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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アハーン・クィーンズランド州首相主催昼食会における竹下内閣総理大臣の挨拶

[場所] ブリスベン
[年月日] 1988年7月2日
[出典] 竹下演説集,188−190頁.
[備考] 
[全文]

 アハーン首相閣下並びにご列席の皆様

 本日は、私共のためにかくも盛大な昼食会をご開催いただき、また、ただいまは首相閣下より心暖まる歓迎のお言葉を賜り、誠にありがとうございました。一行を代表して心から御礼申し上げます。

 首相閣下

 私は、オーストラリア建国二百年の記念すべき年に、初めて貴国を訪問する機会を得て喜びにたえない次第であります。オーストラリア訪問は、私と家内にとって多年の念願でありましたが、その第一歩を日本との関係が最も深いクィーンズランドに刻すことができまして、感慨無量であります。

 私の知る限りにおいて、日本人の最初の豪州移住者も、十九世紀の後半にこの地をめざしました。また、オーストラリアに日本の在外公館が初めて設置されたのは、クィーンズランド州のタウンズビルでありました。現在も、木曜島にはかつて真珠貝採取に従事した約七百人の日本人が眠る墓地があり、我が国の先人たちの努力はもとよりのこと、さらに当時のオーストラリア国民が我が同胞に寄せられた友好の跡をしのばせているとのことであります。

 首相閣下

 本日午前中、私はブリスベン万国博を参観してまいりました。私は、国会議員として内外の万国博の振興に、長い間、微力を尽くしてまいりましただけに、格別の関心と期待を込めて見せていただきました。今回の「技術時代におけるレジャー」というテーマを掲げた万国博は、人間性を尊重し、物心両面でバランスのとれた真に豊かな社会を築く上で、まことに示唆に富む内容であります。しかも、この万国博が「サンシャイン・ステート」と呼ばれるクィーンズランド州で開かれたことは、未来の可能性を確信させる大きな意義を持つものだと感じた次第です。

 このような二十一世紀への視点は、私が永年にわたり提唱してまいりました「ふるさと創生」がめざす方向と軌を一にするものであり、私にとりましても大変参考になりました。

 その意味で、万国博の会場に多くの日本の若者たちの姿が見られることも、日豪関係の将来にとって明るい兆しと申せましょう。これを機会に、日本とクィーンズランドの人々との交流が一層活発になることを期待したいと存じます。

 首相閣下

 閣下は、若くして州議会議員となられ、これまで第一次産業大臣をはじめとして多くの閣僚経験をお持ちであります。私も青年時代、政治への志を立て地方議員からスタートを切りましたので、ひときわ親近感を覚えると共に、閣下が日頃から地域社会の発展こそ国の繁栄の基盤であるとの考えに基づき真剣な努力を続けておられる姿に力づけられる思いがいたしております。

 クィーンズランド州は、広い国土と豊富な資源に恵まれたダウンアンダーの中でも、とくに資源に恵まれているばかりでなく、アハーン首相のようなすぐれた人材を輩出することでもわかるように、きわめて大きな可能性を秘めた土地であります。

 その首都ブリスベンには、大勢の優秀な若者たちが集まり、勉学にいそしんでいるとのことでありますが、人類の幸福が科学・技術の発展にかかっていると言われる今日、このように将来性のある貴州と日本の関係強化は、日豪関係のダイナミックな発展にとって大きな力になるものと信じます。また、私は、クィーンズランドの多数の日本人や日本企業がクィーンズランドの健全なる市民として、クィーンズランドの社会と経済に積極的に貢献していくことを期待いたしております。

 私は、クィーンズランド州が、アハーン首相の卓越した指導の下に、さらにめざましい成長を遂げ、オーストラリアの発展に寄与されんことを希望すると共に、我が国としても一層の協力を表明する次第であります。

 最後に、アハーン首相閣下のご健康、クィーンズランド州の一層のご発展、そして日本とクィーンズランドの友好増進を祈念して、私の挨拶といたします。