[文書名] 日露行動計画(平成15年1月)
1.政治対話の深化:「重層的かつ全面的な対話の推進」
近年、様々なレベルにおける活発な対話が行われた結果、両国関係において信頼及び相互理解が深化するとともに、両国関係は歴史上これまでになく高い段階に達し、創造的パートナーシップの構築に向けた行動の主要な方向性が示された。
首脳会談は、2000年9月のV.V.プーチン大統領の公式訪日以降、2003年1月の小泉純一郎総理大臣の訪露までの短い期間に5回行われた。外相間では、あらゆる機会を捉えた緊密な対話が実施されてきた。日本国防衛庁長官及びロシア連邦国防大臣の間の相互訪問の慣行が確立した。また、貿易経済に関する日露政府間委員会が、日本国外務大臣及びロシア連邦(第一)副首相を共同議長として、これまでに6回開催された。両国関係省庁の大臣・長官の間の交流が活発に行われ、両国間の協力の実務的諸問題の解決を促進した。また両国の議会間の関係が深化した。
今後の行動
両国関係の更なる発展及び国際舞台における協力の強化を図るため、両国は今後とも以下を目指すこととする。
両国は、首脳間の定期的な交流を定着させること、多国間協議の場における首脳間の会談の機会を積極的に利用すること、東京の総理大臣官邸とモスクワのクレムリンの間に設置することが調整されている「ホットライン」の活用を含め、電話会談を頻繁に実施すること等を通じて、首脳レベルの対話を活発化させる。
両国は、外相間の頻繁な接触、日本国防衛庁長官及びロシア連邦国防大臣の間の相互訪問の継続、貿易経済に関する日露政府間委員会の定期的な開催及び同共同議長間会合の活用並びに多国間協議の場における会談を含む大臣・長官レベルのその他の接触を通じて、閣僚レベルの接触の拡大に引き続き努める。
両国は、活発な議会間交流が両国関係における肯定的な傾向を強める重要な要因であるとの立場に立ち、日本国国会の衆参両院議長及びロシア連邦連邦議会の上下両院議長の間の相互訪問、委員会間及び議員連盟間の交流、政党間の交流並びに種々の分野における議員間の個別の交流を通じて、両国の国民の代表たる両国議会の議員間の更なる交流の拡大を支援する。
2.平和条約交渉:「困難な過去の遺産の克服と広範な日露パートナーシップの新たな地平線の開拓」
これまで継続されてきた両国間の精力的な交渉の結果、1956年の日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言、1993年の日露関係に関する東京宣言、1998年の日本国とロシア連邦の間の創造的パートナーシップ構築に関するモスクワ宣言、2000年の平和条約問題に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明、2001年の平和条約問題に関する交渉の今後の継続に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領のイルクーツク声明を含む重要な諸合意が達成された。この困難な問題の解決策を用意することを目的として、両国外務大臣を議長とする平和条約締結問題合同委員会が、また、その下で国境画定に関する委員会及び共同経済活動に関する委員会が設立された。
日露関係の着実な発展及び平和条約締結の重要性についての一連の両国世論への働きかけが実施された。日露フォーラム「グローバル化の下でのアジア太平洋地域における日露関係」を含む様々な両国間のフォーラム及びセミナーが開催され、日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集が作成され、両国の識者、学者及び専門家の間における平和条約問題についての活発な議論を促した。この議論には両国議会の議員も積極的に参加した。こうした議論を経て、平和条約締結交渉を前進させるためには、感情と先入観から解放された雰囲気を両国関係において確保する必要があるとの共通の結論が導かれた。
択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島(以下、「諸島」という。)の住民と日本国民との間の四島交流、いわゆる自由訪問等の実施により、両国国民間の相互理解が深化した。1991年以来、約1万人の両国民がこうした交流に参加した。
