月日] 1980年5月16日
[出典] 外交青書25号,428−430頁.
[備考] 
[全文]

1.カミセセ・マラ=フィジー首相閣下及び同首相夫人は,日本国政府の招待により,政府高官を帯同して,1980年5月14日より19日まで日本国を公式訪問した。

 カミセセ・マラ首相夫妻は,滞日中,皇居において天皇及び皇后両陛下より御引見を賜り,また,宮中午餐に出席した。

2.大平総理大臣及びマラ首相は,共通の関心を有する地域的及び国際的な諸問題並びに両国関係について会談した。

 会談は,親密的かつ友好的な雰囲気の中で行われた。会談を通じ,両国が共通の見解を有していることが確認され,これは両首相の友誼に貢献し,また,両国間の相互の敬愛と理解を深めた。

 両国首相は,この会談の結果,日本国及びフィジーは今後とも引き続き緊密かつ建設的に協力するとの確信を表明した。

3.両国首相は,現下の国際情勢に照らし,世界の平和と安定を確保し,それを強化するため,国際連合等を通ずる国際的努力を一層強化していくことが重要であることを確認した。両者は,国際関係における武力による威嚇または武力の行使を憂慮し,国連憲章の精神に従い交渉,その他の平和的手段により,国際粉争を解決することが最も適切な方法であるとの確信を表明した。

4.両国首相は,太平洋地域における諸国間の緊密な協力の可能性について討議した。両者は,太平洋地域諸国間の協力には更に進展の余地があることを認識し,日本国及びフィジーがこの分野において緊密に意見交換を行っていくことにつき確認した。

5.両国首相は,南太平洋地域の情勢につき討議した。マラ首相は,大平総理大臣に対し,南太平洋地域の諸国による国造りへの進展が顕著に示されていることを説明した。南太平洋地域の繁栄と福祉の向上のために同地域における地域機構,特に南太平洋フォーラムを中心として域内協力が進められてきている。同首相は,また,南太平洋地域においては同地域に特有の文化と生活様式が存在することを指摘し,これらが保存された上で同地域が一つの社会として発展していくことの重要性を表明した。これに対し,大平総理総理大臣は,南太平洋地域の発展を歓迎するとともに,日本国は太平洋国家として同地域の平和と安定につき深い関心を有している旨述べた。

6.両国首相は,中国及び東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心としたアジア情勢につき意見交換を行った。両者は,中国の対外関係における最近の動向,特に日本国及びフィジーとの関係の緊密化がなされてきていることを評価した。両者は,また,東南アジア地域における平和と安定に継続的に貢献しているASEANの建設的な役割を歓迎した。

7.両国首相は,日本国とフィジーとの関係につき意見交換を行い,両国関係が貿易経済関係を中心に近年発展してきていることを歓迎した。両者は,両国間の経済関係に占める貿易の重要性にかんがみ,今後通商関係の強化,発展を図るべく努力することで意見の一致をみた。両者は,また,両国間の経済のみならず文化等各分野における協力の一層の発展が両国関係をより緊密化させることにつき意見の一致をみた。両者は,この目標に向けて努力していくことを誓約した。

8.両国首相は,開発協力について広範囲にわたる協議を行い,両国間の経済技術協力が着実に進展していることを歓迎した。

 マラ首相は,大平総理大臣に対し,経済社会開発に関するフィジー政府の基本政策を説明し,フィジーの福祉とフィジー国民の発展に資するような援助を得たい旨表明した。

 大平総理大臣は,フィジーの経済社会開発の進展につき賛辞を述べるとともに,日本国政府の援助政策においても人造りの重要性を認識している旨述べ,日本国政府としては,フィジー政府の開発政策に十分留意し,両国間において可能な限りの経済技術協力を実施していく意図がある旨述べた。

9.両国首相は,本年3月における日本国とフィジーとの間の航空協定の署名を歓迎した。両者は,同協定が両国間の一層の人的交流の拡大と相互理解の促進のための有効な手段として役立つであろうとの共通の期待を表明した。

10.カミセセ・マラ首相は,今次訪日に際し,同首相,同首相夫人及び随員に対してよせられた友好的な歓迎及び温かいもてなしについて日本国政府及び国民に対し心からの謝意を表明した。