[文書名] 日ソ共同コミュニケ(1988年12月21日)
エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦共産党中央委員会政治局兼外務大臣は、日本国政府の招待により、1988年12月18日から21日まで日本国を公式訪問した。
エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、竹下登日本国総理大臣と会見した。同意見において双方は、両国の最高首脳間の対話が二国間関係の一層の発展に大きな意義を有することを強調した。この関連で竹下登総理大臣は、エム・エス・ゴルバチョフ・ソ連邦最高会議幹部会議長兼共産党中央委員会書記長に対する日本国公式訪問の招待を確認した。
エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、エム・エス・ゴルバチョフ・ソ連邦最高会議幹部会議長兼共産党中央委員会書記長は日ソ関係の全般的改善の文脈の中で日本国訪問を実現する用意があろう旨述べた。この関連で、宇野宗佑日本国外務大臣とエ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、両国外務大臣の会談を中心として同訪問の準備作業を進めることに合意した。
ソ連側からは、竹下登日本国総理大臣に対するソ連邦公式訪問の招待が伝達された。
竹下登総理大臣は、日本国政府と国民を代表し、エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣に対し、ソ連邦アルメニアを襲った悲劇的な自然災害に関し、衷心からの同情の意を表明した。エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、ソ連邦国民とソ連邦指導部を代表し、日本国民と政府の同情の意と援助に深甚なる謝意を表明した。
宇野宗佑日本国務大臣とエ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、定期協議としての会談を行い、同会談では日ソ関係の諸問題及び双方が関心を有する緊要な国際問題について討議が行われた。
エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、ソ連邦の欧州及びアジア部におけるソ連軍兵力の一方的な実質的削減に関する提案を含む、エム・エス・ゴルバチョフ・ソ連邦最高会議幹部会議長兼共産党中央委員会書記長が第43回国連総会において明らかにした諸提案の要点を説明した。
宇野宗佑日本国外務大臣は、日本外交の基本方針について述べ、日本としては、竹下登総理大臣が1988年5月にロンドンにおいて表明した「国際協力構想」を遂行し、その増大する経済力に相応しい貢献を国際社会のために行っていく旨説明した。
両大臣は、双方の諸提案に含まれている建設的かつ有益な要素を積極的に評価した。
宇野宗佑日本国外務大臣とエ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、日ソ関係改善への双方の意向を確認した。両大臣は、日ソ関係の発展における新たな章を開くべく努めることが可能であり、また努めなければならないとの点で合意した。
二国間関係の発展は、両国の利益にこたえるのみならず、アジア・太平洋地域ひいては世界の平和と安定に資するとの一致した見解が表明された。
両大臣は、高いレベルを含む両国の政治家間の交流を一層発展させることが有益であることにつき見解の一致をみた。
双方は、両国外務大臣の定期協議を東京及びモスクワにおいて交互に、少なくとも年一回行うとの合意を確認し、また、他の可能性を活用した相互接触を拡大することに合意した。エ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は宇野宗佑日本国外務大臣に対し、次回協議を行うため、1989年にソ連邦を公式訪問するよう招待し、この招待は謝意をもって受諾された。訪問の具体的時期は、外交チャンネルを通じて合意された。
両大臣は、1973年10月10日の日ソ共同声明において確定した合意に基づいて、日ソ平和条約の内容となり得べき諸問題を含め、同条約締結に関する交渉を行った。同交渉において、双方は、両国関係に存在する困難な除去に関し、その歴史的及び政治的側面についてのそれぞれの認識を述べた。
