データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ソ共同コミュニケ

[場所] モスクワ
[年月日] 1966年1月22日
[出典] 外交青書10号,25−26頁.
[備考] 
[全文]

 日本国外務大臣椎名悦三郎は、ソヴィエト連邦政府の招待により一九六六年一月一六日から二二日までソヴィエト連邦を公式訪問した。

 椎名外務大臣には福井勇運輸政務次官のほか、外務省及び運輸省の幹部が同行した。椎名外務大臣は、モスクワ及びレニングラードを訪問した。

 椎名外務大臣は、ソヴィエト連邦に滞在中、ア・エヌ・コスイギン ソ連邦大臣会議議長、エヌ・ヴェ・ポドゴルヌイ ソ連邦最高会議幹部会議長及びア・イ・ミコヤン ソ連邦最高会議幹部会員並びにその他のソ連邦の指導者と会見した。

 日本国外務大臣椎名悦三郎はソヴィエト連邦外務大臣ア・ア・グロムイコと会談し、同会談には日本側より在ソ連邦特命全権大使中川融、外務審議官牛場信彦、外務省欧亜局長北原秀雄その他が、ソ連側より第一外務次官ベ・ベ・クズネツオフ、在日本国特命全権大使ベ・エム・ヴィノグラードフ、外務省参与エヌ・ゲ・スダリコフその他が参加した。

 これらの会談を通じて、日ソ両国間の関係を一層発展させるための諸問題及び両国が関心を有する主要国際問題について有益な意見の交換が行なわれた。

 近年日ソ両国間においては、各種使節団の相互派遣、人の往来、貿易の伸長、文化その他の交流が盛んとなり、両国民の信頼と相互理解に資するところが多かった。

 双方は両国間において逐次善隣関係が発展し諸懸案が解決されていることに満足の意を表明した。

 成功裡に終了した交渉の結果、一月二一日、モスクワにおいて日・ソ航空協定の署名が行なわれた。協定には、日本側から椎名外務大臣、ソ連邦側からロギノフ民間航空大臣が署名した。双方の利益を考慮して締結されたこの協定は、疑いもなく、日ソ関係の増進に貢献するものである。

 双方は、日ソ間の貿易、経済関係が順調に進展していることを満足をもって指摘した。一月二一日に椎名外務大臣とパトリチェフ貿易大臣は、一九六六年から一九七○年までの期間における貿易及び支払に関する協定に署名した。同協定は、日・ソ両国間の貿易が着実に伸びる良い見通しを与えるものである。双方は、経済の分野における両国間の協力が単に日・ソ両国の利益に合致するのみならず両国間の善隣関係の維持及び発展の基礎となるものであることを認めた。

 双方は、両国の経済協力の一層の発展の見通しに関する諸問題が、本年春に東京において開催される予定の日・ソ及び、ソ・日経済委員会の合同会議において検討されることは有意義であると認めた。

 双方は、目下交渉中の日・ソ領事条約を早期に締結し、領事館の相互開設問題を検討することが望ましいと認めた。

 北西太平洋の公海における漁業を初め、漁業の分野における日・ソ両国間の協力が近年その実を上げていることについて満足の意が表明された。

 双方は、今後とも漁業の諸分野における協力を発展させ、すべての問題の解決に努めることに合意した。

 双方は、東南アジアにおける情勢に関し、意見を交換した際に、ヴィエトナムの情勢は平和にとって危険であることを強調し、この問題に関するそれぞれの立場を述べた。

 双方は、インドとパキスタンの関係正常化及びインド・パキスタン地域における恒久平和の樹立の一歩を画するタシケント宣言が採択されたことに満足の意を表明した。

 双方は、国際連合憲章を遵守し、国際連合の強化を助長することが必要であると認め、この目的達成のためにそれぞれ必要な努力をすることに合意した。

 日ソ両国政府は、核兵器戦争のもたらす惨害を回避し、全世界の平和を確立するためには、核兵器の全廃を含む全面完全軍縮の実現が必要であると認める。

 双方は、国際連合第二〇回総会の決議にのっとり、効果的な核兵器不拡散条約の締結が重要であることについて意見が一致した。

 日本国外務大臣とソ連邦代表者との会見及び会談は、友好と相互理解の精神のもとに行なわれた。

 双方は、両国の政府当局者の間で今後とも接触を発展させることに賛意を表した。双方はまた、相互に関心のある国際問題について随時協議を行なうことに賛意を表した。

 日ソ両国政府は、日ソ両国がその社会体制を異にするにかかわらず、互恵平等と内政不干渉の原則に基づきあらゆる分野における両国間の善隣関係を一層促進することは、アジアの平和と安全の維持、ひいては世界の平和に貢献するところ大であることを認めた。