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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] マルドゥーン・ニュージーランド首相歓迎晩餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 首相官邸
[年月日] 1981年4月15日
[出典] 鈴木演説集,254−255頁.
[備考] 
[全文]

 マルドゥーン首相閣下、マッキンタイア副首相閣下並びに御列席の皆様

 今夕、マルドゥーン首相閣下及び令夫人、並びに随行のマッキンタイア副首相閣下及び令夫人のほか御一行をお招きし、歓迎の宴を催すことができましたことは、私の大きな喜びであります。私は、ここに日本国政府及び国民を代表して、心から歓迎の意を表するものであります。

 ニュージーランドは、風光明媚な自然に恵まれ、高い文化と物心両面にわたって豊かな生活を享受している高度な福祉国家として、広くわが国民に知られています。また、ニュージーランドは、同じ太平洋国家であり、ともに平和と自由及び民主主義を愛する国として、わが国民から親しまれています。

 更に、世界最強のラグビーチームである貴国のオールブラックスを通じて、また、ニュージーランドが世界に誇る長距離陸上選手を通じても、日本人はニュージーランド人が質実剛健な国民であることをよく承知しております。

 このようなお国から、この度マルドゥーン首相閣下及び令夫人をお迎え致しました。マルドゥーン首相閣下の秀れた指導力、長期的視野に立つ政治力、並びに、円満な人柄についてはいまさら申すまでもございませんが、わが国との関係におきましては、首相閣下は、歴代ニュージーランド首相のうちで最も日本をよく知り、日本の良き友であります。首相閣下の今回の御訪問は五度目と承知しておりますが、首相閣下はわが国を訪問されるたびに、我が国各界の指導者と精力的に会談されることで知られております。本日御出席の皆様方は、それぞれ首相閣下の友人であり、私の内閣からも主要閣僚が多数出席しておりますが、みな首相閣下の友人として出席しておる次第であります。我が国の指導者の中にこのように多くの友人を持つ首相閣下が、アジア・太平洋に大きな影響力をもつニュージーランドにおられることは、私といたしましては、誠に心強い限りであります。

 両国関係について申し述べますと、近年の発展は目ざましいものがあります。貿易一つをとってみましても、過去二十年間で年間往復貿易額は約三十倍という飛躍的な増大を示しております。貿易・経済関係に留まらず人的交流につきましても、双方の関係は急速に発展しております。特に昨年七月両国間に航空路が開設されて以来、双方を訪れる国民の数は一倍半以上となっております。わが国とニュージーランドは太平洋地域の北と南の要として今後とも一層手に手を携えて協力して行くことが大切と考えます。

 御出席の皆様、現下の国際情勢は極めて困難な局面にあります。私は、三年前にニュージーランドと豪州でマルドゥーン首相閣下とじっくりお話しする機会を得ました。閣下と私の会談は明日に予定されておりますが、このような国際情勢の下で友邦であるニュージーランドから閣下をお迎えして、国際情勢及びアジア・太平洋情勢等について閣下の御意見を伺うことができますのは大きな喜びであります。

 マルドゥーン首相閣下及び御一行は、東京での忙しい御日程の間をぬって十八日からは伊勢志摩方面に御旅行されると聞いておりますが、今回の御訪問が快適でかつ実り多いものであることを祈念致します。

 ここに、マルドゥーン首相閣下及び令夫人の御健康、ニュージーランドの発展と繁栄、並びにわが国とニュージーランドの末永き友好を祈って杯を挙げたいと思います。