データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ソ共同コミュニケ(1986年1月19日)

[場所] 
[年月日] 1986年1月19日
[出典] 外交青書30号,447-449頁.内閣府
[備考] 
[全文]

 エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦共産党中央委員会政治局員兼外務大臣は、日本国政府の招待により、1986年1月15日から19日まで日本国を公式訪問した。

 東京滞在中エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、中曽根康弘日本国総理大臣と会見した。中曽根康弘総理大臣は、以前に伝達されたエム・エス・ゴルバチョフ・ソ連邦共産党中央委員会書記長に対する日本国への公式訪問の招待を確認した。

 エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、右招待に対し謝意を表明した。

 エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は中曽根康弘総理大臣に対し、日本国総理大臣のソ連邦公式訪問招待を内容とするエム・エス・ゴルバチョフ・ソ連邦共産党中央委員会書記長の書簡を伝達した。

 安倍晋太郎日本国外務大臣とエ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は定期協議としての会談を行い、同会議では、日ソ関係の諸問題及び双方が関心を有する国際問題について討議が行われた。

 双方は、互恵平等及び内政不干渉の原則に基づいて日ソ関係を発展させることは、日ソ両国民の共通の利益に応えるのみならず、アジアひいては世界の平和と安定に多大の貢献をなすものである旨強調した。

 両大臣は、日ソ両国指導者間の政治対話のもつ重要な意義を指摘した。この関連で両大臣は、両国外務大臣間の定期協議を、今後引き続きモスクワ及び東京において交互に、少なくとも年1回行うとの合意を確認した。エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、安倍晋太郎日本国外務大臣に対し、1986年にソ連を公式訪問するよう招待し、また、安倍晋太郎日本国外務大臣は、エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣に対し、1987年に日本を公式訪問するよう招待を伝達した。これらの招待は双方により謝意をもって受諾された。訪問の具体的時期は、外交チャンネルを通じて合意される。

 両大臣は、外務次官級協議が毎年行われていることを肯定的に評価し、同協議の継続に賛意を表明した。次回の協議は、モスクワにおいて、双方の間で合意される時期に行われる。両大臣は、1973年10月10日付けの日ソ共同声明において確定した合意に基づいて、日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題を含め、同条約締結に関する交渉を行った。双方は、モスクワにおいて行われる次回協議の際にこれを継続する旨合意した。

 双方は、日ソ両国間の貿易経済関係の互恵に基づく一層の拡大を促進するとの意向を表明した。両大臣は、日本国とソ連邦との間の1986年から

 1990年までの期間における貿易及び支払に関する協定及び所得に対する租税に関する二重課税の回避のための日本政府とソ連邦政府との間の条約に署名した。

 両大臣は、貿易年次協議のレベルを高め、かかる協議を日本国外務審議官及びソ連邦外国貿易次官との間で1986年中の双方にとって都合の良い時期にモスクワで開催することに合意した。

 双方は、日本国政府とソ連邦政府との間の両国の地先沖合における漁業の分野の相互の関係に関する協定及び漁業の分野における協力に関する日本国政府とソ連邦政府との間の協定の締結に留意し、これらの協定の円滑な実施のために今後とも努力することに合意した。これに関連して、双方は、漁業の分野における両国間の長期的な協力を考慮して互恵的基礎の上に上記協定の実施に関連するすべての諸問題を建設的に討議することに賛意を表明した。

 両大臣は、1972年1月27日付けの日本国とソ連邦との間の文化交流に関する交換公文の有効期間の延長に関する書簡を交換した。

 双方は、日本国政府とソ連邦政府との間の文化交流に関する協定の締結交渉において進展があったことを指摘するとともに、この交渉が最も早い時期に妥結するようこれを促進する意向を表明した。

 双方は、科学技術協力に関する日本国政府とソ連邦政府との間の協定第3条に基づき第3回日ソ科学技術協力委員会を1986年中の双方にとって都合の良い時期に開催することに合意した。

 日本人墓地への遺族の墓参に関する安倍晋太郎日本国外務大臣の要請に関連して、ソ連側は人道的見地からこの問題を然るべき注意をもって検討していく旨述べた。

 両大臣は、全人類のための核融合の平和的目的利用に関する国際協力発展の大きな意義を指摘した。

 双方は、太平洋北部における飛行の安全の増進に関する一連の諸措置及び右諸措置の実施に関する諸方策の作成に関する日本国ソ連邦及びアメリカ合衆国の間の合意の達成を満足の念をもって確認した。

 両大臣は、平和と軍縮の問題及び若干の地域問題を含む現下の国際情勢の主要な、かつ双方が関心を有する諸問題について、率直な意見交換を行った。

 双方は、国際問題に関する両国間の対話の拡大を通じ、国際情勢の進展における肯定的傾向の強化を更に促進することの必要性につき意見の一致をみた。

 両大臣は、1985年11月19日から21日までのジュネーブにおけるロナルド・レーガン・アメリカ合衆国大統領とエム・エス・ゴルバチョフ・ソ連邦共産党中央委員会書記長との間の会談の結果に関する米ソ共同声明を高く評価し、これを国際情勢の改善への変化を達成するための対話の始まりと見なしている旨指摘した。

 双方は、アジア・太平洋地域に形成されつつある情勢に対するそれぞれの評価を述べ、アジア・太平洋地域の諸国の自主性の尊重の上に立ってこれら諸国の自助努力に協力することが当該地域の平和と安定に資するものであることを強調した。

 双方は、国際問題に関して日ソ両国外務省間で協議が行われていることを肯定的に評価し、これを継続していくことに合意した。

 双方は、エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣の日本国訪問の際に行われた交渉及び会談が実務的雰囲気の下に行われ、双方にとって有益であったことを指摘した。