[文書名] 日本国民の北方領土訪問についての坂本三十次官房長官の談話
1 我が国国民の北方領土への入域については、政府は、平成元年9月19日付けの閣議了解「我が国国民の北方領土入域問題について」により、北方領土問題の解決までの間、これを行わないよう、国民に対し要請してきたところである。
2 その後、本年4月18日の日ソ共同声明第四項において、歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島の北方四島が平和条約において解決すべき領土問題の対象であることが明確に認められ、領土問題の解決を含む平和条約の準備を完了させるための作業を加速することが第一義的に重要であることが確認された。政府としては、このような新たな状況を踏まえ、また、我が国の北方四島元居住者、報道関係者等を中心に、北方四島訪問への強い希望があることにも留意しつつ、我が国国民と北方領土に居住するソ連邦国民との交流の新しい枠組みを策定すべくソ連邦側と交渉を行ってきた。
3 政府としては、一方において、このような交流が相互理解を増進し、北方四島返還実現のための新しい視点を開く可能性をはらんでいるということ、また、他方において、無原則な交流が、北方四島返還を実現していく上で法的・政治的に複雑な問題を生じさせ得ることを踏まえ、交渉を重ねてきたものである。
4 今般、本年10月14日付けの日ソ両国外相間の往復書簡により、領土問題の解決を含む日ソ間の平和条約締結問題が解決されるまでの間、相互理解の増進を図り、もってそのような問題の解決に寄与することを目的として、かつ、いずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならないとの共通の理解の下に、我が国国民の北方領土への訪問を、旅券・査証なしで行うこと等を内容とする新しい枠組みが作られた。
5 政府としてはこの枠組みが暫定的、特例的な性格のものであることを踏まえれば、当分の間、新しい枠組みの下での北方領土への訪問は、北方四島元居住者、返還要求運動関係者及び報道関係者の方々が、一定の手続きに従い、団体で実施されることが必要であると考える。
6 北方領土への入域は、今後、本件枠組みの下での訪問及び昭和61年7月2日付けの日ソ双方の口上書に基づく墓参のための訪問のみとし、これら以外の北方領土への入域については、引き続き前記平成元年9月19日付けの閣議了解に従って対処するよう国民各位の理解と協力を要請する。