データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウラジオストックにおけるゴルバチョフ・ソ連共産党書記長演説(対日関係部分)

[場所] ウラジオストック
[年月日] 1986年7月28日
[出典] 外交青書31号,403−404頁.
[備考] 要旨
[全文]

対日関係(イ)

われわれは日本とのより良い関係への転換を支持する。この転換はおこった。世界における両国の客観的状況は,過去の諸問題にこだわることのない,平穏な雰囲気の下で,健全で現実主義的な基盤に基づく,協力の深化を求めている。本年その端緒が敷かれた。外務大臣の相互訪問がなされた。首脳レヴェルの相互訪問が議題に上がっているし,経済協力が双方の関心となっている。先ず第一に,既に日本企業との実務的接触がなされている両国の隣接地域についてである。ソ連及び日本の相互に近接する地域における合弁企業を創設する問題についても話し合うことができよう。同様に海洋資源の調査とその包括的な開発の問題について長期的協力関係を調整したり,(両国の)宇宙利用の平和的研究計画を結合されることはどうか。日本人には,経済外交とよばれる諸外国との関係活発化の方法があるようだ。今度は,その方法をソ日関係に役立たせようではないか。

対日関係(ロ)

1.まず,アジア・太平洋地域への言及の導入部分において,当該地域に存在する大国として,「ソ連,米国,中国,日本,越,メキシコ,インドネシア」に言及。

2.上記に続き,歴史的コンテクストの中で「日本軍国主義への勝利」に言及。

3.上記に続き,越革命,非同盟運動,対印関係の意義に触れた後,次のように我が国に言及。 

「日本は一級の意義をもつ国になった。米国の核兵器の最初の犠牲となったこの国は,短期間の間に大躍進をし,工業,貿易,教育,科学,技術の分野で驚嘆すべき成果を示した。日本にこの結果をもたらしたのは,単に日本国民の集中性,自律性,エネルギーのみならず,日本の対外政策がその上に公的に打ち建てられている非核三原則である。しかし,この点に注意を払わないわけにはいかないのだが,最近この原則は,日本憲法の平和条項と同様にますます顕著に無視されているのである。」

4.上記の言及の後,アジア・太平洋地域の現状に触れ,「70年代後半以降,米国は太平洋での軍事力増強の大規模な措置をとり,米国の圧力の下で,ワシントン・東京・ソウル軍事3国関係が形成されつつある」と言及。

5.上記に続き,「この地域の3核兵器保有国のうちの2カ国たる中国とソ連は核兵器先制不使用義務を負っているが,米国は核兵器運搬手段及び核弾頭を危機的地域の1つたる朝鮮半島に配備し,日本の領土に核兵器運搬手段を配備した」として我が国に言及。