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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北方領土返還要求全国大会における宮澤内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1992年2月7日
[出典] 宮沢演説集,217ー218頁.
[備考] 
[全文]

 「平成四年北方領土返還要求全国大会」の開催に当たり、一言ご挨拶申し上げます。

 我が国固有の領土である北方四島が、戦後四十七年を迎えた今日なお、返還の実現をみていないことは、誠に遺憾なことであります。

 この北方領土の早期返還を求める国民の声は、年々大きな高まりをみせ、北方領土返還要求運動として、全国的な広がりをもった国民運動として定着しております。

 また、本日の「北方領土の日」を中心に、全国各地において、北方領土の返還を要求する多彩な行事が繰り広げられていることは、北方領土問題の早期解決を求める日本国民の心からの願いと強い決意の現れと確信しております。

 これも、日頃から地道にこの運動を支え、推進してこられた皆様方を始め多くの方々の献身的なご努力のたまものと、心から敬意を表する次第であります。

 昨年は、ソ連邦が解体し、独立国家共同体が創設されるという歴史的な出来事が起こり、世界を二分してきた冷戦構造に終止符が打たれるなど、歴史は今、第二次世界大戦後の世界の構図を大きく塗りかえようとしています。

 国際社会がこのように大きく変動し、新しい世界平和の秩序を構築する時代が始まりつつありますが、今後の国際秩序を考える場合、その帰趨に重大な影響を及ぼすのが、旧ソ連邦諸国の動向であります。特に、我が国の隣国であるロシア連邦との関係については、「戦後の時代」に終止符をうち、日口両国関係の抜本的改善を図ることが不可欠であり、そのためには、両国間の最大の懸案である北方領土問題を解決して、平和条約を締結することが必要であります。

 私は、先般、国連の安保理サミットに出席した機会に、ロシア連邦のエリツィン大統領と北方領土問題について会談を行い、エリツィン大統領が本年九月中旬に訪日されることが決まりました。

 今後、エリツィン大統領の訪日に向け、平和条約作業グループの場などを通じ、鋭意外交交渉が進められてまいりますが、私は、ロシア連邦に対して、新しい日ロ関係を構築するため、「法と正義」に立脚した最大限の努力と勇気ある決断を強く求めてまいりますので、今後とも、国民の皆様の一致した力強いご支援をお願い申し上げます。

 最後に、この北方領土返還要求全国大会に御出席の方々を始め、この間題の早期解決を心から願って運動を続けていただいている全国の皆様に対し、一日も早い北方四島一括返還の実現のため全力を挙げて取り組んでまいることを改めてお誓い申し上げまして、私の挨拶といたします。