データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定

[場所] 
[年月日] 1956年5月14日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

昭和三十一年 五月 十日 アド・レフェレンダムづき署名の内閣決定

同年 同月十四日 モスクワでアド・レフェレンダムづき署名

同年 六月 八日 アド・レフエレンダム解除の内閣決定

同年 同月十二日 アド・レフエレンダム解除通告(十一日付公文による)

同年 十二月 五日 国会承認

同年 同月十二日 公布

同年 同月 同日 効力発生

 日本国政府及びソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、日本海、オホーツク海、べーリング海、並びに日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦の沿岸に接する太平洋西北部の水域において海難に遭遇した乗員に対し、その国籍のいかんを問わず、急速なかつ効果的な援助を与えるための協力を可能にする取極を行う必要を認め、

 よつて、このためそれぞれの代表者を任命した。これらの代表者は、次のとおり協定した。

 第一条

1 船舶(漁船含む。以下同じ。)が日本海、オホーツク海、べーリング海並びに日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦(以下「ソヴィエト連邦」という。)の沿岸に接する太平洋西北部の水域において海難に遭遇する場合には、両締約国の海難救助機関は、当該船舶の乗員を救助するためにできる限り必要な援助を与えるものとする。

2 いずれか一方の締約国の海難救助機関が船舶の海難につき

通報を受けた場合は、当該機関は、当該船舶の乗員に対し、最も適当と認められる救助措置を執るものとする。

3 海難現場が他方の締約国の海岸に近い場合又は必要と認められる場合は、海難の通報を受けた海難救助機関は、他方の締約国の海難救助機関と協議した上救助作業を計画するものとする。

 一方の締約国の海難救助機関が、他方の締約国の船舶が海難に遭遇している旨の通報に接したときは、常にこのような協議が行われなげればならない。

 第二条

日本国及びソヴィエト連邦の領海における救助作業は、それぞれ当該国の法令に従つて行われるものとする。

 第三条

(無線連絡方法の細目-省略)

 第四条

1 援助のため最初に救助に着手したいずれか一方の締約国の海難救助機関は、救助作業を完遂するため必要な場合は、他の締約国の海難救助機関に対し第三条の規定に従い協力を要請することができる。

2 前項の要請に接した海難救助機関は、できる限り、通報に示された個所に救助のための船舶等を差し向けなければならない。

 第五条

 両締約国は、その海難救助機関に対し、この協定の規定の実施に関し詳細な指示を与えることを約束する。

 第六条

 この協定の規定は、千九百十年九月二十三日にブラッセルで署名された海難におけ救援救助についての規定の統一に関する条約及び千九百四十八年六月十日にロンドンで署名された千九百四十八年の海上における人命の安全のための国際条約にてい触するものとみなしてはならない。

 第七条

1 この協定は、日本国とソヴィエト連邦との間の平和条約の効力発生の日又は外交関係の回復の日に効力を生じ、三年間効力を有する。

2 この協定は、いずれか一方の締約国が前記の期間の満了の少くとも一年前にこの協定の廃棄を声明しないときは、更に三年間効力を存続し、かつ、いずれか一方の締約国が延長された三年の期間が満了する少くとも一年前にこの協定の廃棄を声明しない限り、そのつど次の三年間効力を存続するものとする。

 以上の証拠として、各代表者は、この協定に署名した。

 千九百五十六年五月十四日にモスクワで、ひとしく正文である日本語及びロシア語により本書二通を作成した。

 日本国政府の委任により

  政府の承認を条件として

  河野一郎

  松平康東

 ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の委任により

  A・イシコフ


[交換公文]

 書簡をもつて啓上いたします。

 本代表は、本日モスクワで署名された海上において遭難した人の救助のための協力に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の協定第二条に言及し、かつ、日本国政府の見解によれば同条の規定は領海の範囲についての問題に対する締約国の立場になんらの影響を与えるものとみなしてはならないことを申し述べる光栄を有します。

 本代表は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

 千九百五十六年五月十四日 モスクワで

  河野一郎

 ソヴィエト社会主義共和国連邦

  漁業大臣 A・A・イシコフ閣下

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。

 本代表は、次のとおり述べられた本日付の閣下の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。