データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ソ交渉第2回会議における重光葵全権陳述

[場所] 
[年月日] 1956年8月3日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),773−774頁.
[備考] 
[全文]

(一) 日本側の提案は国交正常化の目的を達するために協力の精神をもつて行つたものなるにかかわらずソ連は日本側の努力に少しも報いていないことを遺憾とする。

(二) 日露戦争が日本の侵略に始じまれりとなすは、歴史上の論議ではなく力を有する戦勝国の発言である。かかる戦勝国の一方的断定によつて既に歴史上の事実たる一八○○年代の条約を無視して良いとの議論は国際観念としては通用しない。樺太、千島交換条約等は歴史上有効にして厳然たる事実である。しかも当時においてすら国後、択捉二島は、日本固有の領土として何等取引の対象たらざりしことも事実である。歴史上の事実を戦勝国の力をもつて一方的に解釈することは、当を得たものではない。日本は固有の領土をいかなる国に対しても放棄することを承諾することは出来ない。