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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 旧島民及びその家族たる日本国国民による択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島への最大限に簡易化された訪問の方式に関する日本国外務省の口上書

[場所] 
[年月日] 1999年9月2日
[出典] 日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集(2001年),外務省
[備考] 
[全文]

 外務省は、在本邦ロシア連邦大使館に敬意を表するとともに、以下の内容の1999年9月2日付け同大使館口上書第138号を受領したことを確認する光栄を有する。

 「在日本国ロシア連邦大使館は、日本国外務省に対し敬意を表するとともに、べ・エヌ・エリツィン・ロシア連邦大統領及び小渕恵三日本国総理大臣により1998年11月13日に署名されたロシア連邦と日本国との間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言第Ⅰ部第二項に言及し、同項に規定された、旧島民及びその家族たる日本国民による、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島(以下「諸島」という。)への最大限に簡易化されたいわゆる自由訪問の実施に関する原則的な合意に関し、1991年10月14日付けのソ連邦及び日本国の外務大臣の間の往復書簡(以下「往復書簡」という。)及び1993年4月20日付けのロシア連邦外務省と在ロシア連邦日本国大使館との間で交換された口上書(以下「交換された口上書」という。)により規定された日本国民による諸島への訪問及び諸島の住民による日本の諸地域への訪問の既存の方式及び手続に留意し、ロシア連邦が、本口上書に添付された手続に従って、旧島民及びその家族たる日本国民による、諸島への最大限に簡易化された訪問の方式が実施されるために必要な措置をとる用意がある旨を通報する光栄を有する。

1.(1)諸島への訪問は、数次訪問のための身分証明書及び挿入紙(以下「身分証明書」及び「挿入紙」という。)並びにそれらに添付される必要書類(訪問団の名簿及び訪問日程)に基づき、団体によって旅券及び査証なしで行われる。訪問団には、同行者として中央のまたは地方の当局の者(二名以下)、医師及び通訳を含めることができる。

(2)訪問団の訪問に関する基本的事項を定める計画は、往復書簡2.(2)に規定される協議において年に一回調整される。個々の訪問の詳細を定める計画は、往復書簡2.(2)に従い決定される。

2.この方式は次の条件の下で実施される。

(1)この方式は、往復書簡及び交換された口上書により規定された諸島の訪問の方式及び1986年7月2日付けの双方の然るべき口上書により規定された墓参の方式に、いかなる影響をも与えるものではない。

(2)この方式の下での訪問は、本件訪問に関連するいかなる問題についていずれの一方の側の法的立場をも害するものとみなしてはならない。

3.ロシア連邦政府は、この方式の実施状況及び改善の可能性を含め、この方式の適用に関連して発生することのあるいかなる問題についても、日本国政府と協議する用意があることを表明する。

 日本国外務省が、日本国政府を代表して上記の内容に同意することを確認する場合には、この口上書及びこの口上書と同じ内容の日本国外務省の回答の口上書は、この口上書に述べられた条件の下での協力の実施に関するロシア連邦政府と日本国政府の間の相互理解を構成する。

 ロシア連邦大使館は日本国外務省に対し、この機会に改めて深甚なる敬意を表する。」

 日本国外務省は、日本国政府を代表して、在本邦ロシア連邦大使館の口上書に述べられている必要な措置がとられることに同意することをこの口上書をもって通報する光栄を有する。

 1999年9月2日付け在本邦ロシア連邦大使館口上書第138号に添付された手続

旧島民及びその家族たる日本国民による諸島への訪問の手続

Ⅰ.一般事項

1.旧島民及びその家族たる日本国民とは、1945年末までの期間において諸島に居住していた日本国民並びにその配偶者及び子をいうものとする。

2.日本側はロシア側に対し、毎年外交ルートを通じ旧島民及びその家族たる日本国民の名簿(諸島における旧居住地の記載を含む。)を提示する。

3.訪問は身分証明書及び挿入紙並びにそれらに添付される必要書類(訪問団の名簿及び訪問日程)に基づき実施される。

4.日本国政府は身分証明書を作成する。その様式及び記載事項については別途ロシア側と合意するものとする。

5.数次訪問のための挿入紙は、交換された口上書3.に規定された事項を記載の上、日本国の然るべき機関により発行される。

Ⅱ.事前手続

1.日本国外務省は、原則として訪問開始予定日の2週間前までに、在日本国ロシア連邦大使館に対し交換された口上書1(1)に規定された事項並びに入域手続及び出域手続を行う通過点を口上書をもって通報する。

2.在日本国ロシア連邦大使館は日本国外務省に対し、口上書に示された訪問団の参加者の受入れの可否について口上書をもって通報する。

Ⅲ.入域及び出域の際の手続

1.訪問団の長は、訪問団の構成員の名簿を所持し、訪問団が通過点に到着した際ロシア側に渡す。

 訪問団の構成員は、身分証明書及び挿入紙を所持する。

2.ロシア側は、訪問団の通過点への到着及び通過点からの出発の際、身分証明書に添付された挿入紙に然るべき記入を行う。

 数次有効の身分証明書は、挿入紙とともにその所持者に返却される。