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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第十六回日本・ニュージーランド経済人会議の開会式のおける海部内閣総理大臣の祝辞

[場所] オークランド
[年月日] 1989年10月5日
[出典] 海部演説集,284−285頁.
[備考] 
[全文]

 第十六回日本・ニュージーランド経済人会議の開催に当たり一言ご挨拶を申し上げます。

 日本とニュージーランドは、アジア・太平洋の北と南に位置し、民主主義と自由主義経済という価値観を共有すると共に、相互補完的な経済貿易関係を中心として、緊密な友好関係を築いて参りました。また、近年は単に「物」の交流のみならず、観光や青少年交流を始めとした人的交流、地方都市間の交流といった分野で新たな進展が見られる他、多角的自由貿易体制の維持・強化を図るウルグァイ・ラウンド、アジア・太平洋地域における協力等国際的な協力が必要不可欠な分野においても密接に協力していくべき立場にあります。

 かかる両国関係の幅が広がるに伴い、両国の友好協力関係をゆるぎない基盤の上に一層進展させていくためには政府間のみならず、両国の国民各層を含めた間断なき対話を緊密に積み上げていくことが重要であると考えております。この意味で、両国の重要な対話の場のひとつであり、種々の両国間のフォーラムのうちで伝統を有し最も規模の大きい日本・ニュージーランド経済人会議の皆さま方がこれまで果たされてきた役割に敬意を表すると共に、今後ともその役割はますます重要になるものと確信しております。

 明年、ニュージーランドは、記念すべき年を迎えられると承知しており、心からお祝いを申し上げます。一九九〇年のテーマは、「チャレンジ」であると承知していますが、その意味は、次代を担う青年に期待し、より良い将来を目指す挑戦であると理解しております。私は、新しい次代の夜明けをもたらすのは、青年の燃えるような使命感と情熱であると考えており、二十一世紀を迎えるにふさわしいテーマであると思います。

 他方、我が国もまた、二十一世紀に向けて世界に貢献する日本、「公正で、心豊かな社会」作りを目標に掲げ、諸問題の解決に全力を挙げて取り組んでおります。

 世界は今、政治、経済、社会の諸相において激動の時代にあります。かかる時代において、日・ニュージーランド間の友好協力関係は今まで以上に貴重であり、かつ、必要であります。私は、今述べました両国関係や両国の努力を背景として、日本とニュージーランドがともに手をとり、二十一世紀という大海原に向けて、船出できることを希望しております。

 最後になりましたが、本年の経済人会議が、実りの多い対話の場となることを祈念して、私の挨拶といたします。