1998年に署名された日本国政府とロシア連邦政府との間の海洋生物資源についての操業の分野における協力の若干の事項に関する協定の下で、日本漁船による諸島の水域における円滑な操業が確保されている。
諸島の住民に対して、過去10年にわたり、日本国政府により支援委員会を通じて支援が行われてきた。
今後の行動
両国は、質的に新たな両国関係を志向しつつ、相互に対する理解及び敬意の一層の深化並びに相互信頼の強化を進めていくことが重要であるとの認識に立脚し、平和条約締結問題の相互に受け入れ可能な解決を模索するプロセスを精力的に継続する。その際、両国は、以下を行う。
両国は、1956年の日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との共同宣言、1993年の日露関係に関する東京宣言、2001年の平和条約問題に関する交渉の今後の継続に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領のイルクーツク声明及びその他の諸合意が、諸島の帰属の問題を解決することにより平和条約を締結し、もって両国関係を完全に正常化することを目的とした交渉の基礎であるとの認識に立脚し、引き続き残る諸問題の早期解決のために交渉を加速する。両国は、交渉を行うにあたり、両国関係において相互理解、信頼及び様々な分野における広範かつ互恵的な協力の雰囲気を維持することが極めて重要であることを確認する。
両国は、2000年の平和条約問題に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明に立脚し、然るべき啓発資料の共同作成及び配布を含め、平和条約締結及びあらゆる分野における両国関係の着実な発展の重要性を両国の世論に説明するための努力を継続する。
両国は、四島交流事業を今後も発展させていくべく努力する。その際、青年及び児童の交流並びに互いの言語の習得といった活動に特別の注意を払う。また、両国は、いわゆる自由訪問の実施方法を、最大限に簡易化された方式で行うとの合意を念頭に置きつつ、改善するべく努力する。
両国は、四島交流の枠組みにおいて実施された諸島の地域における環境に関する共同調査を踏まえた環境問題に関する意見交換を、日露環境保護合同委員会の場で行っていく。
両国は、日本国からの諸島の住民に対する人道的観点からの適切な支援が効果的に実施されるよう、必要に応じて協力する。日本国は、今後ともこのような支援を継続していく意向である。
両国は、1998年の日本国政府とロシア連邦政府との間の海洋生物資源についての操業の分野における協力の若干の事項に関する協定が、両国関係の強化及び両国間の信頼の深化に貢献しているとの認識を踏まえ、この協定により規定されている協力を互恵的な基礎の上に継続する。
両国は、共同経済活動に関する委員会の活動を通じて、諸島の地域における共同経済活動の両国にとって受け入れ可能な形態を模索する。
3.国際舞台における協力:「戦略的パートナーとしての対話と行動の推進」
近年、喫緊の国際問題に対処するための国連及びG8並びにAPEC、ARF等のアジア太平洋地域の枠組みを利用した日露協力が大きく進展してきた。
両国は、2001年9月11日の米国同時多発テロ事件以降その緊急性が大きく増大した国際テロへの効果的な対策における協力を強化してきた。2002年11月に国際テロ問題に関する日露協議が開催された。
軍備管理・軍縮・不拡散の分野における協力が拡大した。両国は、国際的な不拡散体制において協調的に行動し、軍縮問題に関する多国間協議の進展を促進した。
1993年に設置された日露非核化協力委員会の枠組みにおいて協力が行われた。日本国の支援を得て、ロシア連邦の極東地域において、液体放射性廃棄物処理施設「すずらん」が建設され、稼働した。余剰兵器プルトニウムの処分について、ロシア連邦の高速炉を用いた処分方法に関する研究の協力が両国の関係機関の間で着実に進展するとともに、その先行的な処分が実現された。また、両国は、国際科学技術センター(ISTC)を通じて協力を行ってきた。
