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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 「北方領土の日」設定等に関するソ連側口頭声明に対する日本側の反論

[場所] 
[年月日] 1981年1月28日
[出典] 内閣府
[備考] 
[全文]

 本年1月20日、ソ連側政府によって行われた北方領土問題に関する口頭声明に関連して次のとおり申し述べる。

 日ソ間に厳存する未解決の領土問題を解決して平和条約を締結することが両国にとっての最も基本的な課題であることは、戦後の両国関係の最も基本的文書たる1956年の日ソ共同宣言等からも明白であり、日本国政府はこの基本的な課題を解決することこそが日ソ関係を真の相互理解に基づく安定的な基礎の上に発展させるために不可欠であることをこれまで累次にわたりソ連政府に強調してきた。

 わが国における北方領土返還要求はこのような真の日ソ友好善隣関係を確立せんとする日本国民の総意であり、このことは累次の国会決議の採択等において明確に示されているとおりである。日本国政府は、かかる国民的要求をソ連側が正しく理解するよう求めていた。

 しかるに、ソ連はこのような日本国民の総意を無視して北方領土の不法占拠を続けるのみならず、新たな軍事力の配備及び施設の構築を行っている。日本国民にとってはかかる行為こそ正に日ソ善隣友好の精神に逆行する国民に対する最も非友好的な行為であり、日ソ関係において達成された肯定的な成果をも破綻に導く行為であると言わざるを得ない。

 今般のソ連側の口頭声明は、わが国における北方領土返還運動をソ連に対する非友好的キャンペーンであるとし、日本国政府による「北方領土の日」制定等の行為を非難し、日本国内の学校教育のカリキュラムにまで言及している。昨年11月国会において全会一致で採択された決議を踏まえた日本国政府による「北方領土の日」制定に対する非難、更には「北方領土の日」の集会への出席者や日本の学校教育の内容にまで立入った今般のソ連側の声明は、日本側にとって驚きであり到底受入れることのできないものである。

 既に述べたとおり、日本国政府は真の日ソ友好善隣関係の発展を望み、そのためにこそ北方領土問題の解決が不可欠であるとの認識に基づいて行動している。日本国政府はソ連側がかかる日本側の真意を正しく理解することをここに重ねて強く要請するものである。

 更に、日本国政府は、この機会に改めてソ連が北方領土における軍備強化の措置を速やかに撤回するよう強く要求するとともに、ソ連政府が北方領土返還を求める日本国民の真意を正しく理解し、北方領土問題の解決に向けて日ソ間の友好善隣関係の発展にふさわしい態度を示すことを強く求めるものである。