[文書名] 日本政府の対ソ覚書(抄)(1960年2月6日ソ連側への反論)
ソ連邦政府が、今回の覚書において日米間の新条約と歯舞群島及び色丹島の引渡し問題とを関連させていることは極めて不可解である。歯舞群島、色丹島については、日ソ共同宣言において「ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえ、かつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引渡されるものとする」と明確に規定されている。
この共同宣言は、日ソ両国関係の基本を律する国家機関によって批准された正式の国際文書である。この厳粛な国際約束の内容を一方的に変更し得ないことはここに論ずるまでもない。さらにまた日ソ共同宣言が調印された際、すでに無期限に有効な現行安全保障条約が存在し、日本国に外国軍隊が駐留しており、同宣言はこれを前提とした上で締結されたものである。この事実からしても、日ソ共同宣言における合意がいささかの影響をも受ける事由は存しない。
日本国政府は、領土問題について共同宣言の規定に新しい条件を付し、これによって宣言の内容を変更せんとするソ連邦の態度は、これを承認することができない。またわが国は歯舞群島、色丹島のみならず、他の日本固有の領土の返還をあくまでも主張するものである。