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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 平和条約問題に関する交渉の今後の継続に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領のイルクーツク声明

[場所] イルクーツク
[年月日] 2001年3月25日
[出典] 外交青書45号,284−285頁.
[備考] 
[全文]

 2000年9月5日に署名された平和条約問題に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明において合意された諸点を踏まえて、平和条約問題についての突っ込んだ意見交換が行われた。

 双方は、90年代において、交渉プロセスが質的に活発化し、相互の立場に関する認識が深化したことを表明する。交渉に対し、重要で肯定的な弾みを与えたのは、1993年の日露関係に関する東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすというクラスノヤルスク合意である。双方は、クラスノヤルスク合意の実現に関する作業が重要な成果をもたらしたこと及びその創造的な力を今後とも維持しなくてはならないことを指摘した。

 双方は、この関連で、平和条約の締結が、日露関係の前進的発展の一層の活発化を促し、その関係の質的に新しい段階を開くであろうとの確信に基づき、

●平和条約締結に関する更なる交渉を、1956年の日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言、1973年の日ソ共同声明、1991年の日ソ共同声明、1993年の日露関係に関する東京宣言、1998年の日本国とロシア連邦の間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言、2000年の平和条約問題に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明及び本声明を含む、今日までに採択された諸文書に基づいて行うことに合意した。

●1956年の日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言が、両国間の外交関係の回復後の平和条約締結に関する交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書であることを確認した。

●その上で、1993年の日露関係に関する東京宣言に基づき、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題を解決することにより、平和条約を締結し、もって両国間の関係を完全に正常化するため、今後の交渉を促進することで合意した。

●相互に受け入れ可能な解決に達することを目的として、交渉を活発化させ、平和条約締結に向けた前進の具体的な方向性をあり得べき最も早い時点で決定することで合意した。

●平和条約の早期締結のための環境を整備することを目的とする、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島を巡る協力を継続することを確認した。

●2001年1月16日にモスクワで河野外務大臣とイワノフ外務大臣により署名された「日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集の新版及び平和条約締結の重要性に関する世論啓発事業に関する覚書」の実施の重要性を確認した。

 双方は、交渉を行う上で極めて重要なのは、日露関係において相互理解、信頼及び多様な方面における幅広い互恵的な協力に基づく雰囲気を維持することであることを基本とする。

2001年3月25日

イルクーツク

日本国総理大臣 森喜朗

ロシア連邦大統領 プーチン、ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチ