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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 宮澤総理発エリツィン大統領あて書簡

[場所] 
[年月日] 1992年3月12日
[出典] 内閣府
[備考] 
[全文]

エリツィン大統領閣下ニューヨークでの貴大統領との会見は有益でした。特に、最高首脳レベルにおいて個人的な関係を構築する第一歩となったことを高く評価致します。貴大統領と私の信頼関係が日露関係の増進に大きく貢献することを期待するものです。

 日本政府及び日本国国民の貴大統領の改革への支持は不変であります。この我が国政府と国民に対して述べられた貴大統領の謝意を率直に、かつ、嬉しく受け止めたいと思います。我が国の政府と国民の友情と善意が適切な形でロシアの国民の皆さんの心に届くことを期待致します。

 私は、貴大統領が、「法と正義」の原則に照して領土問題を解決するとの決意を再度表明されたことを心から歓迎します。また、貴大統領は、戦勝国と戦敗国の関係を消滅させるべきであり、日露両国は既に潜在的な同盟国であると述べられました。貴大統領は、9月に我が国を訪問されますが、私は、貴大統領が戦後日露間の最大の懸案である本問題を真剣に検討されることを確信し、貴大統領と力を合わせて一日も早く平和条約を締結して「日露新時代」を構築したいと思います。

 コズィレフ外務大臣が近く訪日されますが、この訪問を通じて日露双方が英知を絞り日露関係完全正常化への第一歩として良い具体的基盤を据えることを期待しています。

ボリス・エヌ・エリツィン・ロシア連邦大統領閣下

平成4年3月12日

日本国内閣総理大臣 宮沢喜一