この関連で、両大臣は、両大臣間で行われている平和条約締結交渉を一層促進するため、外務次官レベルの常設作業グループを設け、同作業グループにおいて討議を続けることを指示する旨合意した。
双方は、両国の外務次官級協議が毎年行われていることを積極的に評価し、同協議の継続に賛意を表明した。次回の協議は、東京において、1989年の双方の間で合意される時期に行われる。
日本国外務省とソ連邦外務省の関係部局間で行われている国連に関する協議及び中東に関する協議についても、肯定的評価がなされた。
双方は、見聞を広め相互理解を深める目的で、両国外務省員の交流を拡大することに合意した。
宇野宗佑日本国外務大臣とエ・ア・シェヴァルナッゼ・ソ連邦外務大臣は、両国政府間において貿易経済協議、科学技術協力委員会会合が定期的に開催されていること、また、日ソ文化交流委員会第一回会合が開催されたことを両国間の対話と協力の拡大に資するものとして高く評価した。
両大臣は、第11回日ソ・ソ日経済委員会合同会議及び日ソ政府間貿易経済協議の結果を踏まえつつ、ソ連邦における経済面でのペレストロイカ及び日本経済における構造変化を考慮して、互恵に基づく日ソ間の貿易経済関係の一層の拡大を促進する用意がある旨表明した。
日本国政府とソ連邦政府との間の両国の地先沖合における漁業の分野の相互の関係に関する協定及び漁業の分野における協力に関する日本国政府とソ連邦政府との間の協定に基づき、かつ、互恵の原則に基づき、漁業の分野における協力拡大のために一層努力するとの相互の意向が確認された。
両大臣は、文化交流に関する日本国政府とソ連邦政府との間の協定に基づき、1988年12月東京において開催された日ソ文化交流委員会第一回会合において作成された1989年4月1日より1991年3月31日までの間における同協定の実施に関する計画の発効のための外交上の公文の交換を行うとともに、同計画の円滑な実施を促進するとの意向を表明した。
双方は、本年12月の日ソ科学技術協力委員会第5回会合において採択された科学技術協力計画に、既に合意済みの農林業、核融合、放射線医学、波動歯車、人工心臓の5つの協力分野に加え、更に環境保全及び地震予知の二分野が加えられたことを積極的に評価した。両大臣は、互恵に基づき両国間において実施されている科学技術協力の進展に満足の意を表明し、その一層の進展を促進することに合意した。
双方は、1988年12月20日発効した日本国政府とソ連邦政府の間の渡り鳥及び絶滅のおそれのある鳥類並びにその生息環境の保護に関する条約に基づき同分野における協力が進展することとなるとの確信を表明した。
日本人墓地への遺族の墓参に関する宇野宗佑日本国外務大臣の要請に関連して、ソ連側は人道的見地から本件に肯定的に対応する旨表明した。
平和と軍縮の問題、地域問題及びアジア・太平洋地域情勢を含む現下の国際情勢について、詳細かつ率直な意見交換が行われた。
双方は、最近国際関係において肯定的な進展から見られることに満足の意を表明した。両大臣は、米ソ首脳会談の開催をはじめ米ソ間の対話が前向きの進展を見せ、その過程で中距離核戦力全廃条約の署名・発効、アフガニスタンに関するジュネーヴ合意署名等東西関係の改善が見られたことを積極的に評価するとともに、軍備管理・軍縮、地域問題の解決、人権の保障の分野において、安定した東西関係を構築するための努力が継続されることの必要性を強調した。
双方は、アジア・太平洋地域における平和と安定の確保のため一層の努力を行う必要性を強調するとともに、朝鮮半島における緊張緩和、カンボディア問題の解決等を含め、この目的達成のためにそれぞれの立場から積極的な貢献を行う旨表明した。
平和及び国際の安全の確保における国連の役割の向上及びその活動の実効性の向上の重要性につき見解の一致が確認された。
現下の国際情勢における肯定的傾向を一層強固なものとするために、国際社会が直面する緊要な諸問題につき双方が今後とも意見交換を行い、対話を拡大することにつき相互理解が達成された。
両大臣間の会談においてとり上げられた諸問題を更に詳細に検討するために、二国間関係作業グループ及び地域問題作業グループにおいても有益な討議が行われた。
東京での日ソ会談は、実務的かつ率直な雰囲気の中で行われ、双方にとり実質的かつ有益であった。