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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 領土問題を含む平和条約の締結交渉に関する松本俊一とグロムイコ両全権との往復書簡

[場所] 
[年月日] 1956年9月29日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),783頁.外務省条約局「条約集」,34-59頁. 内閣府
[備考] 
[全文]

 書簡をもつて啓上いたします。

 本全権は、千九百五十六年九月十一日付鳩山総理大臣の書簡とこれに対する同年九月十三日付ブルガーニン議長の返簡に言及し、次のとおり申し述べる光栄を有します。

 前記鳩山総理大臣の書簡に明らかにせられたとおり、日本国政府は、現在は、平和条約を締結することなく、日ソ関係の正常化に関し、モスクワにて交渉に入る用意がある次第でありますが、この交渉の結果外交関係が再開せられた後といえども、日本国政府は、日ソ両国の関係が、領土問題をも含む正式の平和条約の基礎の下に、より確固たるものに発展することがきわめて望ましいものであると考える次第であります。

 これに関連して、日本国政府は、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉は両国間の正常な外交関係の再開後に継続せられるものと了解するものであります。

 鳩山総理大臣の書簡により交渉に入るに当り、この点についてソ連邦政府においても同様の意図を有せられることをあらかじめ確認しうれば幸甚に存ずる次第であります。

 本全権は、以上を申し進めるに際し、ここに閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十六年九月二十九日

日本国政府全権委員 松本俊一

ソヴィエト社会主義共和国連邦第一外務次官 ア・ア・グロムイコ閣下

(仮訳)

 書簡をもつて啓上いたします。

 本次官は、千九百五十六年九月二十九日付の閣下の次のとおりの書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

 前記鳩山総理大臣の書簡に明らかにせられたとおり、日本国政府は、現在は、平和条約を締結することなく、日ソ関係の正常化に関し、モスクワにて交渉に入る用意がある次第でありますが、この交渉の結果外交関係が再開せられた後といえども、日本国政府は、日ソ両国の関係が、領土問題をも含む正式の平和条約の基礎の下に、より確固たるものに発展することがきわめて望ましいものであると考える次第であります。

 これに関連して、日本国政府は、領土問題を含む平和条約締結に関する交渉は両国間の正常な外交関係の再開後に継続せられるものと了解するものであります。

 鳩山総理大臣の書簡により交渉に入るに当り、この点についてソ連邦政府においても同様の意図を有せられることをあらかじめ確認しうれば幸甚に存ずる次第であります。

 これに関連して本次官は、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の委任により、次のとおり申し述べる光栄を有します。すなわち、ソヴィエト政府は、前記の日本国政府の見解を了承し、両国間の正常な外交関係が再開された後、領土問題をも含む平和条約締結に関する交渉を継続することに同意することを言明します。

 本次官は、以上を申し進めるに際し、閣下に向つて敬意を表します。

千九百五十六年九月二十九日

モスクワにおいて

ソヴィエト社会主義共和国連邦第一外務次官

ア・グロムイコ

日本国政府全権委員

松本俊一閣下