[文書名] キーティング豪州首相主催晩餐会における宮澤内閣総理大臣の挨拶
キーティング首相閣下、ヒューソン自由党党首閣下、並びに御列席の皆様
皆様の暖かい歓待に心よりお礼申し上げます。今回の訪問は名高い貴国のもてなしを堪能するにはあまりに短期間でありますが、私の一行は四月に秋の景色の美しさに触れ、すがすがしさを味わっているものと思います。
キーテイング首相閣下
私は今回の貴国訪問で、日豪が、過去約二十年の間に、いかに遠くまで両国のパートナーシップ構築の道を歩んできたかにつき、深い感銘を受けております。
私が閣僚として初めて質国を訪問した一九七一年には、日豪両国は二国間関係のあり方を手さぐりで探っていました。一九七〇年の大阪万博参加に当たっての豪州のテーマであった「東経百三十五度線上の友人」は、両国民の間の心理的な距離を縮めんとして考えられたものといえるかもしれません。
一九七八年に第五回日豪閣僚委員会のため訪豪した際、我々日豪の閣僚は両国間の「ナチュラル・パートナーシップ」につき論じておりました。要するに、これは両国経済の特徴を基礎とする相互補完関係を意味しておりました。
今日では、我々のパートナーシップは二国間関係の枠をはるかに越えて広がっております。豪州は自らの将来をアジアに賭しております。日本はアジア及び太平洋、さらには世界全体へと、国際社会の重要なメンバーとしての責任を果たすべく活動範囲を広げております。従って、今日の閣下との会談は、広範な国際問題及びアジア・太平洋地域問題に及びました。これらすべての基礎に、外に目を向け続ける二つのアジア・太平洋国家、豪州と日本の利益が深く重なりあってきたとの認識があります。我々のパートナーシップは、逆行しようのない弾みをもって、さらに発展すると私は確信しております。
キーティング首相閣下
豪州は、文化的多様性と開放的で友好的な国民性により、我々日本人を大いに魅きつけております。我が国から多数の旅行者が貴国へ向っていることはその証左であります。恐らく、次第に多くの日本人が豪州では四種類のフットボール競技があることを理解し始めていると思います。来る十一月に我が国で開催される「セレブレート・オーストラリア」は、日本国民の貴国に対する関心をさらに高める上で、特に有意義であります。私は、この企画への閣下の個人的コミットメントを歓迎すると共に、心からその成功を祈念致します。
今夕、私は閣下に次のメッセージを申し上げたいと思います。多元的文化の、国際的な、それでいて独自の国民性を失わない豪州は、日本のかけがえのない友人であります。我々は皆様とともに緊密に協力していきたいと考えております。
この友情を支えるため、両国国民間の相互理解を増進する努力をあらゆるレベルで積極的に行うことが重要であります。豪州における日本語学習者数の増大は、この点大変喜ばしいことです。
最後に日本と豪州の間の絶えざる友情への私の希望と確信を表明し、挨拶と致します。(英文スピーチ七一九ページ)