データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第6回日豪外務・防衛閣僚協議共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 2015年11月22日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文]

2. 閣僚は,民主主義,人権,法の支配,市場の開放と自由貿易を含む共通の価値と戦略的利益に基づく両国の「特別な戦略的パートナーシップ」によって可能となっている,2014年

7月の安倍総理大臣のオーストラリア訪問以降の日本とオーストラリアの間のより緊密な関与を歓迎した。

3. 閣僚は,パリにおけるテロ攻撃及び罪のない多くの人々を殺害・負傷させた昨今のその他多くの襲撃を,全面的に非難した。閣僚は,対ISIL国際コアリション等の国際的なテロ対策の取組の重要性を認識した。日本とオーストラリアは,イラク及びシリアの危機に対して,重要な人道支援を実施している。

4. オーストラリアは,日本が「積極的平和主義」により地域及び世界の平和,安定及び繁栄により一層積極的に貢献することを可能にする平和安全法制が最近成立したことを歓迎した。オーストラリアはまた,日本の限定的な集団的自衛権の行使に係る見直し,国際連合平和維持活動へのより積極的な参加,及び防衛装備品・技術の移転に関する新たな原則(防衛装備移転三原則)の策定を支持した。

5. 二国間防衛協力の強化は,オーストラリアと日本にとって優先事項である。閣僚は,200

7年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」に基づき,2014年に作成され,首脳間で承認された二国間の安全保障・防衛協力を新たな段階に引き上げる一連の提案を実行するための進捗を歓迎した。これらの提案には,共同訓練の強化,人員交流の増進,人道支援・災害救援における協力の深化,海洋安全保障,平和維持活動,能力構築及び米国との三国間の防衛協力の強化のための選択肢が含まれた。これまでの進捗に基づき,閣僚は二国間防衛協力を更に強化するための新たなイニシアティブを特定し,この分野における協力を強化する決意を新たにした。

6. 閣僚はまた,共同運用と訓練を円滑化すべく行政的,政策的及び法的手続を相互に改善する協定の作成に向けた交渉の実質的な進展を歓迎した。閣僚は,可能な限り早期の交渉妥結を目指し,継続的な進展を促した。

7. 日本側の閣僚は,豪州の将来潜水艦プログラムの実現を支援する国際パートナーを選ぶために進行中の競争的評価プロセスにおいて,全ての要請を満たすことへの日本のコミットメントを説明した。オーストラリア側の閣僚は,プロセスへの日本の参加を歓迎するとともに,日本のプロセスへのコミットメントに留意した。

8. 閣僚は,経済的及び戦略的に重要なアジア太平洋及びインド洋地域への両国の深い関与を強調した。閣僚は,これらの地域で繁栄を築き安定を維持することは,両国にとって極めて重要であることを認識した。

9. 閣僚は,経済的繁栄や地域の平和と安定を支援するため,太平洋地域における協力を引き続き強化していく決意を表明した。また,太平洋地域における協力のための共同戦略を可能な限り速やかに完成させる。

10. 閣僚は,安全保障,安定,経済成長及び地域統合を支援するため,地域的なフォーラムを通じて取り組むことの重要性について議論した。閣僚は,東アジア首脳会議(EAS)を,戦略的対話を行う,地域の第一級の首脳主導のフォーラムとして強化する取組を歓迎した。

11. 両国は,安全保障の問題についての協力及び対話を促進するに当たってのASEAN地域フォーラム(ARF)及び拡大ASEAN国防相会議(ADMMプラス)の継続的な貢献を歓迎した。閣僚は,アジア太平洋協力(APEC)の課題を進展させるために緊密に協力することを期待する。

12. 閣僚は,海洋における法の支配の促進の重要性を再確認した。閣僚は,東シナ海において現状を変更し得るあらゆる威圧的もしくは一方的な行動に対して,強く反対する旨を表明した。