地域情勢に関する対話に関し、近年、両国外務省間の協議の対象となる地域問題の範囲が大きく拡大し、喫緊の国際問題の解決に向けた協調行動が強められた。両国外務省企画部局間の協議を通じて、中長期的な国際情勢の進展の予測の観点から有意義な意見交換が行われてきた。
今後の行動
両国は、2000年9月に署名された「国際問題における協力に関する日本国総理大臣及びロシア連邦大統領の声明」及び2002年2月に署名された「国際テロリズムとの闘いに関する日本国外務大臣とロシア連邦外務大臣の共同声明」の規定に従い、今後とも以下を行う。
両国は、平和と安定の維持及び強化に関する広範な諸問題につき、世界的及び地域的レベルにおいて協力する。
(国際問題の解決のための協力の分野)
両国は、様々な国際問題に協調して対処していく上で、国連、G8その他の国際的枠組みの中での協力を積極的に進める。
両国は、様々なチャンネルを通じて潜在的なテロの脅威に関する活発な情報交換を実施する。また両国は、創設された日露テロ協議の場を利用するとともに、国際的なテロリズムに関する包括的条約及び核テロ行為の防止に関する国際条約を始めとするテロ防止条約の早期採択に向けた努力の支持を含め、多国間の枠組みにおけるテロ対策についての協議の際に協力し、国際テロ問題に関する協力を進めていく。
両国は、アフガニスタン及びその周辺国に対する支援を目的とした協力を引き続き継続する。両国は、タジキスタン・アフガニスタン国境地域におけるアフガニスタンからの麻薬流出を阻止するために適切な協力を行うべく努力する。
両国は、現代世界の要請及び挑戦に応じて国連が機動的かつ効率的に行動する能力を高めることを目的として、国連の活動に関するすべての問題について協調行動を活発化させる。両国は、国連改革のプロセスの中で、加盟国の一般的な合意の達成に基づき安全保障理事会の改革を行うことを含め、安全保障理事会の役割及び権威を一層高めることが特別な位置を占めていると考える。ロシア連邦は、候補国たる日本国の安全保障理事会常任理事国入りへの支持を確認する。
両国は、G8の枠組みにおける協力を拡大させるとともに、2006年のロシア連邦によるG8首脳会合の開催に向けた準備の過程において、経験の共有等を通じて協力する。日本国は、G8サミット及びその準備過程における金融問題に関する議題の討議へのロシア連邦の参加形態の段階的拡大に対し肯定的に対応する。
(軍備管理・軍縮・不拡散の分野)
両国は、国際の平和及び安定の強化を促進し、軍備管理・軍縮・不拡散の分野における既存の国際的な枠組みの維持・発展に向けられた行動を取る。日本国は、2002年5月24日にロシア連邦とアメリカ合衆国の間で署名された戦略兵器削減条約を戦略攻撃兵器の更なる削減のための基盤として歓迎する。
両国は、ロシア連邦における核兵器の廃棄に関する協力のために設置された日露委員会の枠内で決定されたプロジェクトの実現を加速化するため、活動の調整メカニズムを強化する。両国は、ロシア連邦の極東地域の退役原子力潜水艦解体関連プロジェクトの着実な実施を確保する。
両国は、ロシア連邦を対象とした不拡散、軍縮、テロ対策及び原子力安全の分野におけるプロジェクトの進展を目的として、G8グローバル・パートナーシップの「指針」の具体化に関する努力を活発化する。
両国は、余剰兵器プルトニウム処分方法の決定に向けられたG8を通じた努力において積極的に協力する。
両国は、国際科学技術センター(ISTC)を通じた協力の促進を図る。
(地域情勢に関する対話)
両国は、安全保障及び信頼の強化を重視し、ARF等の枠組みを含め、アジア太平洋地域における協力の進展を積極的に促進する。日本国は、ASEMの活動へ参加することに対するロシア連邦の意思を歓迎する。
両国は、朝鮮半島における緊張緩和並びに北東アジアの平和及び安定の維持・強化が不可欠であるとの立場から、対話を通じて朝鮮半島に関する全ての問題の解決を図るための関係国による建設的努力を支持する。これに関連して、日本国は、2002年9月17日に日朝双方の首脳によって署名された日朝平壌宣言を基礎として拉致問題及び安全保障上の問題を含む日朝間の諸懸案が解決され、日朝関係が正常化されることが重要であることを強調する。ロシアは、かかる形での日朝関係の正常化に可能な限りの協力を行うことを確認する。
