[文書名] 経済安全保障協力に関する日豪共同宣言
1. 我々、日本及びオーストラリアの両首相は、信頼、共有する価値観及び相互利益に基づき、両国の繁栄、安全保障及び経済の将来が深く結びついていることを認識しつつ、我々の特別な戦略的パートナーシップを更なる高みへと引き上げるとのコミットメントを再確認する。この共有する野心的なビジョンを体現し、自由で開かれたインド太平洋へのコミットメントを推進するため、我々は、2022年の「安全保障協力に関する日豪共同宣言」を補完する形で、我々の「経済安全保障協力に関する日豪共同宣言」を発表する。
2. 経済的及び技術的な強靱性が国家安全保障の基盤であることを認識し、本宣言は、戦略的自律性と不可欠性の双方を高め、インド太平洋地域及び国際経済秩序における経済的強靱性を強化するよう、経済安全保障に関する二国間協力を推進するための連携した戦略的指針としての役割を果たす。
二国間協力の促進
二国間協議による政策調整
3. 我々は、経済安全保障対話、経済対話、科学技術協力合同委員会、エネルギー・資源対話、食料安全保障対話、テレコミュニケーション強靱化政策対話等の二国間対話を活用することにより、我々のメカニズムを強化し、それぞれの経済安全保障政策のより一層の調整を図る。
4. 我々は、いずれか一方の安全保障上の利益に影響を及ぼし得る地政学的緊張、経済的威圧又はその他重大な市場の混乱に関するものを含む、経済安全保障上の緊急事態に関して、情報を共有し、相互に協議するとともに、対応措置を検討することにコミットする。
戦略的に重要な分野における二国間投資・貿易の機会の促進
5. 我々は、オーストラリアが日本にとって鉱物及びエネルギーの最も安定的な供給国の一つとして果たす役割、また、日本がオーストラリアにおけるエネルギー及び資源の強力なサプライチェーンの構築を支援する重要な投資元であることを再確認する。我々は、戦略的に重要な分野において、投資及び貿易の機会を促進すべく、協力を強化することにコミットする。
6. 我々は、市場原理及び民間セクターのオーナーシップと整合的な形で、投資環境の予見可能性及び透明性を高めることにコミットする。この点、我々は、二国間の投資及び貿易先としての両国の魅力の発信を強化するとともに、両国の戦略的金融機関の間のより緊密な連携を促進する。
7. 我々は、日本における投資審査制度の高度化及び外国投資に関する新たな委員会の設立に係る計画を含め、投資審査に関する各種政策の情報共有及び最新状況の共有を通じて、投資安全保障に関連する事項についての協力を更に強化する。
民連携の強化
8. 我々は、産業界からの積極的な意見照会を含め、機会を最大化し集団的な強靱性を高めるため、官民連携を強化する。我々は、機関や日本政府が設立するシンクタンク及びオーストラリアのシンクタンクの間の連携深化を始め、両国の政策及び学術分野の更なる交流を促進する。
エネルギー、重要鉱物、食料及び金属加工に関する協力
9. 我々は、あらゆる形態の経済的威圧、有害な過剰生産及び市場の歪曲につながる非市場的政策及び慣行(NMPPs)の利用並びにグローバル・サプライチェーンに重大な悪影響を及ぼし得る輸出規制、特に重要鉱物に対する輸出規制に強い懸念を表明する。我々は、輸出管理措置を講じるいかなる場合にも、戦略的サプライチェーン、特に重要鉱物のサプライチェーンを混乱させないよう、厳密に定義され、差別的でなく、国際法及び国際慣行に従っていることを確保することの重要性を改めて強調する。
10. この点、我々は、透明、多様、安全、持続可能で信頼性のある、経済的に効率的かつ強靱なサプライチェーンと重要分野へのアクセスが、我々の経済安全保障の中核であることを確認する。我々は、二国間及び多国間のイニシアチブ等を通じたものを含め、エネルギー、重要鉱物、食料その他重要な工業品及び製造品といった主要物資のため、包括的なサプライチェーン協力を支援することに共に取り組む。
11. 我々は、従来型のエネルギー、再生可能エネルギー及び資源に関する協力を通じたものを含め、エネルギー安全保障及びサプライチェーン強靱性、エネルギー移行並びに脱炭素に関するパートナーシップを引き続き深化させる。我々は、それぞれのエネルギー及びそれに関連する政策並びに脱炭素化の道筋の策定と実施について相互に協議、情報共有し、オーストラリアの未来ガス戦略及びネット・ゼロ計画、日本の第7次エネルギー基本計画及びアジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ(パワー・アジア)等のイニシアチブと連携させることに共に取り組むことにコミットする。
12. レアアースを含む重要鉱物は、先端技術やその他の産業投入財に不可欠である。我々は、オーストラリアの重要鉱物戦略備蓄制度が、重要鉱物のサプライチェーン等を多角化するための重要な取組であることを認識し、相互の利益の最大化に向け、協働していくことにコミットする。
13. 我々は、政府が支援する投資パートナーシップを基盤として活用し、レアアース、ガリウム等を含め、オーストラリアにおける重要鉱物プロジェクトへの日本企業の参画が有する戦略的価値を認識する。我々は、新規プロジェクトの開発、進行中のプロジェクトの安定操業の確保、米国及び他の志を同じくするパートナー並びに多国間開発銀行との協働を含め、投資及びオフテイクの更なる機会を追求する。この点、我々は、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構、国際協力銀行、オーストラリア輸出金融公社といった政府系機関が民間投資を促進する上で果たす重要な役割を認識し、これらの機関間の調整を強化するために協力する。
