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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本及び南太平洋フォーラム首脳会議宣言

[場所] 東京
[年月日] 1997年10月13日
[出典] 外交青書41号,324−326頁.
[備考] 
[全文]

 日本及び南太平洋フォーラム(オーストラリア、クック諸島、ミクロネシア連邦、フィジー、キリバス、ナウル、ニュー・ジーランド、ニウエ、パラオ、パプア・ニューギニア、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、トンガ、トゥヴァル、ヴァヌアツ)の元首及び代表は、日本と太平洋地域との間の友好の強い絆及び共通の利益を認識し、日・南太平洋フォーラム首脳会議に出席するため、1997年10月13日に東京で会合した。首脳会議参加者は、太平洋島嶼の持続可能な開発及び経済的・社会的福利に向けてパートナーとして協力することについてのコミットを新たにし、次のとおり宣言する。

1.日本及び南太平洋フォーラム加盟国・地域は、ともに太平洋地域に位置し、アジア太平洋地域全体がそうであるように、各々の発展が互いの利益であると認識する。首脳会議は、アジアの急速な経済発展に留意し、アジア太平洋地域の発展が太平洋島嶼国の発展をもたらすべきであり、このことにより、アジア太平洋地域全体の安定かつ持続可能な開発を確保することができることを強調した。この関連で、首脳会議は、国際社会に対し、この地域への積極的なコミットを保持するよう呼びかけた。

2.首脳会議は、太平洋島嶼国が持続可能な開発及び世界経済へのより緊密な統合を促進するための経済政策及び公的部門の改革にコミットしていることに留意した。首脳会議は、また、世界的な貿易自由化とグローバリゼーションヘの傾向が加速していること、及び太平洋島嶼国が直面している疎外化の危険を認識するとともに、疎外化の問題に多角的貿易体制の下で取り組むことの重要性を強調した。このような国際的進展に対応するためにこの地域が取り組んでいる経済改革のプロセス、特に、最近のラロトンガの南太平洋フォーラム総会及びフォーラム経済閣僚会議の結果、APECにおける地域的イニシアティブ及び世界貿易機関における進展を支持し、首脳会議は、国際社会及び特に太平洋地域の開発パートナーに対しても、このような努力を認識し、支持するよう呼びかけた。

3.首脳会議は、漁業が太平洋地域の経済の安定にとって極めて重要であることを認識するとともに、持続可能な原則に基づく中西部太平洋における高度回遊性魚種の効果的な保存及び管理、並びに1997年6月に開催された第2回中西部太平洋高度回遊性魚種資源保存管理に関する多国間ハイレベル会合におけるマジュロ宣言の規定の実施を確保するための措置の確立について十分協力することに合意した。

4.太平洋島嶼国の将来の発展のためには、民間部門の育成が枢要であることを認識し、首脳会議は、昨年、日本政府が南太平洋フォーラム事務局と共同で太平洋諸島センターを東京に開設したことを高く評価した。首脳会議は、太平洋諸島センターの効率的な運営の確保についてのコミットを再確認すると共に、日本のビジネス界に対し、日本と太平洋島嶼国との間の貿易、投資及び観光の促進のために、太平洋諸島センターと協力するよう呼びかけ、また、日本政府に対し、今回の首脳会議のフォーローアップとして、太平洋諸島センターが来年東京において太平洋島嶼国総合展示会及び投資セミナーを開催することを支援するよう要請した。

5.首脳会議は、緊密な協力の価値を認識し、日本と南太平洋フォーラム加盟国・地域が国連その他の国際的な場において開発、環境及び太平洋地域に直接的に関係する分野について、協力を継続することに合意した。また、この関連で、先進国と開発途上国との間の真の協調関係に基づいた「新たな開発戦略」が特に必要であり、この戦略の一層の浸透と具体化の方途を探るべきであることも認識された。首脳会議は、国連改革を早期に達成することへの継続したコミット、特に、国連事務総長が最近発表した改革案を早期に承認することを確認した。首脳会議は、また、国連の財政改革及び安保理改革に対する力強い支持及びこれらの改革を均衡のとれた形で実現することの重要性を指摘した。

6.首脳会議は、持続可能な開発の原則へのコミットを確認し、地球規模の環境問題、特に気候変動及び海面上昇といった太平洋島嶼国が特に懸念を有する問題の重要性を認識した。この関連で、首脳会議は南太平洋地域環境計画による作業の重要性を認識した。首脳会議は、1997年9月19日に発出された「気候変動に関するSPF首脳の声明」を歓迎するとともに、太平洋地域を通過するプルトニウム及び高レベル廃棄物の輸送に関して南太平洋フォーラムが引き続き懸念を有していることに留意した。首脳会議は、また、このような太平洋島嶼国が懸念を有する事項に取り組むに当たって、日本政府が誠実な努力を行っていることを歓迎し、これらの事項について緊密に協力することを確認した。首脳会議は、本年12月に京都で開催される「国連気候変動枠組条約第3回締約国会義{前1文字ママ}」の成功を祈念した。この関連で、首脳会議は、脆弱性の指標を作るために国連を含むいくつかの国際フォーラムにおいて現在行われている作業の重要性を認識するとともに、この過程において太平洋島嶼国の特別の事情が取り入れられるよう要請した。

7.太平洋島嶼国からの参加者は、日本政府が太平洋ハイテクセンター(PICHTR)に対し、この地域の海洋及び熱帯環境に適したエネルギー・システムを開発するとの観点から、特に太平洋島嶼国の遠隔の村落用として設計された再生可能な電力システムの開発、並びに太平洋島嶼国の政府及び民間部門の人員のために行われる研修訓練プログラムのための財政的搬出を行っていることについて感謝の意を表明した。首脳会議は、太平洋ハイテクセンターがこの地域の持続可能な開発の推進に資する研究その他の活動を継続するよう呼びかけた。

8.首脳会議は、ビジネス、教育、観光、及び文化的活動において、人的なコミュニケーションと交流を強化することの重要性を認識した。首脳会議は、特に将来の世代の担い手である若者の間の交流を重視した。この関連で、首脳会議は、今後日本が太平洋島嶼国と日本との間の学生の交流を増加させるために最大限の努力を行うことにコミットしていることを暖かく歓迎した。

9.首脳会議は、太平洋島嶼国による幅広い経済改革及び持続可能な開発の達成に向けた努力に対する支援において太平洋の地域機関、特に、南太平洋地域機関調整委員会に加盟する地域機関、が果たしている重要な役割を認識し、また、これらの地域機関に対する適切な支援の必要性を認識した。首脳会議は、地域における開発パートナーによる地域機関への支援の継続を歓迎し、かつ、要請すると共に、このような点に関し、日本、豪州及びニュー・ジーランドの継続したコミット、特に、太平洋地域における遠隔教育の施設の改善に対するコミットとこの目的にために資源を提供するとの意図を高く評価した。

10.太平洋島嶼国からの参加者は、日本がこの地域に対して行った経済協力が太平洋島嶼国の開発への努力及び地域の安定に著しく貢献してきたことについて感謝を表明し、日本がこの地域に対し、開発のための支援を継続するよう要請した。また、南太平洋フォーラム加盟国・地域の首脳は、日本政府及び日本国民に対し、首脳会議の準備及び東京滞在中に受けた心からの歓待に対し感謝の意を表明した。