[文書名] 対日共同宣言(中華人民共和国政府およびソヴィエト社会主義共和国連邦政府の日本に対する関係についての共同宣言)
第二次世界大戦が終つた後、ポツダム協定の規定にもとづいて、日本は完全な民族独立を得、自己の民主制度を打ちたて、自己の独立した平和経済と民族文化を発展せしむべきであつた。
しかるに、ポツダムの決定の執行にたいして主要な責任を担い、日本の主要な占領国であるアメリカは、かえつて横暴にもこれらの決定を破壊し、日本人民の利益をふみにじり、上にのべた各大国の協定に反するサンフランシスコ「講和条約」およびその他の協定を日本におしつけた。
戦争が終つてから九年このかた、日本は依然として独立を獲得しておらず、引続きなかば被占領国の地位にある。日本の領土にはアメリカの軍事基地がいたるところに置かれている。これらの基地を設けた目的は、平和を擁護する任務、および日本の平和、独立の発展を保護する任務とは少しも共通するものはない。日本の工業と財政は、アメリカの軍需物資注文にたよつており、日本はその対外貿易の面において制限をうけており、これらはすべて日本の経済に致命的な影響をあたえ、主として日本の平和工業部門に影響をあたえている。
これらすべてのことは、日本人民の民族的自尊心を傷つけ、日本人民に信念を失わせる雰囲気を造り、日本人民の各種の才能をそくばくしないはずがない。
目下の日本の情勢は、アジアおよび極東の各国人民の間に一種の当然起る不安な気持を醸しだしている。アジアおよび極東の各国人民は、日本がすでに日本人民の利益にそむき、また極東の平和を守る任務にもそむく侵略計画の執行に利用されることを心配している。
外国の利益に服従する上述の各条約および協定を結んだために、困難な境遇に陥つている日本と日本人民にたいし、中華人民共和国の人民とソ連邦人民は深い同情を示すものである。日本人民は、自分たちの中に充分な力をみいだし、外国に依存する地位から脱却し、みずからの祖国を復興する道を歩み、その他の国家、とりわけ自分の隣国と正常な関係を打ち立て、並びに広はんな経済協力と文化連繋をおこなう道を歩むことができると両国人民は信じている。
中華人民共和国政府とソ連邦政府の日本に対する政策は、社会制度を異にする国家も平和に共存できるという原則にもとづいており、また両国はこれが各国人民の切実な利益に合致するものであることを信じている。両国政府は、互恵の条件によつて日本と広はんな貿易関係を発展させ、並びに日本と密接な文化上の連繋を樹立することを主張するものである。
同時に両国政府は、それぞれステップを踏んで日本との関係を正常化させたいと願つていることを表明する。かつまた、両国政府は次のように声明する。すなわち、日本が中華人民共和国およびソ連邦と政治関係と経済関係の樹立に努力することは、中国、ソ連邦側の全面的な支持をかちうるであろうし、同様に日本側がその平和および独立発展の条件を保護するためにとるすべてのステップも、中ソの全面的な支持をかちうるであろう。
一九五四年十月十二日