[文書名] 平和条約問題に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明
1.日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は、日本国とロシアとの間にその戦略的・地政学的利益に合致する創造的パートナーシップを構築するとの志向に則り、本年9月4日及び5日東京にて、平和条約の問題を含め、二国間関係全体について詳細な交渉を行った。
2.双方は、1997年のクラスノヤルスクにおける日露首脳会談において、東京宣言に基づき2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことが合意されて以降、次のような肯定的実績を上げたことを確認した。
−外務大臣レベルの平和条約締結問題合同委員会が設置された。
−国境画定に関する委員会が設置され、その枠内において積極的な交渉が継続されている。
−共同経済活動に関する委員会が設置され、積極的に作業している。「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島(以下「諸島」という。)における共同経済活動の発展に関する日露協力プログラム」が署名された。
−海洋生物資源についての操業の分野における協力の若干の事項に関する協定が署名され、成功裡に実施されている。
−諸島への最大限に簡易化された手続によるいわゆる自由訪問について達成された合意が実施されている。
−1991年の合意に従って実施されている諸島に現に居住している住民と日本国の住民との間の相互訪問の参加者の範囲が1998年から拡大されている。
−1994年の地震に関連して実施が開始された人道支援の分野に、緊急の支援を要する場合が含められている。
3.双方は、クラスノヤルスク合意の実現のための努力を継続すること及びその肯定的実績を一層強固なものとするよう最大限助長していくことが不可欠であることを一致して認めた。
4.双方は、1993年の日露関係に関する東京宣言及び1998年の日本国とロシア連邦との間の創造的パートナーシップの構築に関するモスクワ宣言を含む今日までに達成された全ての諸合意に依拠しつつ、「択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより」平和条約を策定するための交渉を継続することに合意した。
交渉のプロセスの効率性を高めるとの志向に則り、双方は、平和条約締結問題合同委員会における各々の代表者に対し、以下の措置をとるよう指示を与えた。
−平和条約締結問題合同委員会及び国境画定に関する委員会の作業を一層加速化するための新たな方策を策定すること。
−日露間領土問題の歴史に関する共同資料集につき、これに93年以降の時期に関わる資料を含めることをはじめとして、その新しい版を準備するための措置をとること。
−平和条約締結の重要性を各々の国の世論に説明するための努力を活発化させること。
5.V.V.プーチン・ロシア連邦大統領は、様々な分野における二国間関係の一層の発展及び平和条約交渉の積極的前進を図るため、ロシア連邦を公式に訪問するよう森喜朗日本国総理大臣を招待した。森喜朗日本国総理大臣は、感謝をもって招待を受け入れた。訪問の時期は外交ルートで合意される。
双方は、できる限りの機会を活用し、今後とも積極的な対話を維持することが有益であると認めた。
6.交渉は、率直、信頼及び相互尊重の雰囲気の下で行われた。
2000年9月5日
東京
日本国総理大臣 森喜朗
ロシア連邦大統領 プーチン、ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