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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第十八回日本・ニュージーランド経済人会議の開会式における海部内閣総理大臣の挨拶

[場所] 大阪市
[年月日] 1991年10月7日
[出典] 海部演説集,353−354頁.
[備考] 
[全文]

 第十八回日本・ニュージーランド経済人会議が大阪において開催の運びとなりましたことに対し、一言お祝いのご挨拶を申し上げます。

 今日、世界は歴史的な変革期にあり、対話と協力の中で新たな国際秩序を構築するための真剣な努力が続けられております。本会議の主題であります経済の分野におきましても、新たな国際経済秩序の構築を目指すウルグアイ・ラウンド交渉の成功裡の妥結のため、真剣な努力が積み重ねられております。

 両国がともに位置するアジア大平洋地域に目を向けますと、この地域がダイナミックな発展を通じて世界経済に大きな地歩を占めつつあることは、既に世界の人々の認めるところであります。ニュージーランドにおかれても、昨年の十一月に成立しました国民党政権は、国内おいて選挙公約の「健全な社会の創造」の具体化を志向して一連の経済改革を推進されると同時に、対外的には特に経済面においてアジア大平洋地域重視の政策を打ち出しておられると承知しております。

 このアジア・大平洋地域の活力は、世界経済の成長を支え、開放的な自由貿易体制を維持する上で重要な役割を果たすものとならなければなりません。特にこの地域の活力の源が開放的な自由貿易体制に依拠していることに鑑みれば、ウルグアイ・ラウンド交渉の早期かつ成功裡の終了は、この地域の最優先課題の一つであります。更に、一昨年発足しましたAPECは、この地域の安定と繁栄に向けて開かれた協力として積極的に推進して行くことが必要であります。

 日本とニュージーランドは、自由・民主主義、市場経済といった基本的な価値観を共有する友邦であります。ソ連・東欧諸国の民主化に向けての胎動が大きなうねりとなって新しい時代に入りつつある今日の国際社会の過渡期においてこそ、誤りない対応の道を見出す上でかかる友邦国間の協調・協力の関係が今まで以上に重要であります。

 また、両国は、地域的文脈におきましても、ともに開放的な自由貿易体制に依拠する国と致しましても、多くの利害関係を共有しており、その協調・協力関係を更に発展させて行くことが重要であります。

 両国の政府間の交流として、昨年七月にパーマー前首相が訪日され、本年四月に中山外務大臣がNZを訪問しましたことは、皆さま方のご記憶にも新しいことと思います。いずれの場合におきましても、二国間関係全般のみならず、国際情勢、地域の情勢等につきまして幅広く率直な意見交換が行われ、両国の協調・協力関係の更なる推進が確認されました。政府としては、今後とも、両国関係の一層の拡大・強化のため、努力を続ける所存であります。

 同時にまた、両国関係の更なる発展のためには、両国の民間、特に経済人の方々による対話と協力が極めて重要であります。現に、日本とニュージーランドとの関係は、その裾野を広げつつも、経済・貿易関係を中心に発展して参りました。ここで私は、日本・ニュージーランド経済人会議が、これまで二十年近くの長きにわたり両国間の経済交流に中心的な役割を果たしてこられ、また、同会議を通じて皆さま方が、両国関係の着実な前進のため多大な貢献をしてこられたことに対し、あらためて深い敬意と感謝の意を表します。

 今次会議は、新関西空港はじめ数々のプロジェクトを以って二十一世紀へ飛躍しようとする大阪において開催されます。両国経済界の代表として、夫々の国において指導的地位におられる本会議参加の皆さま方が、忌憚のない意見交換を通じて相互理解を更に深められ、また、今後ともこの会議が、二十一世紀に向けて両国関係の強化のために引き続き重要な役割を果たされるよう祈念し、私の挨拶とさせて頂きます。