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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本の北方領土返還要求を支持する毛沢東中国共産党主席の日本社会党訪中団に対する談話

[場所] 
[年月日] 1964年7月10日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),517-518頁.「増補改定 日中関係資料集(一九七一年刊)」,日中国交回復促進議員連盟,会員資料,1971年,580頁.
[備考] 
[全文]

 ソ連が占領したところは余りにも多過ぎます。ヤルタ会談の時、外蒙古を名義上独立させ、名目の上で中国領から切り離しましたが、実際はソ連がこれを支配するようになつたのです。外蒙古の領土は皆さんの千島の面積よりはるかに大きい。われわれは外蒙古を中国に返還してはどうかという問題を持ちだしたことがあります。ところが、彼らはそれはいけないといいました。これは、一九五四年フルシチョフとブルガーニンが中国を訪問した時、この問題を持ちだしたのです。

 かれらはまた、ルーマニアからベツサラビアという地方を自分の領内に入れました。また、ドイツ、つまり東ドイツから一部地域を自分の領内に入れました。そしてそこに住んでいたドイツ人を残らず西部に追いやりました。彼らはまた、ポーランドの一部の地域を白ロシアの領内に入れました。そしてその代償として、こんどはドイツの一部の地域をポーランド領に入れました。フインランドでも一部の地域を自分の領内に入れました。とにかく自分の領内に入れることのできるところは、残らず自分の領内に入れようというのです。彼らの中には、さらに、中国の新疆と黒竜江をも彼らの領内に入れたいと言つた者がいます。彼らはいま、辺境地帯で兵力を増強させています。私の意見では、その何れも自分の領内に入れるなということです。ソ連の領土はむしろ大きすぎるぐらいです。ソ連の領土は二千万平方キロほどありますが、人口はわずか二億しかありません。日本の場合人口は一億ありますが、面積はわずか三七万平方キロしかありません。百年あまり前、バイカル湖以東の地域、ハバロフスク、ウラジオストツク、カムチヤツカ半島を含めてみなソ連の領内に入れられました。あげればきりがありませんが、われわれはまだ彼らとの間に、決算が終つていないのです。ところで、皆さんの千島列島についてですが、われわれにとつて、それは別に問題ではありません。

 皆さんに返還すべきだと思います。