両国は、不拡散体制の強化及び朝鮮半島の非核化の確保のために、北朝鮮の核計画に関連する全ての問題の平和的解決を促進する。両国は、北朝鮮の核問題に関する最近の情勢の展開及び核拡散防止条約(NPT)から脱退し、国際原子力機関(IAEA)との保障措置協定による義務の履行を拒否するとの意向に関する北朝鮮の声明について、遺憾の意と深い懸念を表明する。この関連で、両国は、北朝鮮によるかかる意向の速やかな撤回並びに即時かつ完全なIAEAとの協力等を求めた2002年11月29日及び2003年1月6日のIAEA理事会決議の速やかな履行が不可欠であることを確認するとともに、すべての関係国に対し、関連の諸問題の政治的解決のために対話を継続することを呼びかける。
両国は、朝鮮半島情勢に関する諸問題について、これまで確立された両国間のハイレベルでの緊密な対話を深化させる。
両国は、北東アジアの安全保障に関する多国間の対話の枠組みの創設の可能性について協力を進める。
両国は、イラクが完全かついかなる前提条件も無しに国際査察官に協力し、査察の実施を妨害しないように協力するとともに、大量破壊兵器の廃棄に関する決議を始め、すべての関連する国連安保理決議を完全に履行するよう共同で取り組む。
両国は、民主主義及び国際法の諸原則に基づきパレスチナ国家を建設するための環境整備のため、和平交渉の実施を支援する。
両国は、南アジアにおける信頼の強化を促進するため、二国間及び多国間の枠内で協調して諸措置を講じる。
両国は、カナナスキス・サミットにおいて採択されたG8アフリカ行動計画の実施のために協力する。
両国は、喫緊の国際問題の解決に向けた協力を拡大するため、外務省間の定期的な協議を継続するとともに、必要に応じ、防衛当局の関係者の参加を得て地域安全保障問題について協議を行う。
4.貿易経済分野における協力:「信頼、行動ー相互利益へ」
貿易経済及び科学技術分野における協力は、二国間関係において戦略的な優先事項の一つである。政府間及び民間レベルにおける対話メカニズムが創設され、機能していることを含め、近年この分野における協力の発展のための措置が両国により講じられた。
両国の貿易経済分野における協力の基本的方向性を定めた2000年9月の「貿易経済分野の協力の深化のためのプログラム」が両国間の貿易経済関係の発展に大きな役割を果たした。また、貿易経済に関する日露政府間委員会の活動が両国経済関係の進展と懸案の解決に貢献した。
同時に、民間レベルにおける日露経済交流が着実に実施され、特に日露経済合同会議が定期的に開催された。また、2001年6月に経済団体連合会のミッションの訪露が行われた。
ロシア側は、2002年3月に日本国際協力銀行とロシア連邦外国貿易銀行との間で開始されたロシア連邦政府の政府保証を必要としない新しい形のバンク・ローンである2ステップ・ローン及び日本国において講じられたロシア連邦に対する貿易保険付与条件の緩和措置を歓迎した。
日本センター、ロシア東欧貿易会によりロシア連邦の極東地域に創設された中小企業センター、日本貿易振興会等によるロシア連邦における改革の促進に向けた日本側の技術・知的支援は、ロシア連邦の市場経済への移行を促進した。ロシア連邦内の7カ所に設置された日本センターにおいて、これまで約18,000名が各種講座に参加し、約2,200名が訪日研修を行った。
エネルギー分野における協力が発展した。政府間の日露エネルギー協議が開催され、京都議定書に基づく共同実施案件発掘のためのF/S調査が実施された。また、両国の企業は、国際的なプロジェクトであり、既に原油生産が開始されているサハリン2プロジェクト及び生産開始に向けて準備が進められているサハリン1プロジェクトに積極的に参加している。また、民間企業により、サハリンと日本国の間のガスパイプライン敷設についての事業化調査が実施され、その結果に基づき当該ガスパイプライン・プロジェクトが技術的・商業的に成立し得るとの結論が出された。
