データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ソ連及び東欧諸国の対チェコ軍事介入に関する官房長官談話

[場所] 
[年月日] 1968年8月22日
[出典] 外交青書13号,79頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府は本年1月以来チェッコスロヴァキア社会主義共和国内において行なわれてきた一連の改革をめぐり,ソ連邦その他の社会主義諸国との間に平和的な話し合いが行なわれ,その結果,最近チエルナおよびブラチスラヴァ等で行なわれた会談によって関係国間に了解が到達された経緯を深い関心をもって注視してきた。しかるところ,今回突如としてソ連邦およびその同盟国がチェッコスロヴァキアに対して軍事介入を開始したことは日本国政府および国民に多大の衝撃と失望を与えた。

 ソ連邦およびその同盟国はこのたびの軍事介入はチェコ政府の要請に基づくものであると主張しているが,右介入が開始された直後チェコ政府は,首都の国営放送局を通じて,右介入はチェコ大統領,首相および国民議会議長を含む同国政府等最高首脳のいかなる事前の了承もなしに開始されたものである旨を発表した。また今月21日のチェッコスロヴァキア国民議会最高幹部会の声明は,右軍事介入はチェッコスロヴァキアの主権の侵害であり社会主義諸国の将来の相互関係にとり耐えがたいものであるとしてソ連軍基地のチェコ領土からの撤退を要求している事実等にかんがみるもソ連邦およびその同盟国の前記主張は全く根拠を欠くものと認められる。のみならず,日本国政府が現在までに検討したあらゆる信ずべき情報および徴候より判断して日本国政府は,ソ連邦およびその同盟国の軍隊の行動は,チェッコスロヴァキア国民の意志に反して行なわれたものであり,同国の独立と主権に対する武力による公然の侵害として国際間の平和を脅かし,国際連合憲章の規程と精神に違反する行為であると断定せざるをえない。

 日本国政府としてはソ連邦およびその同盟国が即刻かつ無条件にその軍事介入を中止し,チェッコスロヴァキアの独立と主権の尊重の立場に立って平和的友好的解決の方途を講ずることを切望するものである。