データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] チェッコスロヴァキア進入に関するタス声明

[場所] 
[年月日] 1968年8月21日
[出典] 外交青書13号,68−69頁.
[備考] プラウダ紙所載
[全文]

 タスは権限を与えられて次のように声明する。

 チェッコスロヴァキア社会主義共和国の党と国家の活動家達はソ連邦その他の同盟諸国に対し,軍事力による援助を含む緊急援助をチェッコスロヴァキア国民に与えるよう要請した。この要請は,チェッコスロヴァキアにおける現在の社会主義体制および憲法によって確立された国家機構に対し社会主義に敵対的な外部勢力と共謀した反革命勢力の側からする脅威が発生したことによってなされたものである。

 チェッコスロヴァキアにおけるでき事と同国をめぐる問題は,一度ならずチェッコスロヴァキア指導者を含む兄弟の社会主義諸国指導者の意見交換の対象となった。これら諸国は諸国民の社会主義の成果を支持,強化,擁護することが全社会主義国家の共通の国際主義的責務であるという点で一致している。この共通の立場はブラチスラヴァ声明においても厳粛に宣言された。

 チェッコスロヴァキア情勢のいっそうの激化はソ連邦その他の社会主義諸国の死活的利益,社会主義共同体諸国の安全の利益にかかわるものである。チェッコスロヴァキアの社会主義体制に対する脅威は同時に欧州平和の基礎に対する脅威でもある。

 ソ連政府及び同盟諸国−ブルガリア人民共和国,ハンガリー人民共和国,ドイツ民主共和国,ポーランド人民共和国の政府は断ち難い友好と協力の原則に基き,また現在の条約上の義務に従って兄弟のチェッコスロヴァキア国民に必要な援助を与えることに関する上記要請に応えることを決定した。

 この決定は兄弟の社会主義諸国間に締結された同盟条約に規定されている国家の個別的,集団的自衛権に完全に合致している。同決定は一度ならず欧州諸国民を戦争に陥らせた軍国主義,侵略および復讐勢力に対し欧州平和を守るというわれわれ諸国の根本的利益にも応えるものである。

 ソ連軍部隊は上記同盟諸国軍部隊と共に8月21日チェッコスロヴァキア領土に進入した。これら部隊は,チェッコスロヴァキアの社会主義の成果に対して作り出された脅威,社会主義共同体諸国の安全に対する脅威が排除され,かつ合法的政権がこれら軍隊の駐留をそれ以上必要でないとみなす時に,遅滞なくチェッコスロヴァキア社会主義共和国から撤退するであろう。

 今次行動はいかなる国家に対するものでもなく,いかなる国家の利益も決してそこなうものではない。それは平和の目的に奉仕し,平和強化に関する配慮に基くものである。

兄弟諸国は外部からのいかなる脅威に対しても牢固たる連帯をもって不屈に断乎として対抗する。なん人に対しても,社会主義諸国共同体から一つの環といえどももぎ取ることを決して許さないであろう。