日露環境保護合同委員会が開催されてきた他、様々な国際的な取組において気候変動問題を始めとするグローバルな環境問題に関する日露協力が進展した。
両国間の諸協定に基づき、漁業の分野における互恵的協力が行われてきた。また、2002年1月以降、水産物の密漁・密輸問題に関する日露協議が集中的に開催され、海洋生物資源の保存及び漁業秩序の維持の観点から重要な成果をあげてきた。
日露科学技術協力委員会及び日露宇宙協力合同委員会の枠組みで協力が実施されてきた。また、日露科学技術フォーラムの枠組みを含め、民間レベルにおける科学技術交流が実施されてきた。宇宙分野において民間レベルの協力が進められてきた。
新航空協定交渉が行われてきている。また、日露航空当局間協議により、航空分野での協力が進展した。
2002年7月に極東観光協力促進会議が開催され、民間レベルにおける観光分野への関心が増大した。
今後の行動
両国は貿易経済関係の更なる発展を目的として、「日本国とロシア連邦の間の貿易経済分野の協力の深化のためのプログラム」の確実な実施のため、以下の行動をとる。
(貿易投資の促進)
両国は、両国間のより広範な貿易経済問題の検討を行うことを目的として、貿易経済に関する日露政府間委員会並びにその貿易投資分科会及び極東分科会の活動を更に活発化する。
両国は、日露間の貿易及び投資の拡大を支援する。ロシア連邦は、投資環境の改善に引き続き努力する。日本国は、ロシア連邦の着実な経済成長を指摘するとともに、ロシア東欧貿易会、日本貿易振興会等を通じ、ロシア連邦における経済改革の進展状況等に関する情報の民間への提供に努める。
両国は、日露貿易投資促進機構の早期設立に係る検討作業を活発化させる。
両国は、共同プロジェクトへの融資について、プロジェクトの契約当事者となる企業又は銀行の保証による融資を含め、その柔軟な形態を更に拡大する可能性について検討する。
両国は、両国間の商品及びサービスの取引量の増加に向けて、民間経済界のミッションを積極的に派遣し合うことを含め、民間レベルにおける経済交流の進展を更に奨励する。
両国は、貿易経済及び科学技術分野における博覧会、見本市及び展示会の開催について相互に支援を行う。
(国際経済体制へのロシア連邦の統合)
両国は、ロシア連邦のWTO加盟のために協力する。日本国は、ロシア連邦のWTO加盟に対する支持を表明し、ロシア側のニーズを踏まえ、技術・知的支援の一環としてWTO加盟に必要となる知識及び経験の移転の可能性を検討する。ロシア連邦は、自国の法制度及びその運用をWTOの基準及びルールに合致させるため、必要な改革を引き続き行う。
(ロシア連邦に対する技術・知的支援)
両国は、ロシア連邦における市場経済の発展及び両国間の貿易経済関係の強化を目的とする日本センター、ロシア東欧貿易会等を通じた日本国によるロシア連邦に対する技術・知的支援の効率的な実施のために、必要に応じ協力する。日本国は、日本センター、ロシア東欧貿易会等を通じたロシア連邦に対する技術・知的支援を発展させる意向を確認する。両国は、日本センターを通じた今後の技術・知的支援事業の方針について協議していく。日本国は、技術支援の実施に当たっては、中小企業振興を始めとするロシア連邦政府が進めている経済政策における重点分野に留意する。
両国は、両国間の貿易経済交流において果たし得るものを含むその機能を定める、日本センターの活動に関する新しい覚書の早期署名に向け作業を活発化する。
両国は、企業経営者養成計画及び公務員養成計画の実施における協力を強化する。
(エネルギー)
両国は、この分野における協力の更なる強化の方向性を定めるエネルギー分野の協力に係る文書の策定に係る検討作業を活発化する。
両国は、ロシア連邦の極東及びシベリア地域におけるエネルギー資源開発及びその輸送のためのパイプラインの整備の分野における経済的観点から相互に利益のあるプロジェクトの実現が、これらの地域の開発に大きく貢献し、国際エネルギー市場の安定並びにアジア太平洋地域及び世界全体のエネルギー安全保障の向上に資することになるとの認識を共有し、ロシア連邦の極東及びシベリア地域におけるこれらの分野の協力を発展させていく。この関連で、両国は、エネルギー輸送プロジェクトの実現における具体的協力の前進を政府及び民間レベルにおいて検討し、それらのプロジェクトの進展とあわせロシア連邦の極東及びシベリア地域における石油ガス田開発分野での両国企業の協力が進展することを支持する。
