[文書名] 「北方四島との交流」に関する日ソ外相間の往復書簡
拝啓
本大臣は、1991年4月18日に東京において海部俊樹日本国内閣総理大臣及びエム・エス・ゴルバチョフ・ソヴィエト社会主義共和国連邦大統領によって署名された日ソ共同声明(以下「共同声明」という。)に言及するとともに、日本国政府が共同声明第4項に関連してとられる次の措置を実施するため、この書簡に別添する手続に従い必要な措置をとる用意がある旨を申し述べます。
1(1) 日本国政府は、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島(以下、「諸島」と総称する。)の帰属についての双方の立場を考慮しつつ、領土画定の問題を含む日ソ間の平和条約の作成と締結に関する諸問題の全体について行われた話合いに関する共同声明第4項を確認する。
(2) (1)に関連して、領土問題の解決を含む日ソ間の平和条約締結問題が解決されるまでの間、相互理解の増進を図り、もってそのような問題の解決に寄与することを目的として、日本国民から構成される訪問団(以下「日本の訪問団」という。)による諸島の訪問が、また、継続的にかつ現に諸島に居住するソ連邦国民から構成される訪問団(以下「ソ連邦の訪問団」という。)による日本国の諸地域の訪問が、この措置の下においてのみ、行われることとなる。
2(1) 訪問は、原則として団体によって行われる。
日本の訪問団による訪問は、旅券・査証なしで、身分証明書及び在京ソ連邦大使館の確認を付した必要書類をもって行われる。日本の訪問団にはソ連邦側との連絡折衝等に当たる者が中央の又は地方の当局から同行する。
ソ連邦の訪問団による日本国の諸地域への訪問は、旅券・査証なしで、身分証明書及び在モスクワ日本国大使館の確認を付した必要書類をもって行われる。ソ連邦の訪問団には日本側との連絡折衝等に当たる者が中央の又は地方の当局から同行する。
(2) 日本の訪問団及びソ連邦の訪問団それぞれの訪問に関する基本的事項を定める計画は、半年に一回両国の外交当局の間で協議の上決定される。ただし、このようにして決定された計画に含まれていない訪問であって、特段の必要性が認められるものについては、両国の外交当局の間で協議の上実施することができる。個々の訪問の詳細(訪問場所、訪問者、旅行経路、日程、交通手段その他の必要事項)を定める計画は、各訪問の実施に先立って両国の外交当局の間で協議の上決定される。
3 この措置は、次の前提の下に実施される。
(1) 1(2)にかかわらず、この措置は、墓参団の訪問に関する1986年
7月2日付けの双方の口上書にいう方式による墓参団の訪問につき、いかなる影響をも与えるものではない。
(2) この措置の下での訪問は、本件訪問に関連するいかなる問題についてもいずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならない。
4 日本国政府は、この措置の実施に関連して発生することのあるいかなる問題についても、要請に応じてソ連邦政府と協議を行う用意があり、並びに、この措置の実施が開始されてから一年後を目途として、この措置の実施状況及び改善の可能性につきソ連邦政府とともに再検討を行う用意がある。
敬具
1991年10月14日にモスクワで
日本国外務大臣
ソヴィエト社会主義共和国連邦外務大臣
ボリス・ドミトリエヴィチ・パンキン閣下