14. 我々は、国内の製錬及び金属加工能力の維持が、我々の経済及び産業の強靱性にとって戦略的価値を有すること、そしてこれらの能力の強化に向けた相互の協力が、我々の集団的な経済安全保障を強化することを認識する。資源、技術及び専門性における双方の補完的な強みを生かし、低排出のアルミニウム、鉄鋼産業等の関連分野への投資を促進する標準、認証及び責任ある供給慣行に関する協力を含め、加工能力の拡大に関する共通の課題にも取り組む。
重要・新興技術のイノベーションと保護
15. 我々は、信頼される研究が研究セキュリティ及び研究インテグリティの双方に依存していることを認識し、これらに関する協力を強化する。我々は、信頼される研究環境を通じて、責任ある有益な国際研究の協力を可能にするとともに、外国による所有、コントロール、影響のリスクや重要・新興技術によってもたらされるその他の脅威への対応に関する協力を強化する。
16. 我々は、AI、データセンター、量子、バイオテクノロジー、宇宙、海底ケーブル及び電気通信等の重要・新興技術について、国立研究所を含む政府、民間部門、学術界の間での具体的な協力を更に促進する機会を模索する。さらに、我々は、特にSTEM分野での学術交流及び重要な研究インフラへのアクセスが研究開発の促進に重要であることを認識し、そのような交流やアクセスを一層円滑にするための方策を検討することにコミットする。
17. 我々は、イノベーションと先端技術が我々の国家安全保障及び経済安全保障と不可分であり、防衛産業を含む重要・新興技術における協力が、我々の集団的強靱性と経済安全保障の強化に極めて重要な役割を果たすことを認識する。我々は、オーストラリアの汎用フリゲートプログラムを協力推進の契機としつつ、産業及びサプライチェーンの連携、技術移転、並びに専門性の共有を通じて、防衛産業間の協力を更に深化させることにコミットする。
インド太平洋地域における共同の取組の強化
18. 我々は、日米豪印、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)、アジア太平洋経済協力(APEC)及びインド太平洋における産業基盤強靱化パートナーシップ(PIPIR)を通じて、また、米国及びASEANを含むパートナーとともに、地域の経済的強靱性を強化するための取組を共に強化する。これには、強靱なサプライチェーンの構築、財政的に持続可能な質の高いインフラ支援、水素分野を含むクリーンエネルギー移行の支援、並びに気候変動上の課題、非市場的政策及び慣行とそれに起因する過剰生産能力、経済的威圧及び偽情報への共同対処が含まれる。我々は、関連する経済安全保障ツールキットを活用しつつ、情報とベストプラクティスを共有するために、地域との協力を強化する。
19. 我々は、地域の安全な連結性の強化が、成長と繁栄に不可欠であることを認識する。我々は共に、インド太平洋地域において、広島AIプロセスを通じた取組を含むAI分野や、電気通信、海底ケーブル、データセンター、オール光ネットワークといったデジタルインフラ分野における協力的な取組等により、安全、安心で信頼できるAI及びデジタル・エコシステムを実現する。特に、海底ケーブルの分野においては、より頻繁な議論を通じて我々の戦略的調整を強化し、また、地域における安全な海底ケーブルを防護・維持し、この重要なインフラを保護するために協力するという我々のコミットメントを再確認する。
20. 我々は、コルレス銀行関係の維持やアジア・太平洋マネーロンダリング対策グループの共同議長として同地域の能力開発に焦点をあてた協力等を通じて、太平洋島嶼国(PICs)における持続可能で包摂的な開発を引き続き支援する。
ルールに基づく国際経済秩序の強化
21. 我々は、非市場的政策及び慣行へ対抗すること、並びに輸出規制を手段とする経済的依存の武器化を含む経済的威圧及び有害な過剰生産に対する経済的強靱性を構築することの緊急性を共有する。その際、世界貿易機関(WTO)を中核とする、よく機能し、ルールに基づく多角的貿易体制が、我々の経済的繁栄、経済的強靱性及び経済安全保障の礎であり続けるべきことを確認する。このため、WTOが本来の目的に適合し、我々が直面する課題に対処できるよう、WTO改革を共に進めていく。
22. 我々は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)が我々の経済の繁栄を引き続き支えることを確保するべく、同協定を更新し強化すること、及びオークランド原則にのっとり、その高い水準を確保しつつ拡大を継続することを含めて協働していく。また、我々は、CPTPPとASEANとの間及びCPTPPと欧州連合(EU)との間の貿易・投資対話を引き続き推進させる。
23. 我々は、2024年のOECD閣僚理事会で認識された「強靱で信頼性のあるサプライチェーンに関する原則」の重要性を再確認し、全ての国が同原則を支持するよう促す取組を確認する。
2026年5月4日にオーストラリアのキャンベラにおいて英語及び日本語で二部署名し、両文書は同等の価値を有する。
日本国政府のために
高市早苗
内閣総理大臣
オーストラリア政府のために
アンソニー・アルバニージー
首相