両国は、自然環境に配慮しつつ、サハリン1・2プロジェクトの進展並びに関連する生産物分与協定及びビジネスの円滑な実施のための環境の整備に引き続き努力する。
両国は、日露エネルギー協議等の枠組みを活用し、温室効果ガス排出削減のための共同実施に関する具体的協力の可能性についての検討を継続する。
両国は、日露エネルギー協議において、エネルギー協力拡大のための意見交換を継続する。
(原子力)
両国は、日露原子力協議を今後も定期的に開催する。
両国は、高速増殖炉等の分野での原子力の平和利用に係る研究の協力を継続する。
(環境)
両国は、日露環境保護合同委員会の活動を活発化し、同委員会の枠組みにおける日露環境保護協力プロジェクトを着実に実施していく。
両国は、地球温暖化問題への適切な対処の重要性を確認し、すべての国が参加する共通のルールの構築に向けた努力を推進する。ロシア側は、京都議定書の批准の準備プロセスを前進させる。
両国は、日本海、オホーツク海及び北西太平洋における海洋汚染防止体制を強化するため、日露合同流出油防除訓練や北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)における協力を継続する。両国は、東アジア酸性雨モニタリング・ネットワーク(EANET)における協力を継続する。
(生物資源の保存・利用)
両国は、今後も漁業に関する両国の間の互恵的な協力関係を発展させる。また、両国は、漁業損害賠償請求処理委員会の活動に関し、積極的に協力する。
両国は、森林の違法伐採の防止に関連する問題を含む持続可能な森林経営の分野での協力を両国が参加しているアジア森林パートナーシップ(AFP)等を通じて進める。
(科学技術)
両国は、科学技術協力委員会の枠組みにおける対話を深化させ、日露科学技術協力プロジェクトを着実に実施していく。同時に、民間レベルにおける科学技術協力の進展を奨励するとともに、科学技術協力委員会への民間オブザーバーの参加の問題についての検討を継続する。
両国は、民間レベルにおけるIT協力の進展を奨励する。
両国は、海洋の科学的調査に関する協力の実施方法及び形態についての検討を継続する。
両国は、ITER(国際熱核融合実験炉)計画の成功を目的として実施される国際的な協議の場において、緊密に連携し、協力を図る。
(宇宙)
両国は、日露宇宙協力合同委員会等の枠組みにおいて、両国間の協力拡大の可能性についての検討を継続する。また、宇宙開発及び国際宇宙ステーションの利用の分野の国際協力について検討を継続する。
(運輸・観光)
両国は、新航空協定の早期締結に向け、交渉を活発に行う。
両国は、民間専門家会合の開催を含め、シベリア鉄道の運営に関する意見交換を継続する。
両国は、民間レベルにおける観光振興に向けたイニシアティブを支持する。
(地域レベルの協力)
両国は、日本国とロシア連邦の極東及びシベリア地域との間の経済関係を強化するため、極東分科会の活動を更に活発化させる。
また、ロシア連邦サハリン州の日本国との地理的な隣接性等にかんがみ、両国は、日本国とロシア連邦サハリン州との経済交流の在り方について検討する。
両国は、極東マイクロ・ビジネス振興発掘ミッションの派遣を奨励し、ロシア連邦の極東地域における民間レベルの経済交流の更なる進展に向けて協力する。
両国は、日本国の都道府県とロシア連邦構成主体との間の経済関係を発展させるため、可能な支援を行う。
5.防衛・治安分野における関係の発展:「両国の平和と安全のために」
両国の努力により、防衛当局間及び治安当局間の関係がそれぞれ著しく拡大し、相互信頼を強化する重要な要因となった。
防衛交流の分野においては、日本国防衛庁長官及びロシア連邦国防大臣の間で2度の相互訪問が行われた他、防衛当局間でハイレベルの相互訪問が間断なく行われ、防衛当局間協議及び艦艇の相互訪問が着実に実施されてきた。また、捜索・救難活動に関する共同訓練及び親善訓練を実施する慣行が確立した。
