データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ソヴィエト連邦グロムイコ外務大臣訪日に際しての日ソ共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1966年7月30日
[出典] 外交青書11号,16−18頁.
[備考] 
[全文]

 ソヴィエト社会主義共和国連邦外務大臣ア・ア・グロムイコは、日本国政府の招待により一九六六年七月二四日から同月三〇日まで日本国を公式訪問した。

 グロムイコ外務大臣は、東京、京都及び大阪を訪問した。

 グロムイコ外務大臣は、日本国に滞在中、夫人とともに、天皇陛下及び皇后陛下から謁見を賜った。

 グロムイコ外務大臣は、また、佐藤総理大臣と会見し、会談した。

 グロムイコ外務大臣は、椎名外務大臣と二回にわたり会談し、会談には、日本側から下田外務事務次官、中川駐ソ大使、牛場外務審議官、北原欧亜局長その他が参加し、ソ連側からは、ヴィノグラードフ駐日大使、スダリコフ・ソ連外務省参与、ザミヤーティン・ソ連外務省参与、イッポリトフ参事官、その他が参加した。友好と相互理解の精神のもとに行なわれたこれらの会談において、日ソ両国間の諸問題及び両国が共通の関心を有する重要国際問題について有益な意見の交換が行なわれた。

 これらの会談を通じて、双方は、日ソ両国がその政治信条と社会体制を異にするにかかわらず、一九五六年の日ソ共同宣言の精神にしたがい、互恵平等と内政不干渉の原則に基づき、あらゆる分野における関係を今後ますます発展させていくことが可能であるとの一致した見解に到達した。また、双方は、このような日ソ両国間の友好善隣関係の増進が、アジアにおける平和と安全の維持、ひいては世界の平和に貢献するところが大であることを認めた。

 交渉の結果、一九六六年七月二九日、東京において、日ソ領事条約の署名が行なわれた。条約には日本側からは椎名外務大臣が、ソ連側からはグロムイコ外務大臣が、署名した。双方は、この条約が日ソ両国間のあらゆる分野における交流を容易ならしめ、日ソ関係を更に緊密化することに役立つことを期待し、相互に領事館を設置するための交渉を速やかに開始することに合意した。

 双方は、日ソ関係をさらに恒久的に安定した基礎におくために、平和条約を締結する必要があることを認め、これに関連し、それぞれの見地を表明した。

 双方は、漁業の分野において協力関係が着実に発展しつつあることを満足をもって認め、両国が世界の有数な漁業国として、今後とも協力する用意があることを表明した。双方は、この分野に関する若干の問題につき、相互の利益を考慮して、近い将来に、話合いを継続することに合意した。

 双方は、近年日ソ両国間において、各種使節団の相互派遣、人の往来、貿易、経済、科学、文化その他の分野における交流が順調に進展しつつあることを認めた。このような交流は両国民の相互理解の増進に貢献するものである。

 双方は、今後とも、科学及び文化の分野における交流の発展のため努力することに合意し、その具体的方策について今後協議を続けることに意見の一致をみた。

 双方は、国際情勢が、全体としては、人類の破滅をもたらす核戦争を起してはならないとのすべての民族の確信を基礎として、社会制度を異にする諸国が平和裡に共存するという方向に進んでいることに満足の意を表明した。

 双方は、東南アジアの情勢に関し、それぞれの立場を述べた。

 双方は、国際連合が真に有効な平和維持機構として発展するよう、これを活用し、その権威を高めるため、相互に協力すべきことを合意した。

 双方は、世界の恒久的平和を確立するために、有効な管理の下における軍縮の達成を促進する用意があることを表明し、また、第二十回国際連合総会の決議に述べられているとおり、核兵器の拡散を防止することが重要であることを認めた。

 双方は、本年一月の椎名外務大臣の訪ソ及び今回のグロムイコ外務大臣の訪日が、日ソ国交史上初めての両国外務大臣の相互訪問であって、両国関係の今後の発展のため、大きな意義をもつものであることを認めた。双方は今回のソ連邦外務大臣の訪日の機会に、日ソ間の諸問題について話合いを行なうとともに、両国が共通の関心を有する国際問題について協議を行なったことは、両国政府首脳の間の相互理解を深める上で有益であったことを認めた。なお、双方は、日ソ間の問題並びに双方がその解決に関心を有する国際問題について定期的に協議を行なうことを合意した。