13. 閣僚は,南シナ海における最近の情勢に強い懸念を示し,現状を変更し得るあらゆる威圧的もしくは一方的な行動に対して,強く反対することを強調した。閣僚は全ての関係当事者に対し,大規模な埋立て,建設及び軍事的目的のための使用を停止するよう求めた。閣僚は,威嚇,強制及び武力の行使による領土及び領海の主張に強く反対した。閣僚は,関係当事者に対し,自制し,緊張を緩めるための措置を講じ,緊張を高め得る挑発的な行動を自制するよう要求した。閣僚は,関係当事者に対して,海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)を含む国際法に従って領有権の主張及び付随する海洋に係る権利を明確にし,また追求することを求めた。この点に関連して,閣僚は,関係当事者が紛争を,仲裁を通じることを含め平和的に解決することを追求する権利を支持した。閣僚は,フィリピンにより提起されたUNCLOSの下での現在進行中の仲裁裁判に留意するとともに,仲裁裁判所の決定は,法的拘束力を持つことを確認した。

14. 閣僚はまた,東南アジア諸国連合(ASEAN)及び中国に対し,南シナ海における関係国の行動宣言(DOC)の下でのコミットメントの完全かつ実効的な履行及び具体的な南シナ海における行動規範(COC)への可能な限り早期の合意を求めた。閣僚は,国際法に従って全ての国が享受する権利,自由,海洋の合法的利用の重要性を強調した。閣僚は,全ての国は国際法に従って南シナ海におけるものを含む航行及び上空飛行の自由を有することを認識した。日本とオーストラリアは,これらの権利を強く支持した。

15. 閣僚は,対話,協力並びに関与を通じた中国との建設的で互恵的な関係の重要性を再確認した。

16. 閣僚は,北朝鮮が東アジア地域全体の深刻な不安定要因であり続けていることへの懸念を強調するとともに,人道上の懸念について議論した。閣僚は,北朝鮮が国際的な義務やコミットメントを完全に果たし,非核化に向けて具体的措置を採るよう強く要請するとともに,北朝鮮に対し,非人道的かつ専制的な人権侵害を終局させ,未解決となっている拉致問題に取り組むよう呼びかけた。

17. 閣僚は,女性に対するあらゆる形態の暴力を非難し続ける等,女性の権利を尊重する世界を実現するため,共に取り組むとのコミットメントを再確認した。閣僚はまた,国連及び開発機関が,全ての女性に正義,安全そして繁栄を保障するため女性の参画増進に貢献できるようにするべく,協力する決意を表明した。閣僚は,加盟国に対して平和構築及び平和交渉における女性の意義ある参画並びに武力紛争時における女性と少女の権利と利益の保護を要請する国連安保理決議1325号の実施のため協力する決意を表明した。

18. 国連創設70周年を記念して,閣僚は,人権及び持続可能な開発を育むこと等により平和と安全を促進するにあたり国連を強力で効果的たらしめるためのコミットメントを再確認した。この点に関連して,閣僚は,日本の常任理事国入りを含む,国連安全保障理事会改革の早期実現に向けた協力を強化する意思を改めて確認した。閣僚は,日本が2016-2017年の任期で安全保障理事会理事国として選出されたことを歓迎し,世界が現在直面している,多数のまた複雑な国際的脅威に安全保障理事会が対処するにあたり,日本が果たす建設的貢献の重要性を認識し,また,豪州の2013-2014年の任期で安全保障理事会理事国を務めた経験を踏まえ,安全保障理事会が直面する課題について引き続き緊密に連携を取ることをコミットした。

19. 閣僚は,地域及び国際的な安全保障情勢について意見交換し,それぞれの米国との同盟関係が地域の平和と安全に著しく貢献していることを再確認した。閣僚は,地域における米国の強い関与の重要性と,米国のリバランス(アジア太平洋重視政策)への強い支持を強調した。

20. 閣僚は,各国が米国との間に有する二国間安全保障関係の強固さ及び日米豪戦略対話を含む三か国協力を更に強化するコミットメントについて議論した。

(了)