日露治安当局間においては、国際テロ問題、薬物・銃器の不法取引及び密航を含む国際組織犯罪並びに密漁問題の分野における協力が進展した。近年、二国間及び多数国間の海上警備当局間協議が累次に亘り開催された。
今後の行動
両国は、以下の協力を今後とも積極的に実施する。
(防衛交流)
両国は、日本国防衛庁長官及びロシア連邦国防大臣の間の相互訪問を始めとする定期的なハイレベルの交流、防衛当局間協議、艦艇の相互訪問並びにその機会を利用した捜索・救難活動に関する共同訓練及び親善訓練、1993年10月の「領海の外側に位置する水域及びその上空における事故の予防に関する日本国政府とロシア連邦政府との間の協定」に基づく年次協議、研究教育機関の間の交流を引き続き実施することで両国間の防衛交流を着実に進める。
間もなく日本国防衛庁長官の訪露が行われる。その際に、防衛分野における両国間の協力及び信頼関係の強化のため意見交換が行われる。
両国は、日本国防衛庁及びロシア連邦国防省の代表が参加する防衛交流の進展並びに信頼措置の強化に関する共同作業グループ会合を定期的に開催する。この会合において、防衛分野における協力の基盤の改善についても検討される。
(治安当局間の協力)
両国は、国際テロ問題並びに薬物・銃器及び盗難自動車の不法取引を始めとする国際組織犯罪の脅威に対抗するために積極的に協力する。
両国は、水産物の密漁・密輸の防止に向けた協力を推進する。その際、両国は、関係機関の間の実務的なコンタクトが密漁・密輸の防止のために有効であることを認識する。
両国は、治安当局間会合を定期的に開催する。
両国は、海上警備当局間協力を推進する。
両国は、犯罪取締りに関する情報交換を充実させる。
6.文化・国民間交流の進展:「相互理解と友好の深化のために」
両国は、文化・人的交流の拡大が国家間関係の発展、両国国民間の友好及び相互理解の強化を促進するとの理解に立ち、両国国民の相互の文化に対する関心の高さを基礎としたこの分野での交流を着実に進展させてきた。日露文化交流協定が2002年7月に発効した。
青年交流事業により、これまで1396名が相互に訪問し、両国国民の相互理解を深めた。
日露フォーラム「グローバル化の下でのアジア太平洋地域における日露関係」が2001年5月及び2002年5月に開催された。
2002年10月に日露領事当局間協議が開催され、両国国民間の交流の更なる拡大に貢献した。
今後の行動
両国は、両国国民間の友好及び相互理解の進展を基礎として両国関係の深化を目指し、以下を行う。
両国は、日露文化交流協定の下での協力を推進する。同協定により設置された第1回日露文化交流委員会が早期に開催される。
両国は、日本の伝統及び文化をロシア国民に紹介する「ロシアにおける日本文化フェスティバル 2003」並びに日本国民にロシアの文化遺産を紹介するロシア連邦の同様の行事の成功に向け、協力を強化する。
両国は、青年交流の充実を図るとともに、学生間、青年組織間及びNGOを含む社会団体間の交流の進展を奨励する。
両国は、学術研究機関を通じた共同フォーラム、セミナー及びその他の行事の実施を奨励する。特に、両国は、日本国の総合研究開発機構(NIRA)及びロシア連邦の戦略策定センターの間で第3回日露フォーラム「グローバル化の下でのアジア太平洋地域における日露関係」を開催することに関連する問題について協力する。
両国は、日露友好フォーラム21とロシア21世紀委員会の間の交流を支持する。
両国は、翻訳・出版事業の推進並びに両国国民に対しそれぞれ日本国及びロシアについて紹介する広報資料の作成及びその普及に関する措置をとる。
両国は、美術館、博物館及び図書館間の交流を含め、両国間の文化交流の更なる拡大の可能性について探求する。
両国は、スポーツ分野における交流を進展させる。
両国は、日本国の都道府県とロシア連邦構成主体の間及び両国都市間の交流の充実に関する問題の検討を含め地域レベルでの交流の進展を図る。
両国は、両国国民の間で最大限幅広い交流を行うための環境を整備することを目的として、査証発給手続の簡素化の可能性につき、領事当局間で検討する。
***
行動計画に基づく協力の進捗状況については、今後、両国の外務省が定期的に、これを確認する。