データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] エリツィン大統領の「北方領土問題5段階解決論」

[場所] 
[年月日] 1990年1月16日
[出典] 内閣府
[備考] 
[全文]

 北方領土問題は5つの段階を踏みながら解決すべきだ。というのはソ連の世論の中には「領土問題は存在しない」という長い間の固定観念があり一挙に解決するのは不可能だからだ。

 一部の人のようにソ連の指導者が「四島すべてを譲渡してしまえ」と言ったとしたら、今の状態ならその指導者はとたんに更迭されてしまう。

第1段階:ソ連の側から領土問題は存在していると公式に宣言する。これはゴルバョフ議長(当時)の来日時に実現する。

第2段階:四島を日本にとって自由興業地帯とし、日本からの移住も簡便化する。「最恵国待遇」を日本に与えるわけだ。この段階までに必要な期間は2、3年だろう。

第3段階:四島の非軍事化を実施する。しかし、これは簡単には進まないたろう。四島はソ連の国家に所属しているというよりソ連軍に所属しているからだ。

第4段階:日本側に歩み寄ってもらい平和条約を締結する。平和条約締結は領土問題解決に向けてのプロセスを促進すると考える。この4段階までを15年以内に実施したい。実現すれば(北方四島の)中でも肯定的な変化が生じるだろうし、日ソ関係はあらゆる分野で飛躍的に改善しよう。

第5段階:最終的に問題を解決するのは我々の次の世代だ。その場合、次の世代に押しつけることにならない範囲内で3つのバリエーション(選択肢)を提案することができる。それは(1)四島を日ソ両国の共同管理、共同庇護のもとに置く、(2)四島を自立した自由な島とする、(3)日本に引き渡すことも除外されない、の3点だ。次の世代には考え方も新しくなり、政治、文化、世界情勢、安全保障問題も変化し、相互理解、世論も好転しているだろう。ありきたりではない解決策を見つけ出すのではないか。