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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ソ平和条約両国案(日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約(案)),日本側提出の平和条約案 

[場所] ロンドン
[年月日] 1955年8月16日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),718−719頁.松本俊一「モスクワにかける虹 日ソ国交回復秘録」朝日新聞社,1966年,183−190頁.
[備考] 
[全文]

日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に平和を回復し、国際連合憲章の諸原則に適合して善隣友好の関係を設定することを希望し、

両国間の戦争状態の存在の結果として生じた諸問題の解決の必要を認め、

平和条約を締結することに決定し、

このため、その全権委員として次のとおり任命した。

日本国

ソヴィエト社会主義共和国連邦

 これらの全権委員は、互にその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。

    第一条

 日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の戦争状態はこの条約が効力を生ずる日に終了する。

    第二条

 ソヴィエト社会主義共和国連邦は日本国の国際連合への加入の申請を無条件に支持する。

    第三条

一 両締約国は相互の関係において国際連合憲章の諸原則、特に同憲章第二条に掲げる次の原則を指針とすべきことを確認する。

(a)その国際紛争を、平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決すること。

(b)その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むこと。

二 両締約国はそれぞれの締約国が国際連合憲章第五十一条に掲げる個別的又は集団的自衛の固有の権利を有することを確認する。

    第四条

 各締約国は、それぞれ他方の締約国の内政に干渉しないこと及び当該他方の締約国の政治的又は社会的秩序の暴力による変更を目的とするいかなる企画又は活動に対しても、直接的であると間接的であるとを問わず、いかなる方法によつても援助を与えないことを約束する。

    第五条[編注 8月30日の修正提案]

一 戦争の結果としてソヴィエト社会主義共和国連邦によつて占領された日本国の領土のうち、

(a)択捉島、国後島、色丹島及び歯舞諸島については、この条約の効力が生じた日に日本国の主権が完全に回復されるものとする。

(b)北緯五十度以南の樺太及びこれに近接する諸島並びに千島列島については、なるべくすみやかにソ連邦を含む連合国と日本国との間の交渉によりその帰属を決定するものとする。

二 一(a)に掲げる領土に現在駐留しているソヴィエト社会主義共和国連邦の軍隊及び官吏は、この条約の効力発生後なるべくすみやかに、かつ、いかなる場合にもその後九十日以内に、撤退しなければならない。

(注)八月十六日行なつた提案[原提案]

 一 戦争の結果としてソヴィエト社会主義共和国連邦によつて占領された日本国の領土については、この条約の効力発生の日に日本国の完全な主権が回復されるものとする。

 二 前項に掲げる領土に現在駐留しているソヴィエト社会主義共和国連邦の軍隊及び官吏は、この条約の効力発生後なるべくすみやかに、かつ、いかなる場合にもその後九十日以内に、撤退しなければならない。

    第六条

 ソヴィエト社会主義共和国連邦は日本国に対するいつさいの賠償請求権及び一九四五年八月九日以来戦争の期間中日本国、その団体及び国民が執つた行動の結果として生じたソヴィエト社会主義共和国連邦、その団体及び国民の日本国、その団体及び国民に対するすべての請求権を放棄する。

    第七条

 日本国は戦争から生じ、又は極東における戦争状態の存在のために執られた行動と関連するソヴィエト社会主義共和国連邦、その団体及び国民に対するすべての請求権を、その性質のいかんを問わず、日本国政府、日本国の団体及び国民の名において放棄する。

    第八条

 両締約国は、この条約が効力を生じた後一年以内に、戦前の両国間の条約のうちのいずれが引き続いて有効であるかを合意により確認するものとする。こうして確認されないすべての条約は廃棄されたものとみなす。

    第九条

 両締約国はその貿易、海運、その他の通商関係を安定した、かつ、友好的な基礎に置くために、条約又は協定を締結するための交渉を開始することに同意する。

    第十条

 両締約国は、公海における漁場の保存及び開発並びに一方の締約国の領海に近接する水域における他方の締約国の国民の漁業活動に関する協定を締結するため、なるべくすみやかに交渉を開始するものとする。

    第十一条

 この条約の解釈又は適用から生ずる紛争は、まず交渉により解決するものとし、交渉の開始の時から六箇月の期間内に解決に至らないときは、いずれか一方の締約国の要請により国際司法裁判所に決定のため付託されるものとする。

    第十二条

 この条約は批准されなければならない。この条約は批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換はできる限りすみやかに    で行なわなければならない。

以上の証拠として、下名の全権委員はこの条約に署名した。

一九五 年 月  日にロンドンでひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。

日本国のために

ソヴィエト社会主義共和国連邦のために