データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本側主催午餐会における田中総理大臣挨拶

[場所] レーニン丘政府迎賓館
[年月日] 1973年10月9日
[出典] 外交青書18号(下巻),43−44頁.
[備考] 
[全文]

  コスイギン首相閣下

御列席の各位

 御多忙のおりにもかかわらず,コスイギン首相閣下他ソ連党・政府の首脳の方々,並びに当国の著名な方々をお迎えして,ここに午餐を共にする機会を得ましたことは,私の大きな喜びとするところであります。

 昨日私のあいさつの中で指摘いたしました通り,今回のソ連訪問の最大の眼目は両国最高指導者間の対話の開始でありました。

 私は右に際し,ブレジネフ書記長閣下をはじめ,ソ連党・政府首脳の方々と日ソ間の最大の懸案である領土問題の解決を含む平和条約の締結をはじめ,両国間の諸問題につき卒直な意見交換の機会を持つたことに重要な意義を認めております。

 昨日,ブレジネフ書記長閣下は,私どもを招いた心暖まる午餐会の席上,平和条約の締結が日ソ関係発展のためのより強固な基礎となるとの趣旨を述べられました。私は書記長閣下の深い御理解に対し,改めて敬意を表するものであります。

 何故ならば,日ソ千年にわたる真の善隣友好関係の確立を心から願うものにとつてこの問題をさけて通ることは出来ないと考えるからであります。

 くり返して申すまでもなく,わが国にとつて平和はかけがえのないものであります。

 戦後わが国の国民総生産は,実質で年間10%以上の成長率を維持し,米ソにつぐ地位を占めるに至りましたが,これは働き蜂のような日本人一人一人のバイタリティに加え,歴代のわが国政府が効率的な経済運営を行ない,もてる力をすべて平和な国民経済発展のために集中してきた一貫した政策のたまものによるものであります。

 平和国家に徹し,世界の平和と福祉に貢献することはわが国不動の方針であります。私は,かかるわが国の真摯な姿勢に対しソ連の皆様方の充分な御理解を得たいと思います。

 終りに際し相互理解と信頼に基礎を置く日ソ間の永久の善隣友好関係の確立を祈念しつつ,また,コスイギン首相閣下及び御列席の各位のために杯をあげて乾杯したいと思います。