[文書名] 第十七回日本・ニュージーランド経済人会議の開会式における海部内閣総理大臣の祝辞
第十七回日本・ニュージーランド経済人会議の開催を、心からお祝いいたします。日本・ニュージーランド経済人会議が、これまで十数年の長きにわたり、両国間の経済交流に中心的な役割を果され、また、同会議を通じて皆さま方が、両国関係の着実な前進のため多大な貢献をしてこられたことに対し、深い敬意と感謝の意を表します。
日本とニュージーランドとの関係は、相互補完的な貿易によって発展してきましたが、今やそれに止まるものではありません。伝統的経済関係を基盤としつつ、青少年交流をはじめとする人的交流、芸術・スポーツ・語学等の文化交流、地方都市間の草の根レベルの交流が増大し、更には、科学技術・環境といった新たな分野を包含する広範な関係へと進展しています。私は、去る七月訪日されたパーマー前首相との会談で確認したように、両国関係の一層の拡大・強化のため努力を続ける所存であります。
世界は今日、新たな国際秩序を真剣に模索しつつあります。自由、民主主義及び市場経済という基本的価値観に立脚して、平和共存の世界を構築しようとする、この歴史的歩みは、日に日にその力強さを増しているといえましょう。ドイツ統一はこれを象徴する成果であります。しかし、ここには同時に、過渡期特有の不安定性が併存することも否定できません。クウェイトに対するイラクの侵攻は、まさにこの懸念が現実となったものであり、断じて容認し得ない暴挙であります。国際社会は、その新たな秩序形成の途上で投げかけられたこの重大な試練を克服し、平和を回復するため、国際連合の理念に基づき、最大の努力を傾注しなければなりません。
本会議の主題である経済の分野においても、世界は重要な岐路に立っております。新たな国際経済秩序の構築を目指すウルグァイ・ラウンドの成功によって、多角的自由貿易体制を維持・強化し、世界経済の健全な発展を図ることが肝要であります。
私は、以上のような激動する国際情勢に鑑み、基本的価値観と多くの利害関係を共有する日本とニュージーランドが、その協力関係を一層広範かつ揺るぎないものとすることが、これまで以上に重要となっていると考えます。その意味で、両国経済界の代表として、それぞれの国において指導的地位におられる本会議参加の皆さま方が、率直な対話を通じて相互理解を深められることは、両国の経済関係にとって有益であるばかりでなく、アジア・大平洋地域、ひいては世界の平和と繁栄に対する寄与という点においても、意義深いものであります。会議のご成功を期待しています。
最後に、ニュージーランドは本年、記念すべき年を迎えられましたが、「チャレンジ」なるテーマの下での、貴国の新たな門出を心から祝福を申し上げます。