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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第二十七回日豪経済合同委員会会議開会式における海部内閣総理大臣の挨拶

[場所] 神戸市
[年月日] 1989年10月17日
[出典] 海部演説集,317−318頁.
[備考] 
[全文]

 第二十七回日豪経済合同委員会の開催にあたり、一言ご挨拶させていただきます。

 本日、ここに日豪両国の経済界を代表される皆さま方のご出席により、伝統ある日豪経済合同委員会の年次総会が開催されますことを、心よりお喜び申し上げます。特に、今回の会合につきましては、三年ぶりに豪州財界の皆さまを我が国へお迎えし、日豪関係の黎明期から貿易面で深い繋がりを有してきたここ神戸で開催される運びとなりましたことを、私といたしましても何よりも嬉しく存ずる次第であります。

 皆さまご存知ののように、昨年は日豪関係にとって飛躍の年でありました。キャンベラにおける日豪首脳会談、両国官民の協力の結晶である「豪州国立科学技術センター」の開設等は、順調に広がりと深みを増しつつある日豪両国関係を象徴するものであります。このような基礎の上に、本年一月我が国において開催された第十回日豪閣僚委員会では、アジア・大平洋地域の平和と繁栄、自由で開放的な世界経済体制の維持・強化、地球的規模の環境問題への対応、日豪関係の一層の発展と多角化を四本柱とする「建設的パートナーシップ」を両国間につくり上げていくことで合意が見られたのであります。

 その後の進展を見ても、カンボジア和平のための国際会議での協力、ウルグアイ・ラウンドについての協議・協力、地球環境保全に関する東京会議への豪州の積極的参加など、日豪協力はその目標に向けて一歩一歩着実に前進しております。また現在、豪州のライフスタイルを我が国へ紹介すべく全国的に繰り広げられている「日豪生活文化交流」も日豪協力関係の厚みを一層増すことに大きく貢献することが期待されます。

 アジア・大平洋地域は二十一世紀の地域であります。ホーク首相の提唱により本年十一月初めにキャンベラで開催が予定されているアジア・大平洋地域関係閣僚会議は、二十一世紀を睨んだアジア・大平洋協力の幕開けとなるでしょう。この新たな時代において、アジア・大平洋地域の南北に位置し、自由と民主主義という価値観を共有する日豪両国の友好協力関係に重みが従来にもまして高まっていくことは疑いのないところであります。

 今回、本委員会において日豪関係の中核をなす経済関係を支える皆さま方が、将来を見据え日豪関係の今後について真剣な議論を戦わすことは、日豪間の協力に不可欠な強固で成熟した相互信頼関係の形成につながるものとして、誠に時宜に適したものと申せましょう。今次委員会が相互に胸襟を開いた率直な意見交換を通じ、心の通うパートナーのふれあいの場となることを心より願ってやみません。

 最後に、今次会合のご成功と貴委員会の一層のご発展を心より祈念致しまして、私のご挨拶とさせて頂きます。