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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中ソ共同宣言(中華人民共和国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との共同宣言)

[場所] 
[年月日] 1954年10月12日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),669−671頁.外務省アジア局中国課編「中共対日重要言論集1」第1集, 117−123頁.
[備考] 
[全文]

 中華人民共和国とソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、両国間の日ましに発展している全面的な協力の面と国際情勢の諸問題に対する両国の観点が完全に一致していることを確認した。

 中国人民が歴史的な勝利をかちとり、かつ中華人民共和国を樹立して後、五年来、中華人民共和国とソ連邦は、一九五〇年二月十四日の友好同盟相互援助条約に合致した緊密な協力関係を打ち樹てた。

 この条約は、中ソ両国人民の心からの願望を基礎にしたものであり、このような願望は相互に援助しあい、両国の経済と文化の発展をうながし、両国間の兄弟のよしみをさらにかため、拡大することをうながすものであり、したがつて国際連合と趣旨と原則に合致し、極東および世界の平和と安全を鞏固ならしめることをうながすものである。

 経験が証明しているごとく、中華人民共和国とソ連邦の協力は、偉大な生命力をそなえており、この種の協力は、極東の平和と安全にとつての確かな保証となり、世界平和を擁護する重要なる要素である。

 中華人民共和国政府とソ連邦政府は、中ソの間ですでに打ち樹てられた友好関係は両国が平等、互恵、国家主権と領土の完整の相互尊重の原則にもとづき、しかもさらに一歩を進めた密接な協力に基礎を置くものであることを声明する。

 両国政府は、次のような一致した願望を有する。平和を鞏固ならしめようとする一切の国際活動に引続き参加するとともに、中ソ両国の共通の利益に関係ある問題については相互に話しあい、かくして両国の安全を守り、および極東と世界の平和を擁護するという点において、一致した行動をとるものである。

 ジュネーヴ会議は、インドシナの軍事行動の停止を実現させ、インドシナ各国人民の合法的な民族の権利にもとづいて、この地区の情勢を調整することを可能にした。ジュネーヴ会議は、国際連合憲章にもとづいて国際間の平和を守る上で重要責任をになつている各大国がさし迫つた国際問題の討論に参加することが平和の事業にとつて重要な意義をそなえていることをはつきり示した。ジュネーヴ会議はまた、中華人民共和国が国際連合で合法的地位をうることを阻害しているアメリカの指導するグループのとつている政策がまつたく根拠のないものであることをはつきり示した。

 アメリカのかかる政策と、アメリカが中華人民共和国にたいして進めている直接的な侵略行為、とくにアメリカが中国の領土台湾に対して引続いて侵略占領していること、およびアメリカが中国人民の敵である蒋介石グループにたいし軍事と財政の援助をしていること、これらすべてはどれも極東の平和を擁護し、国際間の緊張情勢をやわらげるという使命とは相容れないものである。

 両国政府は、朝鮮がいまにいたるとも依然として二つの部分に分裂していることは、統一、平和愛好、民主的朝鮮国家の樹立を要求する朝鮮人民の当然な願望に反するものであり、こうした情勢は正常なものではないことを認める。朝鮮の統一が重要な任務のひとつであり、しかもこの任務の解決が極東の平和をかためる上に大きな意義をもつていることにかんがみ、両国政府は近い将来に朝鮮問題を討議する会議を開き、関係各国が広はんにこれに参加する必要のあることを認める。

 中華人民共和国とソ連邦は、東南アジア侵略軍事ブロックの結成を断固として非難する。それは、このブロックがその発起人の帝国主義的意図を基礎としたものであり、その意図は、まずアジアの国家の安全と独立に反対することにあり、同時にアジアと太平洋地域の平和という利益に反対することにあるからである。

 中華人民共和国とソ連邦は、引続きアジアおよび太平洋地域の各国家、およびその他の国家との関係を、相互に主権領土の完整の尊重、相互不侵略、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存の諸原則を厳格に遵守するという基礎の上に樹立し、かくしてこそ成果のある国際協力を発展させる広はんな可能性がもたらされるであろうことを両国政府は、声明する必要があると認める。

 両国政府は、かかる政策はアジア人民をも含めて各国人民の根本的利益に合致するものとかたく信じている。各国人民の安全と幸福は、各国が共同で平和を擁護する仕事に努力するという条件の下においてこそ、始めて保証されるのである。

 中華人民共和国政府とソ連邦政府は、おのおのの側において全力をあげて、アジアに関係ある諸問題の解決をふくめて、懸案となつている国際間の諸問題の解決を促進するものである。

  一九五四年十月十二日