データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北方領土返還要求全国大会における宮澤内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1993年2月7日
[出典] 宮沢演説集,259−260頁.
[備考] 
[全文]

 「平成五年北方領土返還要求全国大会」の開催に当たり、ご挨拶を申し上げます。

 我が国固有の領土である北方四島が、戦後四十七年を経た今日、なお返還されていないことは、誠に遺憾なことであります。

 北方領土の早期返還を求める国民の声は、年々大きな高まりをみせ、全国的な広がりをもった国民運動として定着してまいりました。

 また、本日の「北方領土の日」を中心に、全国各地において、多くの国民が参加して種々の行事が繰り広げられていることは、北方領土問題の早期解決を求める日本国民の心からの願いと強い決意の表れと確信しております。

 これも、日頃から地道にこの運動を支え、推進してこられた皆様方を始め多くの方々の献身的なご努力のたまものと、心から敬意を表します。

 我が国の隣国であるロシア連邦との関係については、これを抜本的に改善する必要がありますが、そのためにも、最大の懸案である北方領土問題を解決して、平和条約を締結し、完全な正常化を図る必要があります。

 この関連で、一月十三日のパリにおける両国外相会談において、昨年延期されたエリツィン大統領の訪日実現に向けて、真剣な準備を行うことが合意されたことは、歓迎すべきことであります。

 現在、ロシアは、改革に伴う多くの政治的、経済的諸問題に直面しておりますが、同国での改革が進展すること、また、法と正義に基づき北方領土問題が解決され、日露関係の完全な正常化が実現することは、我が国にとってのみならず国際社会にとっても、極めて好ましいことであります。私は、このような考えに基づき、一貫した方針の下、日露関係が均衡のとれた形で発展していきます。対露外交を進めていく考えでありますので、今後とも、国民の皆様の一致した力強いご支援をお願い申し上げます。

 最後に、この北方領土返還要求全国大会に御出席の方々を始め、この問題の早期解決を心から願って運動を続けていただいております全国の皆様のご活躍とご健勝をお祈りして、私の挨拶といたします。